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冬ドラマ、何観た?〜『ブラッシュアップライフ』から学ぶ人生のブラッシュアップ


『素敵な選TAXI』というドラマが好きだった。このドラマの脚本を書いたのがバカリズムさんだった。芸人さんでありながらドラマの脚本が書ける才能、しかも面白い。ドラマウォッチャーとして“脚本・バカリズム”は、そのドラマを観るのか、観たいのかの指標になった。
今期の『ブラッシュアップライフ』は、バカリズムさんの代表作になるはず。大好きになったこのドラマをどうしても考察しておきたい。


「キャスティング」
正直始まる前は、この人がこの役?みたいなことってよくある。でも観てるうちにしっくりきたり、意外な一面が開花してその人の代表作になることもある。また聞いただけでその役にピッタリだなって思える場合もある。このドラマに関して言うと、“脚本・バカリズム”と“主演・安藤サクラ”、この組み合わせにまず心惹かれた。演技のこととか難しいことは分からないけど、絶対面白くなるという確信があった。面白さにも2つあって、お笑い番組やコメディドラマを観た時のあの単純に笑ってしまう面白さと、よく練られたストーリー展開に唸る面白さとがある。ドラマが始まる前の印象は前者。観終わった今は、その両方があったと言える。


安藤さん演じる近藤麻美という人物は、全てにおいて平均的な人。誰かの周りに必ずいそうな既視感がある。皆が爆笑するような一言を言えば、皆が納得するような一言も言える。常識的で時に辛辣なことも言うがそれは信頼の上に成り立つことで、難しい“女子3人組”という仲良しグループも、麻美ちゃんがバランスをとってくれてた。
チビ麻美こと永尾柚乃ちゃんが可愛すぎてツボ。あの、ちょっと困ったような表情で大人が喋るような難しいこと(だって、中身は大人だから)をポツポツと喋る可愛さったら。CMで見かける度に嬉しくなる。


そして私が一番素敵なキャスティング(演技)だと思ったのは木南晴夏さんと夏帆さん。
もちろん主役の安藤サクラさんはとても良かったのだけど、同級生のこのお2人が実に可愛くていつも楽しそうで、この人たちと仲良くなりたいとマジで思える、そういう空気感が出てた。だからこそ、最後の周回が2人を救うための人生で、それを果たせて水川あさみさんを含めた4人全員で長寿を全うしていたのが観ていてとても嬉しかったし、その後4人揃って鳩に生まれ変わりやっぱり皆一緒に仲良く過ごしているラスト、4羽の鳩の後ろ姿に涙がこぼれた。鳩を見て泣くって、なかなか無いよね。


「エンディング」
ドラマにおいて、初回のいわゆる「ツカミ」と、最終回はとても大事。どのドラマを観ようかな、どれが面白そうかな、と思いつつ観る初回は視聴を継続するか否かを決める重要回。でもそれと同等に、観終わって「あーん、終わっちゃった」「寂しい」「ロスだ」と心に残るかどうか。それが最終回で決まったりする。もちろんそこまでの積み重ねである程度の評価は出来ているわけだが、最終回の「オチ」で評価が変わることもある。例えば、今期の『100万回言えばよかった』は、思っていたよりもサスペンス色が濃くて、観たいものが観れなかったと思っていたが、アディショナルタイムの最終回、あれがあると無いで、ドラマを観終えた充足感が違う。甘々の幸せと、やっぱりお別れになっちゃう切なさ、観たかったものが観れた気がした。
『ブラッシュアップライフ』における最終回は、もしかするとドラマオチもあるかなと思っていたが、そうではない、幸せな結末が用意されていた。ドラマオチならそれはそれでホッとしただろうけど、そうじゃない落としどころは実に温かく、そこまで毎週観てきた、それは何百年にも及ぶ長い積み重ねが、見事に花開き実を結ぶ、そんな素敵な最終回だった。4人が同じ老人施設に入って、やっぱりわちゃわちゃしてるなんて。もう、観ている私たちまで最高の幸せを味わえる。あの、変な乗り物に乗って施設の中を一列で移動していくシーンはバカリズムさんらしいシュールさと可愛さがあった。あのあたりから私はグスグスと泣き始めて、鳩の後ろ姿で大泣きだった。


「教訓めいたもの」
そもそもが、『(自分が)人間に生まれ変わりたい』がゆえの人生やり直しだった。人間に生まれ変われないのは「徳が足りなかった」のかもと言われ、次の人生では徳を積もうと決心し、4周目でついに人間に生まれ変われることになった。なのにそれを蹴ってもう一周、しかも最後の一周をやり直すことに決めた麻美ちゃん。『人間に生まれ変わりたい』という目的ではなく、『友達を救いたい』ため。でも実はそれは、2周目からやってた。チビ麻美ちゃんは、同級生のパパと幼稚園の先生の不倫を食い止めてたし、嫌いな先生の冤罪を晴らすことや友達の不倫の阻止を毎周忘れずにやっていた。そういう積み重ね、それは一回の人生における徳積みだけでなく、その魂が生きる全ての人生においての徳の積み重ねが評価されていたのかも知れないと思った。だから同じようなことをしていても4周目には人間に生まれ変われることとなった。それは麻美ちゃん自身が一番驚いていたではないか。
徳積み、なんていうとものすごいことをしないといけないと勘違いしそうだが、実は普通に、常識的な善行、誰かの嫌がることを率先してやるとか、誰かが喜ぶことを自分の喜びとするとか。そんなことで良いのではないか。それは人間じゃなくても、オオアリクイでもサバでも出来ることで、そうやってたらまたいつか人間に生まれ変われるだけのポイントが貯まる。そんな風に私は捉えた。


「今からやるブラッシュアップ」
生まれ変われるかどうかは私たちにはわからない世界の話だし、生まれ変わった時に前世の記憶があるかどうかもわからない。だけど、そういうシステムがあろうが無かろうが、人の役に立つこと、人を喜ばせることを率先してやることは案外気持ちが良いのではないだろうか。私の母はいつも、「良い事は人が見ていないところでするほうが良い」と言っていた。感謝されたいとか褒めてもらうためにやる“良い事”より、誰にも知られずにやる“良い事”のほうが意味があるということ。それがこのドラマを観てお腹に落ちた。麻美ちゃんの暗躍は常に誰かのためだった。麻美ちゃんのような活躍は私の人生においては無さげだが、日々の中に善行を積める場面は多々ある。それを面倒くさい、誰かがやってくれるだろうと放置するか、多少の負担があっても私が気付いたならやろうと思うかどうか。ドラマを観た今なら後者だ。この一周、もしかしたらもう残り少ない一周だけど、この一周をブラッシュアップさせることはまだ可能だ。もしかしたらあるかも知れない次の一周のために、誰かのために励むのも良き。それをドラマを観て学ぶ。ドラマなんて何の役にも立たないと、そんな時間があるなら他にやることがあるのでは?なんて言われながらここまで来たけど、それも無駄じゃなかったかも。そんなドラマに出会えた。



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