私の手には仏眼相があります

もう何年も前のこと。テレビで有名人の手相を見る番組をやっていた。その中に“仏眼相”という、とても珍しい手相が出てきた。

仏眼相は親指の第一関節に刻まれる手相で、眼のような横長の楕円形をしている。ちょうど仏像の“半眼”に似ていることから“仏眼”と名付けられた。

確か、皇室のどなたかの手相にその仏眼相があって、「仏眼相を持つ人は記憶力が良い」と言っていた。ふと自分の手を見てみると、なんと、私の手にもその仏眼相なるものがあるではないか。しかも両手。ちょっと嬉しかった。

それからしばらくして、ママ友が集まる女子会があった。メンバーの一人はとても記憶力が良い。女子会は当時2〜3ヶ月に一度のペースで開催されていたのだが、彼女は皆勤賞。そして、誰がいつの女子会を休んだとか、あの時のメンバーは誰と誰だったとか、どの顔ぶれでどこに行ったとかどんな話をしたとかをとにかく全部覚えている。休むと後からそういう話題にされてしまうので、ある意味恐ろしい。が、彼女は別に悪気はないし、休んだことを責めたりもしない。ただ記憶として覚えているだけだ。

そんな彼女がその日、手相の話題を出してきた。彼女も私と同じ番組を見ていたらしい。そして彼女はおもむろに自分の手のひらを皆に見せ、仏眼相の話をした。彼女の手にもそれはあった。「これがある人は、記憶力が良いんだって」という彼女に皆が、「だから〇〇ちゃんは、いつ誰が欠席したとかをよく覚えてるんだね」と誰もが納得した。そこで私も、「実は私もありまーす」じゃじゃーんと手相を見せた。皆が「えーすごい」と言う中、彼女は「え？うそ」と半信半疑で私の手を掴んだ。「ホントだ。」「ね、お揃いじゃん」

すると彼女は言った。
「でも、みとんちゃんてすぐに何でも忘れちゃうよね。いつも“そんなこと、あったっけ？”って感じだよね」と。
確かに、私は女子会での話題に「覚えてない」とか「そんなこと、あった？」とか、よく言ってた。皆での楽しい思い出話を意外と忘れてしまう。でも皆からああだった、こうだったと聞かされると「あぁそういえば」と思い出せる。私が覚えてなくても皆が、特にその彼女が何でも覚えてくれているからという、安心感。それもあったと思う。

「いやいや、ちゃんと覚えてますって。ちょっと忘れっぽいけど、すぐに思い出せるし」と私が言うと、「うーん‥」と彼女はどうも納得していない様子だった。彼女からすれば、何でも覚えてる自分に仏眼相があるのは当然といえば当然、でも何でも忘れがちな私に自分と同じ仏眼相があるのは腑に落ちなかったのだろう。なんかごめんなさい。

今回、記事を書くにあたって仏眼相について検索してみたら、珍しいとはいっても20人に1人くらいの割合で仏眼相はあるらしい。しかも、どこにも「記憶力が良い」なんて書いてなかった。「霊感が強く」て「気が利く」らしい。
うーん‥私にはどっちも当てはまらない。私に仏眼相があることに一番納得いかないのは、私自身だった。