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次女、ご近所付き合い始めました


私は結婚して今の家に住み始めて早や30年超。最初の1年はお仕事を続けて、長女が生まれてから10数年は専業主婦でした。お仕事の話をたまたまいただき、まだ社会復帰を考えていなかったにも関わらずなんとなく流れで今の仕事に就いて17年。パートですが、もはや職場のヌシというかドンというか、そういう存在になりました。(って自分で言うてますけども)


職場ではそんな感じなのですが実は私、今の家のご近所さんのこと、ホントに知らないんです。いや、顔やお名前くらいは分かります。会えばご挨拶くらいはしますし。だけど雑談となると、ほとんどしたことがありません。
うちの斜め前のお宅は、私が結婚して以来、長く高齢のご夫婦がお2人で暮らしてました。お正月やお盆には息子さん(4兄弟)ご家族が順番に訪れて、その中で次男さん夫婦がとても気さくな方々で、特に奥さんのほうがたまに家の前でお会いするだけの私にもいろいろと雑談をしかけてくださって、次男さんご夫婦の顔とお名前だけは存じておりました。数年前に、高齢のご両親を心配されて、その次男さん夫婦がこちらに帰って来られご両親と同居を始められたのです。次男さんが定年退職されたタイミングだったようです。


気さくな奥様はすぐにご近所さんに馴染み、またご夫婦でガーデニングをされるお庭(というほど広くもないのですが、とてもお手入れが行き届いていて)が通りががりの人の足を止め、またそこで会話が生まれ、人付き合いの輪が広がっていく感じなのです。私が30年かかっても作れなかった人間関係を、ものの数年で成し得たのです。羨ましいとかではなくて、なんていうか、私って人に興味がないんだなっていうのをつくづく思い知らされてしまったというか。


昨年あたりから、町内会の集まりに私が行くことが増えました。それまでそういうお付き合いは全て主人に任せていたからで、だから私にはご近所の人間関係が築けてなかったわけなんですが、私が行くようになってからも特に進展はありませんでした。昨年の夏から町内会メンバーでLINEで連絡をするようになり、

– 玉ねぎを沢山いただいて家族だけでは食べきれないので、どなたかもらっていただけませんか?

とか、クリスマスにクリスマス動画が送られて来たり、

– 近くで空き巣の被害があったみたいです。怖いですね。お互い気をつけましょう。

など、たまに連絡が来るようになって、これをご近所付き合いと呼べるなら、私はやっとそんな位置にいます。完全に受け身ですけど。嬉しいのは、町内会の集まりに顔を出すようになってから、私のことを下の名前で呼んでくださるご近所さんが増えたことです。以前は苗字で呼ばれていたので、私も少しだけ、つま先くらいは町内会に馴染んで来たかもです。


さて、そんな中次女が運動不足解消&ダイエットのために6月からプールに通い始めました。皆さんがお住みのお近くにもあるかもですが、うちの町にも市民プール的な施設があります。プールや体育館、ボートなんかも教えてもらえます。住民は格安で利用出来る施設です。


プールでは指導員さんが付いて教えてくれる教室(子ども向け、妊婦さん向け、あるいは大人向けの)がありますが、教室に参加せずに自分の行きたい時に行って自由に利用することも可能です。次女は週に1、2度仕事から帰って来て晩ごはんを食べてから、気が向けば「ちょっと行って来る」と出かけます。施設は夜の9時まで利用出来るので、閉門まで1時間あれば充分です。まあ“気が向けば”ですから、気が向かない時は1週間以上空いたりします。


そんな中、ある日のこと、プールから帰って来た次女が、

「今日さぁ、プールで声かけられた」
と言うので、え、プールでナンパか?と驚いて、
「え?誰に?」と聞き返すと、

女性(次女は“オバさん”と言ってた)から「石元さん?」って声かけられ「はい」って振り返ると、
「あ、やっぱり。よかったー。受付に名前があったから、もしかしてと思って」
と言われたそうな。見ると女性の横には旦那さんらしき人。どちらも60代?っていう感じ。しかし次女いわく、水着姿でノーメイクでおまけにスイミングキャップを被っているため、すぐには誰かわからなくて微妙な態度になってしまい、それを見て女性が、

「あ、〇〇です。散髪屋です」

と名乗られ、やっと町内会の散髪屋の奥さんとご主人だとわかったそうな。
旦那さんのほうが、
「上の子かな、下の子かな?」
「あ、下です」
「あ、下か」

奥さんは、
「いつから来られてるの?」
「最近来始めたばかりで」
「そうよね、今まで見かけたことなかったから。それじゃあねー」

と。お2人は違うレーンへと歩き出しました。プールはレーン毎に、“歩く人用”と“泳ぐ人用”が決まっていて、泳ぐ人用もちょっと泳ぐかガチで泳ぐかに分かれていて、お互いが邪魔にならずに楽しめるようになっています。子どもの頃泳ぐのは得意な方だったけど、大人になって泳いでみたら思ってたのと違って結構しんどい、というのが次女の感想。なので歩くレーンかちょっと泳ぐレーンを行ったり来たり。

散髪屋さんのご夫婦は2人揃ってガチで泳ぐレーンへと。先ほど「今まで見かけなかった」と言うくらいですから、あのご夫婦はヘビーユーザーなんだな、と思いながら見るとはなしに見ていると、クロールや背泳ぎで体を慣らした後に、なんとお2人揃ってバタフライを始めたと。あまりに驚きすぎてフリーズした後笑っちゃった、と。

確かに、60代の男女がいきなりバタフライを披露するとは、こりゃ拍手モンですよ。日頃から体を動かしている方たちはやっぱり違うよねーって我が家では盛り上がって。そうなんです、お2人とも見た目が年齢よりも随分若いし、スタイルも良いし、オシャレなんです。奥さんなんて、冬には黄色いコートを翻して颯爽と歩いてるし、旦那さんは今で言うイケオジです。


それからちょくちょくお会いするようになり、次女から聞く、いつもお2人仲良くプールに来られている散髪屋さんご夫婦の話は、私の大好物になりました。先週も、次女がそろそろ帰ろうかというタイミングで散髪屋さんが来られ、しばらくすると、

「石元さーーん!ここ、もう空くってよー」

と奥さんのほうが、ガチで泳ぐレーンの、そのお隣のレーンを指さして呼ぶ声。どうやらお隣のレーンの方とも顔見知りでその人が帰ると言うのでわざわざ次女に声をかけてくれたようです。その日は人が多く歩くレーンの端っこをゆっくり歩いていた次女は、大きな声で呼ばれて無駄に周囲の関心をひいてしまい、気遣いを無碍にする勇気もなく、そのレーンに移ってしばらく泳いだため、ヘトヘトで帰って来ました。その話に私は大笑い。めっちゃオモロいやん。


そして、ふと。あれ?もしかして私よりも次女のほうが町内会のお付き合い深くない?散髪屋の奥さんはとても気さくな方で、私にもよく声かけて下さるけど、次女のほうがよっぽど顔を合わせる機会が多いし、すっかり顔見知りじゃん。


私があんまり得意じゃないこと、いや苦手でもないんだけど、今まであんまり積極的にやってこなかったそういうご近所付き合いみたいなこと、それを次女も出来るようになってくれたことがなんだか嬉しいのです。


ホントは私も一緒に行って、ダイエットしたほうが良いんだけど。
家に帰ったらとりあえず休みたい。休んだらもう出かけられない。言い訳だらけの母です。



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