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みんなひとりぼっち

「僕は僕一人だけで、全部をやりたいんだ。そうしないと、僕の100パーセントにはならないから。ほんのちょっとでも僕の感覚と合わないと、気持ちが悪いし我慢ならない。だから君と協力して創作することはできない」
 と僕は彼にきっぱりと言った。

 ポール・マッカートニーは、自分の家のスタジオですべての楽器を演奏してオーバー・ダビングすることで曲を作り、McCartneyというアルバムを作った。このアルバムは2作目、3作目が作られている。
 山下達郎は、自分の声だけをオーバーダビングしてアカペラのアルバムを作った。
 ON THE STREET CORNER。
 このアルバムも、2作目、3作目が作られている。
 打ち込みで楽曲を作るアーティストも、自分だけですべてを完成させる。

 自分だけの世界。
 それこそがパーフェクト・ワールドだ。


「みんなひとりぼっちなんだよ」
 と僕は彼女に言った。

「ボズ・スキャッグスの「We are all alone」っていう曲は、「みんな一人ぼっち」っていう邦題をつけられたことがあるけれど、正しくは「二人だけ」っていう意味なのよね。アローンって、自分ひとりだけの意味じゃあなくて、恋人同士や親しいグループをひとくくりにしてアローンなのよ。あなたはそう思えるパートナーを見つけるべきよ。ビートルズみたいに」
 と彼女は言った。


「今のところは見つからないんだ。だから誘いを断ったんだよ」
 と僕は答えた。

「私とは、アローンになれないの? ジョンとヨーコみたいに」
「どうかな」
「とりあえず、平和のためにベッドインをしてみない?」


 うん、悪くない。


おわり

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