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Reading・Paranoia

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読んだ本の簡単な感想と紹介。一記事あたり約2,000字程度を目標に。小説よりも学術書が多めになるだろう。人文科学系を中心に書いていくつもり。一番好きな出版社は、ちくま学芸文庫。
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#感想

芥川賞雑感「ブラックボックス」を読んで

現代人とは一体どんな人物を指すのだろうか?一歩踏み込んで、現代的若者とは一方どんな人物像…

三津凛
2年前
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木村敏、「あいだ」の概念

木村敏の著作をいくつか読んでいる。彼は精神科医でもあるが、思想家でもある。特に分裂病(統…

三津凛
2年前
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「近代/現代における宗教の私的領域について」

人間にとって、極めてプライベートな領域はいくつかある。性に関すること、信仰に関することは…

三津凛
2年前

新・フェミニズム

柚木麻子の小説が結構好きで、最近新刊が出たそうで早速注文をして手元にあるわけだが、既刊も…

三津凛
2年前
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「美術」への眼差し

佐藤道宣「<日本美術>誕生」を読む。 美術という言葉は、日本において特に明治近代期に造ら…

三津凛
2年前
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meritocracyと個人、その評価〜教育を軸に

岩波新書の本田由紀著「教育は何を評価してきたのか」を読む。著者の本田は冒頭様々な統計から…

三津凛
2年前
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チャイルディッシュ、幼稚性について

チャイルディッシュとは、幼稚と訳される。チャイルディッシュという言葉を見たときに、幼稚性というものへと私は考えを巡らせた。子どもそれ自体に、チャイルディッシュであると表現はしないだろう。チャイルディッシュとは、暗に大人の側に使われる。成熟と未熟とのアンバランスさを含んだものとして私はチャイルディッシュという言葉を捉えた。 「意味の形成と発達 生涯発達心理学序説」という本を読んでいて、この言葉と出会ったのだが、とても興味深い文章があった。第9章の山添正の「日本の父親について」に

「時代区分の単位と文学」

先日、芥川賞受賞の2作を読んだ。「貝に続く場所にて」と「彼岸花の咲く島」である。 「貝に……

三津凛
3年前
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「この社会の片隅に」

「ILLUMINATIONS」という雑誌を読んだ。その中に階戸瑠李という人の「無題」のエッセイがあっ…

三津凛
3年前
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リカレント

社会人4年目というのは、私からするとまだまだひよっこだろうと思う。けれど意図せずに、「も…

三津凛
3年前
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語るを「語る」

私は学生の頃から、アンダーグラウンドなもの、障害や精神疾患、同性愛といったものに興味があ…

三津凛
3年前
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人の多面性

現代思想の2月号に、こんな文章が載っている。渡邉琢の「自立生活、その後の不自由 障害者自立…

三津凛
3年前
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「推し、燃ゆ」雑感

上半期の芥川賞受賞作は宇佐美りんの「推し、燃ゆ」だった。宇佐美りんについては、受賞のニュ…

三津凛
3年前
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「発達障害と少年犯罪、傷ついた脳をめぐって」

「ケーキの切れない非行少年たち」というベストセラーがある。なかなかショッキングな内容だった。著者は確か少年院の精神科医で、一向に贖罪意識や反省の弁を述べない少年たちとの関わりを通して、彼らの脳や認知機能について疑問を抱くようになる。そこで簡単な計算問題や図形の模写、タイトルにあるようにケーキを三等分にするような問題を出す。 少年たちはこうした問題を解くことができなかった。なぜこうしたことが起こるのか? 「ケーキの切れない非行少年たち」では、少年たちは元々発達障害などなんらかの