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社会化する組織

ヨシミツダです。
スタートアップでHRBPをやっています。

今日は会社組織について考えてみます。
会社組織には、「経済的な組織体」という意味と「人々の共同体」という少なくとも2つの側面があると言われています。前者は経済学的なものの見方、後者は社会学的なものの見方になります。

人々にとって組織は、まずもって、自分の生活の糧を得るという経済的な動機を満たす場所だといえます。そのためには、個人として会社全体の経済的な利益があってはじめて、その一部が個人に分配されることを皆理解しています。

また、私達は単に経済的な報酬や技術、知識を求めるだけでなく、豊かな人間関係や自分自身の居場所を会社に求めたりしています。

つまり会社組織は、「経済的な組織体」と「人々の共同体」という2つの側面を持っているため、そこで働く個人には、この2つの側面について組織に馴染むことが求められます。

経済的な組織である会社に対して、十分な貢献ができるだけの知識、能力を身につけ、期待される役割を理解し、それを実際にこなして十分な成果をあげるのはもちろんですが、同時に共同体である組織の中で人間関係を育み、組織の文化を理解し、高い満足でもって仕事を遂行することも必要になります。

組織社会化

組織内での役割を遂行することと、組織のメンバーとして参加することにとって不可欠となる価値観、能力、期待される行動、社会的な知識などを正しく理解していくプロセスのことを組織社会化と呼びます。

ちなみにある社会の構成員になるために必要な価値観、能力、行動、社会的な知識などを理解していくことを社会化と呼び、そうしたプロセスが特定の会社組織の中で起こることを組織社会化と呼んでいます。

組織社会化は入れ子のような構造になっていて、1番身近なチームや職場への社会化、その上位にある会社への社会化、産業・業界への社会化、社会(国)への社会化という風に上位の社会化も同時に経験していきます。

組織社会化の中身

ミシガン州立大学の心理学者ジョージア・チャオらによれば、組織社会化とは具体的に以下の6つの側面について個人が理解していくことを指します。

  1. 仕事上のパフォーマンスの向上(仕事上の課題をどのくらい深く学ぶか)

  2. 人間関係(他の組織メンバーとの間に十分な人間関係をどの程度確立するか)

  3. 政治(組織内での権力構造に関する情報をどの程度持っているか)

  4. 言語(職業に関する専門用語や所属する集団に特有の言葉、俗語、内輪での言葉遣いをどの程度理解しているか)

  5. 組織の目標と価値観(組織の持つ目標や価値観をどの程度理解しているか)

  6. 歴史(組織における伝統、習慣、神話、儀礼などを含む歴史的なことをどの程度理解しているか)

これらの定義に組織の中で求められる役割や、組織との間の心理的契約などを含めることも考えられます。

これらのうち多くが、「人々の共同体」としての組織に関係しています。

組織に加入し、そこに馴染むということの多くの部分が、共同体としての組織を理解することに関わっていることに気づくと思います。

組織社会化の成果

これら6つの要素の理解が深まることに対して、仕事上のパフォーマンスの向上については、そのような学びの結果もたらされるという意味で、社会化そのものというよりもその成果であるといえます。これらの成果には職務上の満足や組織へのコミットメント、組織からの離職・離職意図などが含まれます。

チャオらのいう人間関係、政治、言語、組織の目標と価値観、歴史を学ぶことを組織社会化の一次的な成果、仕事のパフォーマンスが上がったり、職務満足や組織に対するものを、組織社会化の二次的な成果と呼ぶことが一般的になってきています。

組織による社会化戦術

組織社会化とは、個人を組織に馴染ませるプロセスなので、それを促進する主な主体は、当然のことながら組織そのものということになります。
具体的には、直属の上司やメンター、同僚や人事部、同期入社した社員など、組織を構成するさまざまな人々が、組織側の社会化の担い手となります。会社組織の中には、こうしたさまざまな人々によって、個人を当該組織の中に効果的に馴染ませるための方法が多く用意されています。
こうした方法を社会化戦術と呼びます。

社会化は社会化される人自身によっても行われます。例えば、組織の中で積極的に情報収集を行なったり、既存のメンバーとの関係を自ら構築したりするような行動で自らを社会化します。
このような行動のことをプロアクティブ行動と呼びます。プロアクティブ行動には、さまざまな行動が含まれますが、自身に割り当てられた仕事にフィードバックを求めるフィードバック探索という行動がとりわけ組織社会化に深く関わっているということがわかっています。

また各種メディアなどからの社会によって行われる組織社会化も影響を与えます。

これまで記載してきた社会化の話は以下の本を参照しており詳しく学ぶことができます。もっと詳しく知りたい方は以下の本をお読みください。
(固定レイアウトで読みにくいのが残念ですが)

なぜMVVCが重要なのか

社会化という概念を理解するとなぜ企業がMVVCなどのカルチャーコードの浸透に熱心なのかが、理解しやすくなると思います。

MVVCにはチャオらの6つの社会化の側面が含まれており、まさに組織による社会化戦術としてこれら6つの側面の理解を促進しています。

気をつけないといけないのは、社会化することで常にポジティブな組織社会化の二次的な成果を得られるわけではないというところです。例えば組織による社会化戦術が現状の経営目標にそぐわない内容である場合、組織による社会化を達成したメンバーは本来期待するパフォーマンスを発揮できない可能性があります。これは事業フェーズの変化やポートフォリオを変更するなど、なんらかの変化に伴って発生する可能性があることです。

経営に近いメンバーは、組織社会化のメカニズムを意識して、組織内で動作している組織社会化戦術がよい二次的成果に結びついているのか意識しておくことが必要だと思います。

次回は、今回の話の中に少しだけでてきた会社組織ではなく個人から会社組織をみたときに無意識に締結している心理的契約についての話をしたいと思います。

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