【意志あるところに道はある】ケイイチ ちゃり旅20年の道のりVol.4 疾走アジア編②
深川から香港へは自転車のまま入国できた。
イミグレーションの建物を通り過ぎると、渡り廊下で香港へと繋がっている。
香港は中国本土とは全く違った。
中国側では煩くて仕方がなかった車のクラクションの音が全く聞こえない。
「じゃまだ!」と怒鳴られることもない。
交通量はあっても静かな道を、右側通行に違和感を感じながら進んでいった。
香港では、図書館に寄ろうと決めていた。
インターネットを繋いで、いろいろな情報を得るためだ。
2002年当時は、インターネットができる場所はかなり限られていたので、貴重なスポットだった。
図書館で情報収集をして外に出ると、予想外のことが起こっていた。
止めたはずの場所に自転車が無かったのだ。
中国でも盗まれたことがなかったので、油断していたかもしれない。
驚きはしたが、ケイイチは冷静だった。
意志あるところに道がある
行きたいという強い気持ちがあれば行けるはずだ。
ヒッチハイクをするために道端に立った。
なんとか中国側に戻り、広州まで移動する。
広州の日本領事館に勤めていた知り合いを訪ねて、自転車が盗まれたことと、ヒッチハイクで移動してきたことを話すと怒られた。
そして、中国では二度とヒッチハイクをしないで欲しいと言って、自転車をプレゼントしてくれたのだ。
思いがけず2代目のママチャリが手に入った。
一気にベトナムに向かって走り出す。
国境が近づいていた。
道端のドカンとドカンの隙間に寝る場所を確保しながら、ケイイチは中国最後の夜に感慨深さを感じていた。
最初の頃は慎重に寝る場所を選んでいたが、もう寝れる場所を適当に選んでいるだけだった。
見た目も中国人と変わらないので、危ない目にも合わなかった。
身なりが汚くなってくると、お金がないのが見てわかるので、襲われるようなこともなかった。
一度、二人組に荷物を漁られるようなことがあったが、よくよく確認したら警察だったと言う出来事があった。
ケイイチが日本人だとわかると、そのまま去っていった。
国内での取り締まりは厳しい一方で、旅行者には興味がないようだと感じた。
中国からベトナムへの国境は橋になっている。
橋の中央部に白と赤で国境のラインが描かれていた。
自転車を押しながら、ゆっくりと跨ぐ。
一歩一歩、少しずつではあるが、インドへ近づいている気がした。
2002年8月4日、ベトナム入国。
ベトナムは日本と同じように南北に長い国だ。
最短距離でタイに向かうのであれば、ラオスを経由するのだろうが、ケイイチはカンボジアを通ろうと考えた。
できるだけたくさんの国を見たいと思っていた。
そして、現地の人の生活に触れたかった。
日本の生活とは全く違うのが、とても興味深かった。
ハノイでカンボジアのビザを取得した後、ケイイチは引き続き、海に沿って南下する道を選んだ。
ベトナムに入ったことで、またしても言語の問題に直面する。
中国では、紙に書いた漢字を見せると、それを発音してくれるので、必要な言葉を覚えることができたが、ベトナムではそうはいかなかった。
だからと言って、止まることなどしない。
意志あるところに道がある。
ケイイチは何度も繰り返し、その言葉を身体に染み込ませて行った。
ベトナムでは、夜になるとガソリンスタンドで寝かせてもらえた。
その事実を知った後は、夕方になるとガソリンスタンドを探すようになった。
屋根があること、人がいることに安心感があった。
店員さんに声をかけると、「あの辺の隅っこで寝ていいよ」と言われる。
洗車場で洗濯ができたのがありがたかった。
反面、ケイイチはベトナムでとてもショックを受けたと言った。
差し出された物を好意と思って受け取ったら、後から代金を請求されることが度々あったのだ。
寝ている側で頼んでいないのに蚊取り線香を焚いてくれて、ありがたいと思いきや、である。
ニコニコしている人が多く、とても感じが良い人が多かった分、ギャップに驚いた。
この頃、ケイイチは自分の活動記録をWebサイトに投稿していた。
途切れ途切れの更新ではあったが、読んでくれている人達がいて、メッセージをくれた。
その中の一人に、ホーチミン大使館で働いている人がいた。
彼は、ケイイチの旅を応援したいと言って、少しの旅の資金とその日の夕食をおごってくれた上に、知り合いの家に泊まるように勧めてくれた。
何度も何度も人の優しに触れる。
ケイイチ自身の謙虚で温和な人柄が、そう言う人を引き寄せるのではないかと思う。
2002年9月2日、カンボジア入国。
ポルポト政権による大量虐殺の傷痕深いカンボジアでの旅は、これまでの物とは全く違うものになって行く。
Vol.5へ続く https://note.com/mitsuki_nz/n/nd9ff5b3f1e03
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