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#小説
#MTK_漂流詩 人形姫 おしまい
その人はかわいかった。
SNSで見かけた、自撮り。
私を含めて多くの人が必死にかわいさを演出し、縋りつき、縺れあい、引き込まれていくかわいいの坩堝。そんな蟻地獄めいたSNSの自撮り界隈で、その人だけはあるがまにに輝いていた。
彼女はそう、澄んでいる。私たちにありがちな執念や怨念は全く感じられず、ちゃんとかわいかった。どうしてだろう、私は彼女を見たときに真っ先にそう感じたのだ。ちゃんとかわい
#MTK_漂流詩 人形姫 おこり
はじめて自分の顔にメスを入れた時、私の中には言いしれない虚無感があった。ついにここまで来てしまったのか、歪さを直視するようで涙が止まらなかったことを覚えている。
それとも、実は嬉しかったのだろうか。
「私」はいつもバラバラで、矛盾する感情や思考にいつも振り回されている。だから、自分のことがよくわかるけれどわからない。一個一個の部品は鮮明なのに、完成図はぼやけたままだ。
私は私を知りたい。
#MTK_漂流詩 人形姫 はじまり
「まるでお人形さんみたい」
小さいころ、私の話をするお母さんは必ずそう言った。よくわからないけど、たぶんあの人は頭がメルヘン。きゅるるるんって擬音が似合う脳内をしていて、その証拠に私の名前はキラキラした文字だけで構成されてる。その文字が使われてしまった時点で美形以外は許されない。そんな名前。男の子ならそうだな、露美男でロミオとかそういう感じだろうか。美形ならいいけど、おブスでこれは悲惨だ。
も
#MTK_漂流詩 丑三つ時
丑三つ時って何時だっけ?
よく知らない、あんま意識したこともない。そもそもこんな言葉どこで知ったんだっけ。
こういう時、わたしって賢くないなって思う。よく言われる、美姫は馬鹿だねって。うっさいなと思うけど、ほんとのことだからあんま言い返せない。それに、馬鹿なわたしのことがわたしは割と好き。馬鹿なままでいたい、賢くてもいいことないもん。
後ね、自分が馬鹿だって知ってるのはいいことだと思う。こ
#MTK_漂流詩 福男
私の朝は早い。
というよりも、意図的に早くしているといった方がいいだろう。日の出の頃には目覚め、軽く汗を流し、メールのチェックをし、シャワーを浴びた後、家族と食卓を囲む。淡々としているのかもしれない。しかし、その緩やかな時間から確かな価値を嗅ぎ取ることが出来る自分が、私は好きだ。非常に気分がいい。
そもそもこのスケジュール自体が、ある種私の努力と成果の証である。22時に床につけるようになった