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暑さに負ける 南北アメリカ自転車縦断 パナマ(1)

3月3日、チャングイノラからこのまま先を急ぐか、それともカリブ海に浮かぶコロン島にある町、ボカス・デル・トロに行くか当日の朝まで迷っていた。ボカス・デル・トロは周辺に美しいビーチがあるらしい。でもビーチはほんの数日前にコスタリカで堪能したけど。

、、、結局、急ぐ旅でもないのでボカス・デル・トロに行ってみることにする。決め手は島の名前「コロン」だった。コロンと言えば当然クリストバル・コロンのことだろう。そう、クリストファー・コロンブスである。

コロンブスの名前が付いた島って、なんかすごそうな気がする(笑)。

チャングイノラの船乗り場には出航5分前に着いた。料金は人が5ドルで自転車が1ドル。客は他に誰もいない。自分だけかと思ったら、それからボートは一向に出る気配がない。まあこっちも急いでいないので、のんびり待つ。船乗り場と言っても、ぼろい桟橋と掘っ立て小屋があるだけ。目の前は細い水路。要は運河なのだが、「運河」という言葉から想像するような立派なものではなく、土手の土が剥き出しなので、水は赤茶色。辺り一面はバナナプランテーションになっていた。

本当にのんびりとした風景の中、のんびりと待つこと小1時間。西洋人の女性2人組と男1人がやって来て、すぐに出発となった。

このボートライドは楽しかった。最初は運河を海に向かって進むのだが、所々に掘っ立て小屋があって、そこには原住民の人が住んでいる。それ以外はどこまでもバナナ林。

前に座っている女の子2人組が可愛い。写真を取り合っていたので、話すきっかけが欲しくて、写真を撮ってあげる。しかし、モーターボートなので音はうるさく、のんびり会話できる環境ではなかった。ボートを降りたら、、、と思っていたが、彼女たちはボカス・デル・トロに着いた後すぐ、別のボートに乗って別の島に行ってしまった。

ボートは海に出てからはコロン島をぐるり半周してボカス・デル・トロへ。島があちこちにあって、海という感じがしない。対岸の島はまるですぐ手が届くところにあるみたい。

島についてまずはホテル探し。1軒目は1泊13ドル。2軒目に行く途中で黒人のおっさんに声を掛けられる。彼のホテルは12ドルだそうだ。「他を探すよ」と言ったら「ボカスは物価が高いところだから他に安いホテルはないぞ
」と言っていた。

2軒目のホテルは1泊9ドル。あるじゃんか、、、(笑)。すごくきれいなホテルだったのでそこに決める。2泊分18ドル払う。

ホテルはキッチンを使うことができたので、スーパーで食料を買って自炊することにする。町に1軒だけらしいスーパーは中国人経営だった。(これは中米の小さな町の典型と言える。)

久々のインスタントラーメンの昼食後、いよいよビーチへ。北に有名なビーチがあるらしいのだが、道は途中で砂になり、自転車では進めなくなる。諦めて途中のビーチで泳いだが、この名もないビーチがとても良かった。周りが島々に囲まれているので、波がほとんどない。プカプカ浮いてボーッとする。

翌日も午後から同じビーチに行った。他にもビーチはあるのだが、もう遠くへ行くのが面倒くさい(笑)。

この日は黒人の家族連れがいた。子供が材木が浜に上がっているのを見つけ、それを水の中に入れようとするが重すぎてびくともしないので、手伝ってあげる。長さ1m、幅50㎝くらいだったが、いざ持とうとすると本当に重く、とてもでないが持ち上げられない。転がす感じで少しずつ前に押し出して何とか水の中に入れることができたが、あまりの重労働に腕が筋肉痛になった。

でも、そんなに重い木でも水の中に入れるとちゃんと浮くのが驚きだった。

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翌朝、ボカス・デル・トロからはアルミランテ行きのボートに乗って本土に戻る。

船乗り場でイギリス人の若者と少し話をした。彼は3年間の予定で旅をしていて、今ちょうど半分の18か月が過ぎたところだそうだ。

私は自分の旅行の期間は決めていないが、アラスカをスタートしてから8カ月が過ぎたところである。この後の南米も多分同じくらいの期間で終わるだろう。もちろん遊んで過ごすには十分長い期間だが、そんな自分にとっても3年間旅するというのはちょっと想像がつかない。

そんな話をしたら、彼は「俺はお前みたいに自転車で旅するなんて想像がつかないよ」と言っていた。まあ、そうかもしれない(笑)。

アルミランテに着いて、お互いの無事を祈って別れた。

アルミランテからの道は意外にもアップダウンがやたらと多い。特に最初の20㎞くらいで大きなのが2つ続き汗だくになる。とにかく暑い。

景色は森があり、牧場があり、そして所々に家があり。家の大半は高床式で藁ぶき屋根。住んでいるのは例外なく原住民の人たちだった。また、ところどころでカリブ海に繋がっているチリキ湖が見える。これはやはり美しい。

アルミランテから70㎞ほど先のチリキ・グランデで1泊する。「グランデ」はスペイン語で「大きい」という意味だが、チリキ・グランデは町の中心の十字路に店や食堂が数軒あるだけの非常に小さな町だった。これほど名前負けする町も珍しい。

チリキ・グランデの小さなスーパーは客一人一人に店員が付いて回る。盗み防止のためだろうが、正直うざい。しかし、これは同時には客がせいぜい3名くらいしかいないからできるシステムで、小さな町ならではと言える。

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3月6日、カリブ海側のチリキ・グランデから太平洋側のダビッドまで移動。いわばパナマ縦断サイクリング。「パナマ縦断」と言っても距離は110kmほどしかないけれど。

山越えのため、大変だったけどその分景色がスバラシイ。しかも車はほとんど通らない。これこそ最高のサイクリングと言える。

何とかかんとか山を登り切って振り返るとはるか先にカリブ海が広がる。そこから下るとダム湖がある。湖畔に露店が出ていて、スイカを売っていた。25セントで大きな一切れをもらう。水分たっぷりで本当に美味しい。生き返る。

ダム湖からまた登る。そしてその峠を越えると今度は前方に太平洋が見える。この景色がこの日のハイライトだった。多分パナマで一番高いと思われる山からず~っと裾野が広がっていてそのまま太平洋岸まで続いている。なんとも言えない雄大な景色。

しかし下ってからがまだ長かった。暑さと疲労で国道1号線の町、チリキに出たときにはもうフラフラだった。

できればここで泊まりたかったが、ホテルが見つからない。仕方なく20㎞ほど西のダビッドまで走る。ダビッドはこのあたりの中心都市なので、交通量が多く走っていても全然面白くない。本当は目指しているのは東にあるパナマ・シティーなので、明日また同じ道をUターンしないといけないのが辛い。

ダビッドではガイドブックに載っていたホステルに泊まった。相部屋で1泊6ドル。ダビッドはとにかく暑い。暑すぎ。ダビッドはパナマ国内ではかなりの大都市なので大型スーパーなんかもあるのだが、買い物に行ったらクーラーが効いていてめちゃくちゃ快適だった。あまりの快適さに(というか、外のあまりの不快さに)閉店までず~っとそこにいた。

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夜、暑すぎてほとんど一睡もできず。もう自転車で走る気力もなくなっていた。

一応、朝までずっと迷ってはいたのだが、結局パナマ・シティーまで長距離バスに乗ってしまうことにする。440㎞の大移動。

言い訳としては、目指すパナマ・シティーは実はダビッドよりも北に位置している。つまり、「バスに乗っても南には進まない。」

我ながら苦しい言い訳だが、メキシコでもこの言い訳を使ってパレンケからメリダまでバス移動をしている。

また、前日にダビッドまで1号線を走っていたときに豪華そうな大型バスを何台も見た。当然パナマ・シティー行きだろう。あのデラックスバスには乗ってみたい。

まあ、でも結局はあまりの暑さに走る気力を削がれてしまった。これに尽きます。

いざバスに乗ってみると、快適は快適だが、自転車の良さを再認識する結果となった。エアコンが効いていて、それがゆえに外の世界と完全に隔離されてしまっている。途中の町もどんどん通り過ぎるだけで、どんな町があったのかもよく分からない。

バスは夕方パナマ・シティーに着いた。


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