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チアパスの滝とパレンケ遺跡 南北アメリカ自転車縦断 メキシコ(15)

12月8日に日本人宿カサカサを出発。サン・クリストバル・デ・ラスカサスからは199号線を北西に進み、まずはマヤ文明の遺跡があるパレンケの町を目指す。距離は220㎞。

サン・クリストバル・デ・ラスカサスは標高2,200mだがパレンケは平野にある町なので、どんどん下る。

そして下ると暑い。しかし今までと違うのは湿度が異様に高い。じとっとした感じ。手のひらが汗でべたべたになる。緑がうっそうと茂っている。熱帯のジャングル地帯に突入したことが肌で実感できる。

しかし本当にメキシコは広い。メキシコに入国してから2ヵ月弱だが、ついこの間まで半砂漠の乾燥地帯や朝晩には水が氷るほどの寒さの中を走っていたのに。

この日は道端の明らかに使用されていない掘っ立て小屋の脇にテントを張った。

真夜中にパトカーが停まり、警官4人に取り囲まれる。しかし彼らもスペイン語を話さない外国人サイクリストに対してどうしてよいか分からない様子。結局、彼らは私の自転車を道路から見えにくい小屋の陰に移し、「気を付けろ」みたいなことを言って去っていった。

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翌朝、湿度が高いので、テントもびしょ濡れ。どこから侵入したのか、テントの隅の汚れに(食べかすがあったのかもしれない)、アリの一団がいた。殺してテントの外に出すが、こいつら抵抗して指を嚙んできやがる。結構痛い。

出発準備をして、いざ自転車に乗ろうとしたら、ハンドルにも大量のアリが、、、。汗の養分がハンドルに付着しているのを取りに来たのだろう。払って出発したが、さすがはジャングル地帯。

走り出してすぐにアグア・アスールの滝への分岐点に出る。入場料10ペソと道路通行料5ペソを払う。滝までは4㎞急坂を下る。

チアパス州は自然が豊かであちこちに滝がある。その中でもアグア・アスール(スペイン語で「青い水」)は最も有名なものの1つらしい。

アグア・アスールは日本で言うと「袋田の滝」のスケールを何倍か大きくした感じの滝で、川底が大きな階段状になっていて、何段にもわたって水が流れている。とにかく水量がすごい。

有名な観光地のはずだが、近くで野宿していたため私が一番乗りだった。ド迫力の滝と独りで対峙する。こんなのを独り占めしてしまっていいのだろうか。嬉しくて自然とにやけてしまう。(←傍から見たらただの変人。)

滝を充分満喫して、国道まで戻る。当然ながら行きは下りだったので、帰りは登り。暑さと湿気が体にまとわりつくような中を登る。この4kmで汗びっしょりに。汗が目に入ると目が痛い。

昼頃にもう1つの滝、ミソル・アに着く。10ペソの入場料を払って行ってみる。こちらの滝は華厳の滝とか那智の滝のように水が上から一直線に落ちるタイプの滝だったが、規模的にはアグア・アスールよりもだいぶ小さい。しかし面白かったのはこの滝が裏側に回ることができるタイプで、言わば「裏見の滝」になっていたことだ。裏に回ると水のカーテンがまじかに見える。(ただし、その分ずぶ濡れになる。)

2つの滝を楽しんだ後、パレンケの町へ。パレンケは郊外に世界遺産にもなっているマヤ文明の大きな遺跡があるため、バックパッカー向けの安宿がある。ドミトリーで1泊50ペソ。しかし、2泊したが、ほとんどの観光客はサン・クリストバル・デ・ラスカサスからの日帰りツアーで来るようで、宿泊者は私だけだった。

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間の1日を使ってパレンケ遺跡の観光をした。パレンケ遺跡はジャングルの中にマヤ文明の巨大な遺跡がいくつも建っているところで、巨大な石の遺跡群とジャングルの緑の調和がなんともいえず良い感じ。全てが修復されているわけではなく、一部の神殿は土に覆われているままだったりもするが、逆にそれが諸行無常と言うか、時の非情さみたいなものを感じさせてくれる。

一番高い「十字の神殿」は上まで登ることができた。上からは一番大きな「宮殿」を始めとする様々な神殿を見渡すことができる。さらにその先は真っ平らな平原で、どこまでもジャングルだった。

明日からはあの中を突き進んでいくことになる。(と思ったのだが、結局ならなかった。)

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パレンケを出発する日は朝3時くらいから土砂降りの雨になった。(そういえば、遺跡に併設された博物館の説明に「この地はメキシコの中でも最も雨が降る地方だ」と書かれていた。)

その後、7時くらいには雨は止んだので出発するが、10kmほど走ったところでパンク。(この頃はすり減ったタイヤで走っていたので、本当にしょっちゅうパンクしていた。)これだけならまだしも、パンク修理の最中に突然バケツをひっくり返したような大雨。チューブやタイヤが雨で濡れると砂利が付いて、簡単に取れなくなる。頑張って1つ1つとっても、チューブが地面に触れたとたんにまた砂利がついてしまう。

全てがびしょ濡れ。とにかく最悪の出来事で、この先走る気が失せてしまった。何とか応急処置をして、パレンケに戻る。パレンケに着いた時には雨は止んだが、またすぐにでも降ってきそうな気配。

パレンケのバスターミナルに行ってみると、この先のカンペチェ州の州都カンペチェまでのバスは朝8時と夜9時にあった。朝8時はもう過ぎているので、乗るとしたら夜9時発である。しかし夜9時発ならカンペチェに着くのはきっと真夜中だろう。それはちょっと辛い。

しかし更に確認すると、カンペチェへ行くバスはカンペチェが終点でなく、更にその先のユカタン半島の中心都市メリダ行きだった。

メリダまでバスでワープしてしまおうか。

もともと、グアテマラのアンティグアにある日本人宿にクリスマス前に着くのが目標だが、メリダまでバスで行けばその後の日程はだいぶ余裕ができる。

しかし、これまでも一部公共の交通機関を使ったことはあったが、それらは全て大都市圏の出入りの部分だけとか、あるいは船での移動だった。今回はそれらとは明らかに違う。なんか自転車旅行から「逃げた」ことになるんじゃないか。

悩んだが、結局バスを使うことにする。一応、自分への言い訳としては、「メリダはパレンケよりも北にある。だからバスで「先に(つまり南に)進んだ」ことにはならない」だった。

、、、まあ、最初から別に決まったルールなんてないので、やりたいようにやれば良いのだけど。

メリダまでのチケットは287ペソ(2870円)。チケットを買ってからは室内でゆっくりパンクの修理をする。この時点でタイヤにはかなりあちこちに割れ目が出来ていたのだが、そのうちの1つにガラスの破片が挟まっていた。パンクが多かったのはこのせいかもしれない。

夜9時まではネットカフェやバスターミナル内のテレビでサッカーの試合を見たりして時間をつぶした。

予想外だったのは自転車に50ペソ取られたこと。大きい荷物なので仕方ないが、でもどうやら運転手のポケットマネーになった気がしなくもない。

乗客は20人弱ですいていた。観光地を結ぶルートのため、半分以上は西洋人バックパッカーだった。

メリダには翌朝5時半に着いた。




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