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自分を脱いだら「何かがはじまっちゃう」小田原のゲストハウスが教えてくれたこと

2024年の4月から、小田原にあるゲストハウスで働きはじめました。ここは「何かがはじまっちゃう」というユニークなスローガンを掲げた宿です。

働きはじめて数ヵ月。だいじなことをたくさん教えてもらいました。もらったら返す。もらってきたものを、言葉でまとめてみようと思い立ちました。

「何かがはじまっちゃう」と、このスローガンの裏にある2つの言葉、「心のパンツを脱ぐ」「まず自分がハッピーであること」、そして働きはじめたきっかけなどについて、少し長くなりそうですが、気長にお付き合いしてもらえると嬉しいです。


「Tipy records inn」といいます

神奈川県小田原市にあります。小田原城が有名です。駅から約3分の好立地。昭和の雰囲気漂う商店街を抜けてちょっとディープな路地に入ったエリアにあります。

いわゆる「まちやど」「街ごとホテル」「分散型ホテル」タイプで、3つ(8月からは4つ)の宿泊棟が徒歩1分ほどの場所に点在しています。共用スペースのあるいわゆるゲストハウスに近いタイプもあれば、プライベート重視型のアパートタイプも、一棟貸しタイプもあります。

ちなみに、「Tipy records inn」は、名前にrecordsが入っているのでお気づきかもしれませんが、音楽に関係する宿でもあります。

(「Tipy records inn」HP)

そして8月に新しく宿泊棟がオープンします。こちらはカフェ&ラウンジ併設で、チェックイン棟にもなる、これからのTipy records inn、略してTipyの顔になるであろう建物です。

その新しい建物、「Tipy records inn Photon」オープンに向けて、現在クラウドファンディングに挑戦しています。クラファンのページを見ていただくと、Tipyがどういうゲストハウスなのかということがだいたい伝わるかと思います。もう色々豪華です。(現在ラストスパート中です。7/31 23:59まで…!)

プロジェクトページ(2024年7月27日現在)


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好きをアツく語る、かっこいい人間になりたくて

ここからは個人的な話をします。

2024年の3月の終わりに面接をして、4月から働きはじめました。

それまで、しばらく地元を離れて暮らしていて、2021年の秋に地元に帰ってきました。やってみたかったライターの仕事をはじめて、運よく家からすぐ近くのホテルでの働き口も見つかり、文化的な最低限度の生活が送れるくらいの収入を得ながらやりたいことにもチャレンジできる、それなりに充実した日々を過ごしてきました。

実は、Tipyのことは以前から知っていて、Tipyが主催している「まち歩きツアー」というものに、1度、帰ってきたその冬に参加したことがありました。

そこで感じたことは、小田原や、Tipyに関わる人たちは好きで生きている人たちばかりだな、ということでした。私の目にはその姿がとても格好良く見えました。

好きを、ちゃんと仕事に昇華して、他者に影響を与えている。そんな堅苦しい表現ではなくて、ただ、好きなものをアツく語る姿を見て、私もこんな人間になりたい、と思ったような気がします。

私の好きって何だろう。語れるほどの好きはあるだろうか。

小田原に、Tipyに身をおいたら、何かわかるかもしれない。かっこいい人間になれるかもしれない。そうぼんやりと思いはじめていたタイミングで、偶然、スタッフ募集のお知らせを見つけました。応募することに迷いはありませんでしたが、不安はありました。

ホームページに載っているスタッフは、みんな何か好きなことをちゃんと形にしている人たちばかりで、一方で、私は何もない。自分が果たしてTipyに相応しい人間なのか。でもまあ、それを決めるのは自分じゃない。

振り返ってみると、このときの一歩は本当に大きな一歩でした。3月の自分、ありがとう。

(まち歩きのときのワンシーン)

まずは掃除から

Tipyでの仕事は、まずは掃除から始まります。それは、掃除への取り組み方で、どういう人わかるから。その姿勢を見て、一緒に働きたいと思えるかどうかを決める。それがTipyの基本姿勢です。朝10時から12時までに、多い時は全8部屋の掃除をします。

初日は緊張しつつも、郷に入っては郷に従えではないですが、感覚を掴むことに全集中しました。短い時間でスピード感を持ちつつ、丁寧にやるところは丁寧に。

何日か掃除をしてみてわかってきたことは、そこに“自分”は必要ない、ということです。他のことを考えながら掃除やベッドメイクをすると、それが表れる。整っていなかったり、何かを忘れたりしてしまう。

掃除は誰にでもできる簡単な仕事だ、ときっと多くの人は思っているかもしれませんが、奥深いです。かなり。映画『PERFECT DAYS』で主人公はトイレ清掃を生業にしていますが、この映画は「ZEN MOVIE」と言われているそうです。

(映画『PERFECT DAYS』パンフレット)

同じ釜の飯を食ってはじめてわかること

掃除の後は、お昼を食べに行きます。自由参加ですが、私は出勤の時は必ず食べてから帰るようにしていました。お昼を食べながら、いろんな話を聞いて、いろんなことを知りました。

宿を始めたきっかけ、いま進めている仕事のこと。移住相談のことや、ARUYO ODAWARAの話、クラファン、新しくオープンする宿とカフェの話。スタッフの関係性、オーナーとオカミの関係性、などなど。

いつも行っているお昼のお店はだいたい行って、だんだんと掃除の全体像や宿のことがわかってきて、そうしてあっという間に2ヵ月が経ちました。5月の終わりに一緒に働く時間を増やしたいと声をかけてもらえて、やってみたいと思っていた宿の運営的な部分にも関わらせてもらえることになりました。

気がつくと、働く前に感じていた、相応しいのだろうか、という不安はどこかに消え去っていました。というかもうどうでもよくなっていました。

(ある日の定食)


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心のパンツを脱ぐ

Tipy records inn のキャッチコピーである「何かがはじまっちゃう」。

これは、Tipyに関わる人たちは何かがはじまっちゃう人が多いよね、という話から出てきた言葉だと聞きました。

そのコピーの裏には、「心のパンツを脱ぐ」という言葉が隠れています。隠れている、というか、まず「心のパンツを脱ぐ」そして、「何かがはじまっちゃう」。

「心のパンツを脱ぐ」とはどういうことか。

6月に研修がありました。そのときにTipyのオーナーが、彼は中学校の時に同級生とケンカをして学校を飛び出して、そのまま学校に行かなくなり、それからバンドと出会い今に至るのですが、

「勉強ができる自分が自分だと思い込んでいて、そういう自分であり続けないといけないと思っていたけれど、その自分は別に大して自分じゃなかった」

というようなことを言っていました。

この数ヵ月で、なんとなくわかったような気がしていて、私の場合は、「文章を書くことが好きな自分」とか「話を聴くことが得意な自分」とか、確かにそれらは好きなことではあるけれど、それをやっていかなければいけないと思い込んでいたような気がします。

Tipyに来て、まずは掃除をして、感覚や温度感を掴むことに全集中して。修行みたいなものなのかもしれないなと、実際に修行をしたことがないのであくまで感覚的な話なのですが、そこに「自分」は必要なくて、むしろ「自分」という服を着ていると動きにくいから脱いでいく。

そうして気がついたら、心が裸になっている。

あとは、Tipyのスタッフは、すでに心のパンツを脱いでいて、全裸の状態で楽しそうに踊っていて、その中で服を着て直立で立っていたら違和感しかないし、きっと踊りたくなっちゃう。一緒に楽しく踊るためには服を脱ぐしかなくて、自然と脱いじゃう。

「心のパンツを脱ぐ」というのは、そんな感覚なんだろうな、と思いました。

(研修の後の飲み会、なんじゃもんじゃで大爆笑)

自分がハッピーであること

研修でもうひとつ教えてもらったことがあります。それは、「まず自分がハッピーであること」。そのハッピーが、Tipyのみんなや地域の人、そして宿泊ゲストに伝播していく。それがTipyの姿だと。

6月から、運営関連の業務に携わるようになりました。日々新しいことを教えてもらって、なんとなく全体像が掴めてきたなと思ったとき、ただ目の前の細かい業務をこなすだけになっていて、心が全然ワクワクしなくなっていることに気づきました。

自分がハッピーじゃなくなっている。

ハッとして、日々やっていることをノートに書き出して整理しました。やっていることは、つまりはゲストとのコミュニケーションで、快適に過ごしてほしい、良い旅であってほしい、そのためのコミュニケーションをやっている。

つまりゲストをハッピーにする。そのためにはまずは自分がハッピーであること。それが大事。良い学びになりました。

(研修での学び)

そして、「何かがはじまっちゃう」

「心のパンツを脱ぐ」そして「自分がハッピーである」状態で、そのハッピーを伝播していく。

それが体現できたとき、きっともう「何かがはじまっちゃう」。

(Tipy records inn HP)


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ずっと探していた理想の自分はどこにもいなかった

Tipyで働きはじめて、いろんなことを教えてもらって、自分の中で大きな変化がありました。

ずっと、何かをやっている人にならないといけない、という思いがありました。学生時代から、周りには何をやっている人たちばかりで、その姿への憧れがありました。私も、湧きあがる情熱を注げる何かをやっていきたい。

これかもしれない、いやこっちかも。ちょっと違うな、これかな。選んできたものはどれも、表面的な言葉でしか伝えられませんでした。何者かにならないと、他者との関係性を築いていけない、と思っていました。"やりたいこと探し"に拘りすぎて、大切にしたかった人を失ったりもしました。

Tipyで日々を過ごすようになって、何かをやっている人にならないといけない、という気持ちは、気がついたらどこかに消え去っていました。もうどうでもよくなっていました。何者でもない今の自分で、大丈夫。

不思議なもので、今まで必死に探してもなかなか見つからなかったものが、ちゃんと湧き上がってきています、今。やりたいこと。やりたいこと、というか、これから、たぶん長くやっていくんだろうな、ということ。取り組んでいきたいな、と思えること。

いま言えることは、目の前にいる相手の目をまっすぐ見て、好きだと言える人間でありたい。ということです。

(神奈川の清流、酒匂川)

すっぴんになれる街、小田原で待っています

「これはあるあるなんだけど」
オカミが言うには、チェックインのときにはバッチリメイクだったゲストが、すっぴんで帰っていく、その姿を何人も見てきたそうです。

それはただ朝支度する時間が無くてバタバタで、という話ではなくて。

「小田原ってなんかパジャマでも歩けちゃいそうな雰囲気があるよね、もちろんいい意味で」遠くから小田原にあそびに来ている人が言っていました。

いま着ている服がちょっと似合わないと感じたら。ふらっと電車で小田原へ。電車を降りて、深呼吸をして、なんとなく海の香りを感じたら。香りを辿って、吸い込まれるまま路地を歩いてみてください。そして、もう少しこの街を感じたいと思ったら、ぜひTipyへいらしてください。

「Tipyには、心のパンツを脱いだヒーローの残り香が宿っている」

新しくできる宿の「photon」とは、素粒子、という意味だそうです。ヒーローたちの素粒子が漂う空間で、ほっと一息しませんか。

(Tipy records inn HPより)

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