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グランブルー 挑戦と紺碧

映画館に何度も足を運んだ大好きな映画がある。

『グランブルー』1988年公開フランス、イタリア合作映画。リュック・ベッソン監督。エリック・セラ音楽。フリーダイビング世界記録に挑戦する2人の幼馴染の友情と愛を描いた作品。

この映画の1番のお気に入りは、スクリーンに広がりる紺碧の世界に終始包まれ、まるで海の中にいるみたいに感じるところ。

音楽も深海の鼓動を感じさせるエリックセラの技もの。後に『レオン』に『ニキータ』、『フィフスエレメント』などなど、リュックベッソン監督とコンビを組んで映画を盛り立ててくれている作曲家の音楽。

この作品が頭に浮かんだのは、絵本の為に京都市水族館に赴いたからかも。館内はブルーの世界。大きなエイやイワシの群れが踊る巨大な水槽を眺めているとまさに『グランブルー』を思い出した。

最近はコロナのせいで、自宅に篭もりがち。昨年はそれでも何か新しい事が始まるようでワクワクしていたが、長引いてくるとなんだか、少し世の中から距離を感じている。世の中に自分だけが漂っているような”浮遊感”を感じている。実際は仕事もあるし、家族のこともあるし、対応しないといけない事が雨霰なんだけど…それでも世の中の波に流されるがままの姿がクラゲみたいに思えてきて…

今回はクラゲをテーマに描きたいと思いたった。 クラゲってどんなのだったっけ?!と、あれこれ探してみたけれど、いまいちネット情報だけでは分からないことだらけで手が止まってしまうため、実際にクラゲを水族館に見に行ってきた。

実際のクラゲは、傘が閉じたり開いたりする度に、裾の糸状触手が繊細なレースのような動きをするのが素敵。口腕のヒダの絡み具合も優雅。ジェリーフィッシュと言われるだけあって、ジェリーのようなプニッと感に透明感がある。しかも傘が二重構造に見える。散在する神経網が1番外側の傘から透けて見えてゴージャス。一般画像では分かりにくい繊細さ、実物を観察してこその感動があった。

スケッチブックと鉛筆で、クラゲの動きを追う。学生時代ぶりかも…形をとる訓練で学生時代は授業中や電車の中でもずっと周りの人物をスケッチをしていた。だから今の堅い筆運びに我ながら傷心。デッサンはやればやる程、筆運びが滑らかになるんだけど、錆びついた腕は其れなりにもう一度トレーニングが必要だ。形を取るのも感覚が鈍っている。自分が特に優れた画家でないのは昔から分かっているけれど、今は特に酷い…描かないと形さえ取れない…反省しきり。

その後は、水族館の巨大な水槽の前のソファに腰掛けて、じっと魚の動きを見ていた。思いは1992年の自分と今の自分が交差する。

1992年の私は課題の為、毎日絵を描いていた。絵の具とキャンパスを買う為にバイトは欠かせなかったけれど、今よりはずっと描いていた。段々と大きくなるキャンパスと格闘していた。そんな時期に見た映画が『グランブルー』だった。

実在の2人のダイバーをモデルにしたフィクションなのだとか。主人公の天才型ジャックマイヨールとその実力を買う挑戦者エンゾモリナーリ。2人の意地の張り合いが楽しい。そこに恋愛色で色付け。昔はジャックの魅力に釘付けだったし、その彼女ジョアンナとのフレッシュな絡みが憧れで、悲しい結末に涙していた。だけど、そんなにも夢中になれることにめぐり合い、ライバルと切磋琢磨し合い、生死を賭けて挑戦出来ることが羨ましかった。

歳を重ねて昨年、改めて映画を観る機会があった。エンゾと大会期間中に連れてきた彼女のエピソードが胸に沁みた。彼女はシングルで子供を育てていた。妊娠が分かったジョアンナに残す言葉がジョアンナの未来を予感させていたんだ…

エンドロールで「娘のジュリエットに捧ぐ」という言葉はずっと、ジョアンナに無事に女の子が生まれたことを示唆してくれてたんだと思ってた。けれど実際は、重い障害を持って産まれた娘に捧げた監督自身の言葉だったようだ。

実物のジャックマイヨールがインタビューで軽快に「彼女を残して死ぬ、なんてことはしない。」と言っていた。映画ではナイーブな青年にみえた。実物はかなり映画とは性質が違う人物だと印象深かったが、晩年、鬱を患い自殺されたとのこと。ご冥福をお祈らずにはいられない。

同じ映画を観ても年齢を重ねると着目点が違ってくる。思わぬ視点ができるものだ。ただ、一貫して素晴らしいのは、紺碧の世界。まさにグランブルーの世界。何回観ても好きだな。

そして、あの頃には、持てなかった夢。今実現したいと思える夢があることが今の私が素晴らしいところ。

若さはないし、色々な感覚も衰えがち。目は老眼だし、肩こりも酷い。集中力も長続きしない。後何年自由に身体が動くのかメンテナンス次第というところかも…憧れのヴィヴィアンウェストウッドにターシャチューダーは年齢を重ねることに美しい。ご高齢になっても現役で仕事をこなしている。先人の背中を追いかけて生涯現役でいたい。

水族館で観た紺碧は、未来への挑戦を描く色であって欲しいと思っている。









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