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日の名残り 忠実な働き

ツバメが元気に飛び交う季節。春芽吹いた草木の若葉もいつの間にかこんもり育っている。玄関先が糞で汚れちゃうけど、縁起が良いからと大切にされたツバメの巢。頭に糞を落とされないかと、巣を見上げながら、母屋の高い敷居を跨いでいた子供の頃の思い出…


割り箸筆でまた落書きをしていた。青く染めた空にツバメを描いてみたら、寒々と落下しているツバメのように見えたので、そのまま画面を暗くして、王子様を描いた。

オスカーワイルドの『幸せな王子』の出来上がり。

『幸せな王子』…若くして亡くなった王子は、街を見下ろす高台の上で、宝石や金を散りばめた豪華な銅像となった。心優しい銅像の王子は恵まれない方々の為に、自分に施された宝石や金をツバメに運ばせて分け与える。ツバメは寒くなる前に温かい南へ渡らなければならないが、優しい王子の頼みを断らずに最後まで働き、財宝が剥がれボロボロになった王子の足元で凍え死ぬ。王子とツバメは神様に祝福され、天国に召される。

草木も育つ皐月の季節に、雪景色とはいささか、季節外れだが、思いはツバメに飛ぶ。王子の優しさに答えるように忠実に働くツバメに。

映画『日の名残り』が浮かんだ。カズオ イシグロ原作。イギリス映画。ジェームズアイヴォリー監督。アンソニーホプキンズ主演。

名門貴族に使える完璧な仕事振りの執事。彼には心惹かれあった女性がいた。ところが一方で彼女の結婚話が進む。手を伸ばせば手に入れることも出来たはずの幸せなのに、彼は仕事を忠実にこなすことを選ぶ。焦ったくて、切なくて、かたくなで、愛おしい執事の恋バナ。

オスカーワイルドの名言が頭をよぎる。

”わずかばかりの誠実さは危険であり、度を越した誠実さは致命的である”

ただ、幸せの価値は人それぞれ。何に命を投げ出すほどの価値を見出すのかも人それぞれ。

命を掛けてもかまわないくらいに情熱を傾ける仕事にめぐり合い、職務を忠実に全うする幸せも、至極の幸せに違いない。その方らしい選択があるのだ。たとえ、一抹の後悔を残しても。別の選択を選べない自分がいたのだから…


ツバメ。外敵の多いツバメは外敵から身を守る為に人通りの多い場所に巣を作るのだとか。人が集まるから商売繁盛の象徴なのだとか。縁起がいい!

気がつけばいつも通る駅の高架の下の明るい通用口に小さな巣が出来ていた。ヒナが巣立つまで、鳥獣保護法で撤去禁止の保護期間。

ともかく、頭に糞を落とされないように、気をつけて通ろう。













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