見出し画像

ちいさくなったら

「ありっあり〜アリアリアリアリありっあり!」
幼稚園バスから降りてきた4歳次男は、先生に挨拶もせずに「あり」を口ずさんでいた。
ラップのような独特のリズム。手足もちょっと踊ってる。
今日もあっちゃんはごきげんだ。

「先生にさよならは?」
言わせようとしてる間に扉は締まり、窓越しににこやかに手を振る先生が遠ざかっていく。
「さよおならっ!ありっ!」
やっと挨拶した時には、バスのおしりが曲がり角に消えていくところだった。

「きょうね、ときが『ちいさくなったらなんになりたい?』ってきくから、あつは『あり』っていったの」
ありありありと発し続ける人の手をひき、歩きだして15歩目、やっと人間の言葉を話してくれた。

とき君からの質問の答えを、何故かひとりでラップしてたのか。
しかし「小さくなったら」って面白い。
「小さくなれるなら」って意味で言ったのかな。

「あと、ゆいが『おおきくなったらなにになりたい?』っていうから、うしっていった」

「大きくなったら」というスタンダードな質問が先にあって、そこから「小さくなったら」が派生したのかも?
年少さんたちの会話が気になるが、アリアリをまた繰り返してる子の話からじゃこれ以上不可能。

しかし「大きくなったら」は成長したらって意味ではないのか?
将来の夢を聞こうと思って牛と言われたら返答に困るぞ。

「で、あっちゃんは小さくなったらアリで、大きくなったら牛になりたいのね……なんで?」

「そう。それかちいさいのは、ねずみかごきぶりでもいい」
「な、なんで?」
ネズミはまだしも嫌われもののゴキブリになりたいって何?

「だって、なんでもたべられるから!」
意気揚々と鼻を膨らませて宣言。

な、なるほど。
サバイバルな環境を生き抜くための選択だったのね。

「じゃあ牛よりヤギのがいいかもよ」
老婆心ながら助言したら、
「ええ〜、ヤギってさぁ〜、かーちゃん……」
なんだか呆れたように言われた。
え、だめでした?

ヤギがいかになんでも食べるか語ろうとしたところ、
急に眉をひそめてしゃがみ込む次男。
「かーちゃん、うんち、でる……」

またかぁ。

「あるけない……だっこ」
こうなると絶対自力では歩かない次男をしぶしぶおんぶ。
「はやくね。はしってね」
「へいへい」

生意気だけどぷにぷにの太ももがかわいい。しかし重い。
ずり落ちてくる体を何度もよいしょとなおしつつ、ふと思う。


この人、アリになっても絶対働かないタイプだろうな。

大きくなったらほんと、なんになるんだろう。

この記事が参加している募集

#子どもに教えられたこと

32,992件

#子どもの成長記録

31,624件

サポートいただいたら、飛び上がって喜びます。 いただいたお金はサポート、本の購入、noteのネタになる体験に使います! ちょっぴり息子とのおやつに使っちゃうかも。