マガジンのカバー画像

アオイクニノモノガタリ

19
運営しているクリエイター

#note初心者

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐エピローグ‐

雪子が蒼国に戻って数日。
大人の冬休みも、終わりが近づいている。

なんとも不思議な時間だった。
そして、楽しい時間でもあったなぁ、と振り返る。

夢だったのか、現実だったのか。
それを確かめるすべもないまま、時間は過ぎていく。

だいぶ暖かくなり、桜の開花予想も発表された。
いつもならGWにかけて見頃を迎えるが、今年は4月中旬には咲き始めるようだ。

家族との3ヶ月という時間。

もっとみる

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐トビラ‐

「雪子っ!あった、あったよ!」

部屋に駆け込むなり、そう言った私に雪子はびっくりしていた。

「あったって・・・ツララ?」
「そう、あったの、ツララ、大きい、やつ。」

息が切れて、言葉も途切れ途切れだ。

「今日、ほら、暖かいから、早く、行かない、と。」
「えっ。 あ、そっか、とけちゃうっ!」

雪子も、急がなくちゃ!と気付き、二人でツララのある場所へ向かった。

幸い、まだそこ

もっとみる

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐みつけた‐

出かけるたびに、キョロキョロとツララを探す。
人生の中で、こんなにツララを欲したことがあっただろうか。

雪子をとうさんかあさんに早く会わせてあげたい。
ただ、その為だけに。

「はぁ、今日もみつからないか・・・」

写真整理のアルバムを買いに出た帰り道。
普段は通らないような道も歩きながら、ツララを探す。

こんなにみつからないとは。
子供の頃はそこら中にあったのになぁ。

諦め

もっとみる

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐ツララ‐

それから二人のツララ探しが始まった。

山の中、滝が凍っているような場所だったらすぐみつかるんだろうけど、街中で探すのはなかなか難しかった。

私が子供の頃は、あちこちの屋根にツララができ、それを遊び道具にしてたものだ。

でも今は、新しい建物が多く、屋根の形状のせいなのか、ツララを見かけても小さな短いものしか目につかない。

「あのね・・・」

ツララが見つからず、二人とも疲れ切っ

もっとみる

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐蒼国‐

そこは深い森の中。
木漏れ日が降り注ぎ、心地いい場所だ。

ニャロメTシャツの山守さまと、隣にはいかにも山守さまといった風情のおじいさんが立っていた。

「雪子や、ひさしぶりじゃのぉ。」
「山もりさまっ!」
「元・山守さまじゃ。」

あ、そうだった。と、雪子はテヘヘと頭をかく。

「ユッキーコサン、オトウサンサガシテイルト、キキマシタ。」
「はい・・・」
「オトウサンオカアサンモ、ユッ

もっとみる

アオイクニノモノガタリ -蒼国物語-

-山守さま-

雪子は手や顔にクリームがつくのも構わず、美味しそうに楽しそうにケーキを頬張る。

いろいろ考えたりしたけど。
まぁ、とうさんを探してあげたら、雪子は安心するのよね、きっと。

聞きたいことは山ほどあるけど。
とりあえずは、とうさん探しを終わらせなくちゃ。

「んふぅ、おいしかったぁ!」

雪子は満足そうに声を上げた。
なによりなにより。
手も口の周りもクリームだらけだけど。

拭い

もっとみる

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐ひなまつり‐

雪子はお母さんの妹。
と、いうことは、私の家族ってこと、だよな。

ってことは。
雪子の探しているとうさんは、私のおじいちゃん。
ってことに、なるよ、な。

んーーーーーーーーー。

考えたところで、答えは出ないし。
少し休憩しよう。

今日は3月3日。ひなまつり。
実家で迎えるのはかなり久しぶりだし。
せっかくだから、雪子にも楽しんでほしい。

ひなまつりを口実に、ケーキも買っ

もっとみる

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

-家族の写真-

写っているのは赤ちゃんだ。
こちらを見て笑っている顔が可愛らしい。

目元の感じとか鼻筋が雪子に似ている感じがする。

ここにある写真は、おそらく私の家族の写真だ。
この子は・・・だれなんだろう。

そして。
深く考えなかったけど、ここにいる雪子は。
なぜ私の前に現れたんだろう。

難しいことは、私にはわからない。
けど、なんというか、感覚的になんだけど、雪子がここにいることに違

もっとみる

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐写真整理‐

雪子と出会って早1週間。
あれからなんにも起こってはいない。

雪子は変わらず私の部屋でのんびり寝ている。

とうさんを探すのはどうなったんだ?
とは思うけど、私にはどうにもできないし。

たまに目を覚まして、私に声をかけるけど、すぐに寝てしまう。
こんなに寝ていられるのは、ちょっと羨ましい。

この1週間、私は部屋の片づけを始めていた。
お父さんが亡くなって1年が過ぎているが、お

もっとみる

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐さんぽ‐

テレビショッピング。
ここもテレビショッピング。
あとは、昔のサスペンス、か。

チャンネルを回してみるも、心躍るような番組はやってない。
そもそもチャンネルが5つしかないんだ。
見たい番組がやってる方が珍しい。

さんぽ、行ってみようかなぁ。

たまに実家へ帰ってきても、家族と過ごし、友達と会い、あっという間に3泊4日なんて終わってしまう。

が、今回は3か月だ。
天気もいいし、久

もっとみる

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐朝ごはん‐

1時間ほどウトウトして、さすがにもう起きようと布団を出た。

今日は雪も止み、陽射しが暖かそうだ。

今度こそ夢から脱出か!と思ったが、まだ雪子はそこにいる。
ということは、まだ夢なのか。
それとも現実なのか。

ま、朝ごはんでも食べるかぁ。
散歩するには気持ちよさそうな天気だし。

こんがり焼けたトーストにバターを塗り、ホットミルクにインスタントコーヒーを溶かして準備する。

もっとみる

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐布団の中‐

気が付いたら、布団の中だった。

あれ。
さっきまで海の上にいなかったっけ?

あ・・・そっか、夢から醒めたのか・・・。

ぬくぬくの布団の中で、さっきまでの夢を思い返す。

ちっちゃい子が現れて、自分が小学生に戻ってて、その子のお父さんを探しに行ったんだっけ。
あのス〇イムさま触りたかったな・・・・・

もう一度、眠りの中に入ろうと、寝返りを打った視線の先に。

私のB'z LI

もっとみる

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐海守さま‐

「海守さまに聞いたらどうだい?」

ハチの提案に、雪子は海の方向に手を伸ばした。

海には、人々が運んだ雪がプカプカ浮いている。
あぁ、そういえばこんな景色を見るのも久しぶりだな。

雪が積もり続けると、雪を寄せる場所もなくなってくる。
そうなると、軽トラで雪を運び、海に捨てる人たちがいたものだ。
今もそれは続いているのだろうか?

その光景を見ながら、流氷ってこんな感じなのかなぁ

もっとみる

アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐雪子‐

モコモコに着込んで、外に出た。
家も周りの景色も何もかも、私が小学生だった頃に戻っている。

いやぁ、夢ってすごいな・・・
自分の記憶でも、ここまで鮮明に思い出すことはできないだろう。

我が家だけじゃなく、周りの家々も古い家に戻ってるし。
お向かいにあった商店もなくなったのに、そこにズラリと並んでいた自動販売機も元通り。
今ではお目にかかれない銘柄もあるし、メジャーな物もデザインが昭

もっとみる