アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐雪子‐

モコモコに着込んで、外に出た。
家も周りの景色も何もかも、私が小学生だった頃に戻っている。

いやぁ、夢ってすごいな・・・
自分の記憶でも、ここまで鮮明に思い出すことはできないだろう。

我が家だけじゃなく、周りの家々も古い家に戻ってるし。
お向かいにあった商店もなくなったのに、そこにズラリと並んでいた自動販売機も元通り。
今ではお目にかかれない銘柄もあるし、メジャーな物もデザインが昭和だ。
250ml缶しか並んでないし、プルタブ外すタイプの缶ジュースだよなぁ。

雪ん子姿の女の子は、なぜか私の肩にちょこんと乗っている。

「で、どっちにいくの?」

彼女がスッと右手を上げる。
と、足元の雪が舞い上がり、視界が遮られる。

これって、駅前で起こった地吹雪みたい。

真っ白な景色と、浮遊感に驚きつつ、ゆっくりと目を開けてみると。
本当に浮いていた。

「ちょ、え、どういうこと!?」

どうやら家の上空に浮いているらしい。
ふわふわと浮きながら揺れている。

「んー、あっちかなぁ。」

また彼女がサッと手を動かすと、その方向に体が進んでいく。

なにこれ、やば、楽しい。

自分の意志ではないし、どこに向かっていくのか、わからないけど、夢だし身を任せておこう。
寒いのは逃げらんないけど。

飛んでる私たちに並ぶように、スーッと1羽の白鳥がやってきた。

「雪子じゃないか、どこ行くんだよ。」

「とうさんさがしてんの。ハチ、見なかった?」

どうやら女の子の名前は雪子。白鳥はハチって言うのか。
ってか、白鳥と話してるよね?

フワフワした感覚のまま、浮遊感にドギマギしている間も、雪子とハチは話し続けてる。

雪子がどこに向かおうとしてるのかわからないまま、身を任せるしかないのだった。


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