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野口英世とビフィズス菌【12/365】

日報再開。もう400字詰めを埋めるつもりで書く。一言コメントになるかもしれないがそれでもいい。


今気になっているのがコチラの文献。

Noguchi H. PLEOMORPHISM AND PLEOBIOSIS OF BACILLUS BIFIDUS COMMUNIS. J Exp Med. 1910;12(2):182-195. doi:10.1084/jem.12.2.182
「Bacillus Bifidus. Communisの多態性と多生命(?)」

https://rupress.org/jem/article-abstract/12/2/182/1899/PLEOMORPHISM-AND-PLEOBIOSIS-OF-BACILLUS-BIFIDUS?redirectedFrom=fulltext

正直この翻訳が正しいかも不明。

野口英世と言えば梅毒スピロヘータの純粋培養や、脊髄癆患者の脳内からスピロヘータ分離、狂犬病/ポリオ/黄熱/オロヤ熱/ペルー疣の病原体報告で有名だが、ビフィズス菌の報告はあまり知られていないのではないだろうか?

例えば野口英世の学術的業績をまとめた書籍は国会図書館よりコチラが参考になる。

丹実. 野口英世 : その生涯と業績 第3巻 (業績). 講談社; 1977.

或いは、↑の文献で序論を担当されている吉井善作教授によるこちら↓の文献リストも参考になる。

Yoshii Z. Bibliographical Review on the Academic Achievements of Dr. Hideyo Noguchi. Bull Yamaguchi Med Sch. 1976;23:1-26.

野口英世は文献の大半がJournal of Experimental Medicineに投稿されているが、それ以外の雑誌に投稿されたものを補完的に確認する分によい。

しかし、いずれの文献であっても、何故か綺麗サッパリビフィズス菌に関してだけはスルーしている。ベシャン、ピルケ、クルックシャンク、マットマン、ボシャン、エンデルライン…と様々な感染症専門の天才たちに触れてきたからこそ分かるが、野口英世の文献で決定的な重要性を持つのがこのビフィズス菌論文だと確信した。というかそれがタイトルに現れている。Pleomorphだ。

何故野口が突如としてビフィズス菌を研究し始めたかは脈絡が無さ過ぎて正直分からない。直前まで蛇毒ばかりなのに。同姓同名すら疑う豹変ぶりな上にこの一本以外にビフィズス菌をテーマにした論文は見当たらないが、1910年のこの論文以降、病原体分離を報告する文献ほぼ全てにこのPleomorphの文字が登場する。従って彼の構想において特に重要な分岐点となっているのは明らかだ。

現時点の考察の限界

Pleomorphがコッホ原則を満たさない理由=感染症は存在しないとか頓狂なことをVDE連中に言われたが、まさにそのPleomorphを1910年に発見した野口英世こそ菌と疾患の関係性を極限まで追究した人物だ。感染症が仮に存在しないとするなら、ここから18年に渡る野口の研究人生は全て虚構だということになるが、単純にそこまでアホだったと考える方がアホだと思わんかね。何だロックフェラー研究所は嘘しか吐いてないと?

前文だけ少しだけ翻訳しておく。

Tissier[1],Moro[2],Rodella[3],Cahn[4],Passini[5],Jacobson[6],Herter and Kendall[7]ら他数人の広範な研究を行ったにもかかわらず、B.bifidus communis(Tissier1900)と、B.acidophiilus(Moro,1900)、Kopfchenbacilus、B. tuberculiformis intestinalis(jacobson, 1908)、そしてB. infantilis(Kendall, 1909)などの糞便中にいるグラム陽性細菌との関係性は未解決のままである。現時点でこれらが全く異なる生物か否か、一つの同じ生物の異なる形態であるかを定義することは困難である。B.Bifidusの培養物の純粋性を完全に担保することはできないのは公認の事実だが、何故なら、この菌は多くの点で親株と異なる形態を時に生成する他、B.acidophilus、B. tuberculiformis intestinalisやKopfchenbacillusに類似する形態を生成することも珍しくはない。MoroはKopfchenbacillusをB. Bifidusと同定する努力を放棄したが、前者から分岐状株を生成できなかった為であり、一方のJacobsonもB. tuberculiformis intestinalisをB. bifidusへ逆変換する挑戦に似たような失敗をしている。膨大な挑戦にも拘わらず、腸管外でのビフィズス菌の起源を突き止めることに成功した人はまだいない。
健康児童および病的児童の腸管内嫌気性細菌叢の研究の過程で、私の関心はB. bifidusへと向けられた。B. bifidusに関する現在の研究で得た結果により、Tissierの言うB. bifidus communisは、枯草菌(subtiloid)様グループに属し、且つ形態学的にも生物学的にもB. mesentericus fuscusに酷似する好気性胞子形成性生物の生活環における嫌気性相だと確信するに至った。特定の培養法により、B.bifidusの胞子形成および好気性生活の適応を誘導し、好気性のB.bifidusを嫌気性分岐層へ戻すことができた。B. bifidusの好気性相では一切の分岐は観測されず、嫌気性菌であるB. bifidusと関係があるなど、ほとんど信じられない。好気性生命から嫌気性生命への適応により、形態学的および生物学的特徴全体が大きく変質している。この両端の相の間には中間相があり、これは細菌に半嫌気性生命かつ極端な形態学的多様性という特徴を与えている。

ビフィズス菌は1900年にパスツール研究所のTissierが乳児の糞便から分離、現代はBifidobacterium属に分類されるこの菌は当時はBacillus属に分類され、学名Bacillus Bifidus Communisと命名される。同年、形態の類似するacidophilusをMoroが報告するも、野口はどうやらこの二つを培養過程で区別することは困難だと言っているようだ。何故ならこの「種Species」の全てが同じ培地上で発生するからだと。

今日はここまで。

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