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「オメガ3神話の真実」の真実②:S谷、お前いい加減にしやがれ編

前回の記事の続きとなる。

「リアルサイエンス」を掲げるこの男の所業があまりにも酷過ぎたので、徹底的にこの男の詐欺を暴くシリーズ記事にすることにした。"エビデンス"を膨大に用意してくれただけに、この詐欺師を批判するだけで数年はネタにできそうな勢いである。

別にオメガ3擁護ばかりを今後展開していくつもりはなく、こうした"巷の健康・医学理論を批判的に検討"することを掲げた定期購読マガジンを連載することにした。毎週日曜更新を目途にしている。

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尚、この件に関する講習会を今月末に開催予定です。

まだまだ席は空いてますので是非お越しください。楽しい時間にさせていただきます。


話を戻すと、別に正式な学術論文ではなく、あくまで一般書籍ではある為、正直“裏取りも確認もせず鵜呑みにする方が悪い”と言ってしまえばそれまでだが、こんなクソみたいな本を出しておいて

「これをオメガ3/オメガ6の比を高めるとよいとする現代医学や一般健康ポップカルチャーは、リアルサイエンスを理解していないために、さらに状態を悪化させる指導しかできません。今回の例では原因不明で精神科を紹介していますが(原因をこころの問題にすり替える)、笑止千万も良い所です。」

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などとほざくこの男は紛れもなく確信犯の詐欺師だと言わせてもらおう。
ハッキリ言わせてもらうが、お前のやっていることはリアルサイエンスでもなんでもないただのサイエンスの侮辱だ

結論から言うと、「オメガ3脂肪酸が自然界最強の毒物である」というこの本の主張は全くの妄想であり、それにより、巻末収録の膨大な参考文献は(文献それ自体は極めて価値あるものだが)、この男の解釈により失墜させられているといえる。

この本で参考になる点は、

  • 酸化したフィッシュオイルを家畜に食餌すると、家畜たちはその匂いで食欲を失くすので、100年前の畜産業はそれで餌代を浮かせていた

  • 巷のオメガ3サプリはその製造工程で酸化する運命にあり、世に出回る大半のサプリは有害な過酸化脂質(MDA)に変化した粗悪品である

この2点のみである。言ってしまえば”油の酸化には注意しよう”の1点で済む話であり、オメガ3だけがとりわけ有害なわけでもない。それ以外の主張は論文の拡大解釈、チェリーピッキング(自説に都合のよい解釈)、全く無関係な引用、誤読のオンパレードに基づき、従ってプーファフリーは完全な虚構に基づく理論だと断言する。

私がこの男を批判するのは、この男の標榜するプーファフリーを実践した被害者が目立ってないだけで大勢おり、そしてTwitter上には、明らかに読んでいない英語論文のリンクだけ貼り付けてドヤる自称健康や、裏取りもせずにこの男の理論を"恰も独自調査の如く"振り撒く二番煎じのお零れ詐欺師が多産されている為であり、看過できない程に影響力(被害)が甚大である為である。


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引 用 元 を 明 記 し
・内 容 を 正 確 に 理 解 した後に引用してください

くれぐれも

"リアルサイエンス"を標榜しつつ
その実"フェイクサイエンス野郎"と
同 じ 所 業 をなさらぬよう


1.ジョージ・バーの功績の歪曲

J Biol Chem. 2012 Oct 12; 287(42): 35439–35441.

ジョージ・バー(George Burr:1896-1990)とはこの書籍で核となる"必須脂肪酸(Essential Fatty acid)"の概念を生み出した人物である。バーは、食事でこれらの脂肪酸を摂取しなければ、時に死に至るほどの障害が発生することを発見した。※とはいえ、あくまでラットの話である。

さて、そのジョージ・バーの紹介部分に当たる下記の引用文をじっくり読んでいただきたい。

オメガ3を含めたプーファが、「必須脂肪酸」であるという創作を行ったのは、1929年のジョージ・バー(George Burr)という人物です。彼はラットに脂肪フリーの食事を与えて、皮膚炎や成長障害が起こることを発見しました【62,63】。リノール酸、リノレイン酸を投与すると、このラットの皮膚炎が消失したことから、この2つのプーファを必須脂肪酸と呼んだのです。

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この段落に、この書籍における決定的な嘘がある。

ジョージ・バーが、
「"プーファ"が必須脂肪酸であるという創作を行った

この一文がこの書籍最大の嘘であり、ミスリードである。
その理由は、まさにこの段落の最後の一文にある

リノール酸、リノレイン酸…を必須脂肪酸と呼んだのです。

バーが"必須脂肪酸"と呼んだのは、
リノール酸とリノレイン酸の 二 成 分 の みである!

リノール酸、リノレイン酸、そしてこの後登場するEPA、DHA、アラキドン酸…等々の脂肪酸全てを、「2つ 以 上 の 二 重 結 合という条件で"プーファ(polyunsaturated fatty acid: PUFA :多価不飽和脂肪酸)"と一括りにする分類を作ったわけではない。従ってそんな創作など不可能であり、更にいえば脂肪が栄養とすら考えられていなかった時代に、そんな定義を一代で構築する科学者などあり得ない。

※更に細かいことを言えば、1929年/30年=文献【62】【63】に、バーが"一定量を下回ると若くして死ぬ(dies at an early age)"と表現していること、実はここで腎臓変性(kidney degenerate)ならびに雌の排卵障害(※アレ?人口削減って何だっけ?)も報告していることに触れていない。こんな表現で済ませられるほどにラットの病態は軽くないのだ。

【62】"厳格な脂肪除去食による新たな欠乏性疾患"より
表3:実験動物に生じた現象の要約
死亡直前/解剖結果
●No.2897雌
排卵は正常/足・尾部・皮膚に鱗状の皮膚炎
●No.28110雌
排卵は正常・血尿/鱗状の皮膚炎、体脂肪なし、腎臓に斑点?
●No.28104雌
排卵周期の延長、血尿/尾部尾と足が重度の鱗状皮膚炎,、数ヵ所で脱毛、体脂肪なし
●No.28108雌
排卵周期延長、血尿、尻尾が黒質化、先端3cmの壊死/腎臓の斑点、尾部・足・皮膚が重度の鱗状皮膚炎、体脂肪なし
●No.2899雄
ペニス脱出症、大量の血尿、背中の脱毛 /膀胱に血尿、腎異常、尾部・足・皮膚に鱗状皮膚炎、体脂肪なし
●No.28103雄
ペニス脱出症、背中の脱毛、血尿 尾部・足・皮膚に鱗状皮膚炎 体脂肪なし 腎臓異常、白質化? 膀胱に塊
●No.28111雄
血尿/ 尾部の充血 要所で出血 膀胱で黄色の塊

この時点で覚えていて頂きたいのは、バーの実験は
「リノール酸とリノレイン酸」に限定した話
であり、
皮膚炎と成長障害
という二つの症状を報告していることである。まず前者の証拠として、

当時は必須脂肪酸と定義されたプーファは、リノール酸(植物油脂)、リノレイン酸(亜麻仁油)でした(私の学生時代の生化学の教科書にも同様の記載があったことを記憶しています。)

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と著者も認めている。だがこの段落以降、話が完全にすり替わっていることがお分かりいただけるだろう。ミスリードの始まりである。

1930および1931年に立て続けに、ファットフリーで皮膚炎を引き起こしたラットにタラの肝油(EPA,DHA)を与えた実験では、皮膚炎を治癒させることができなかったことが報告されました【69,70】。これに慌てたバー自身も、ファットフリーで皮膚炎を引き起こしたラットにタラの肝油(EPA,DHA)を与えた実験を行いましたが、やはり皮膚炎を治癒させることはできなかったのです【71】。
 つまり、自分が主張した実験結果を再現できなかったのです。この時点で、彼は正直に「プーファが必須脂肪酸である」という仮説を撤回すべきでした。

-24% 86/448ページ 位置No.722/3155

話が E P A と D H A、そして 皮 膚 炎 だ けにすり替わっているのがお分かりいただけるだろうか?

前述の通り、バーは「プーファが必須脂肪酸」など一言も言っていない。バーがそう呼んだのはリノール酸とリノレイン酸のみであり、欠乏症に著効したのもこの二成分である。従ってタラ肝油(EPA/DHA)で治癒しなかったことを認めたとして、バーの見解には一切の矛盾はない

バーの見解を完全に著者が曲解させている証拠として、著者自身が文献に挙げている【71】、つまり、「バー自身がタラ肝油で皮膚炎が治癒できなかったことを認めた」とされる論文の結論部分を抜粋する。

手元のデータからは、タラ肝油の高度不飽和脂肪酸は脂肪欠乏ラットの成長促進には有用だが、皮膚炎の治療はリノール酸とリノレイン酸しか有用ではなく、この二成分はタラ肝油には欠けているようである。Sinclairの実験例のように、成長促進ではなく皮膚炎の治療をもたらす脂肪を分離することが可能かもしれない。従って、脂肪欠乏症は2つ(体の成長+皮膚の健康)に分解可能であろう。
リノール酸とリノレイン酸は、成長の遅延と皮膚の異常の両方を緩和するようである。
上記のような症状や腎臓変性を予防するべく、数種の脂肪酸の相対的な価値を決定するように現在研究を進めている。
From the data at hand it would seem that the highly unsaturated fatty acids of cod liver oil can be used by fat deficient rats for growth, but that their scaly skin is cured only by linolic and linolenic acids, which, apparently are lacking in cod liver oil.
It may prove possible to isolate a fat which will cure the skin without producing growth, as indicated by Sinclair's experience.
The fat deficiency may therefore resolve itself into 2 factors. It so happens that linolic and linoienic acids seem to relieve both growth and skin abnormalities. The relative values of several fatty acids in the prevention of the above symptoms as well as kidney degeneration is being included in our present studies.

Burr GO, Burr MM, Brown WR.
On the Nutritive Value of Certain Oils.
Proceedings of the Society for Experimental Biology and Medicine.
1931;28(9):905-907.
doi:10.3181/00379727-28-5591

つまりバーの功績とは、
・1929年の最初の実験で、食事から脂肪だけを除去することで「成長障害と皮膚炎」を起こすこと、その予防・治療にはリノール酸とリノレイン酸が有用であることを発見し、この二成分を"必須脂肪酸"と呼んだ
・31年の追従実験では、脂肪欠乏症は皮膚炎と成長障害の2つの症状に分解可能であることを指摘、タラ肝油(DHA/EPA)はこの内一方の「成長障害のみしか」治療できない
・だが最初に"必須脂肪酸"と呼んだリノール酸とリノレイン酸は両方の症状の治療が可能である

と、まとめられる。

ところが著者の発言は

  • リノール酸とリノレイン酸は、欠乏すると皮膚炎と成長障害が起こることから必須脂肪酸と呼ばれた

  • リノール酸/リノレイン酸/EPA/DHAは、(現代では)プーファと括られている

  • EPA/DHAで皮 膚 炎 は治癒できない

  • よってプーファは必須脂肪酸ではない

というメチャクチャな論理展開であり、完全に"必須脂肪酸=プーファ"の固定観念に縛られた著者によるストローマン論法(相手が言ってもないことをでっち上げて批判する)である。

著者は初めから「皮膚炎」のみにフォーカスして、成長障害から読者の視線を逸らそうとしているようにしか見えない。バーはリノール酸とリノレイン酸でどちらも治療したにも関わらずだ。

2.当時の論争(B6欠乏 VS 脂肪欠乏)の背景の省略

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