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⑧ みふ子ばあさんと伝票

魚屋の主な販売方法として量り売りがある。

kgあたりで値段が表示され、
目方を量って値段が決まるのだ。

だから私はレジグランマであるばあさんに
丁寧に聞き取りやすくハッキリとグラムを伝えるのだ。

ばあさんが伝票に商品を書く時は
声に出して復唱してくれるので、
その後に続いて私がグラムや値段を伝える。


理由としては、
仕事は丁寧にやるものだと思うからではあるが、
もう1つは、ばあさんの機嫌を損ねないようにするためである。


ばあさんのペンのスピードに合わせて伝えるし、
何よりも視界に入らないようにしている。

横後ろから伝票を見つめてグラムを言うタイミングを合わせる。

書いた伝票を必要以上に確認されると信頼されてないと誰でも思うだろうから。

年寄りを理由に、余計な心配をされるという思いが少なからずあるようなのだ。

以前ばあさんと社長が
親子の言い合いをしていてそれに気づいた。

年老いた母親を息子が心配するというシチュエーションはなんだか笑えた。ばあさんは息子の心配が故の一言がむず痒く感じるみたいだった。

伝票処理がばあさんのキャパを
超えてしまわないように息子も私もばあさんの脳内スピードで進めていくのだ。


決して作業が遅いということではない。


我々はレジグランマの機嫌を崩したくないその一心なのである。

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#レジ

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