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「子どもと一緒に美術館を楽しもう!」 子どもとアートと vol.01

初めまして。絵本作家の「はるのまい」と申します。
実生サボテン(種から育てるサボテン)生産量日本一の愛知県春日井市で暮らしています。
名古屋の普通科高校を卒業して、京都市立芸術大学で型染めを学び、卒業後はまた愛知に戻ってきて、名古屋市の公立中学校の教員として美術を6年、特別支援教員を1年担当していました。
2011年、東日本大震災などをきっかけに人生を見つめ直し、2012年に退職。その後、ロンドンで語学や絵本を学んだり、絵本作家やイラストレーターとして活動したりしながら、現在は日本デザイナー芸術学院こども芸術学科の保育コースで、アートクラスも受け持っています。
そして、プライベートでは4歳の女の子の母でもあります。

これからこの【みたすくらす】で『子どもとアートと』をテーマに、等身大の思いや地域のクリエイティブに関することを、発信していけたらなあと思っています。

記念すべき第1回目の投稿は、子どもと一緒に美術館に行く時に、わたしなりに心がけているポイントをご紹介します。名古屋市美術館で開催中の「フランソワ・ポンポン展」を観に行ってきたお話です。

名古屋市美術館は、美術教員だった頃、美術の教育研究会でとてもお世話になった場所。研究会は、名古屋市内の図工や美術の先生たちの有志が授業後に集まって、各学校での授業実践などについて相談したり、研究発表したりする会のことです。
新卒後すぐに配属された中学校は、美術教員はわたし1人。
「義務教育が終わったら、美術の授業をもう一生受けない生徒たちもいるだろう…わたしの授業によって、生徒がこれからの人生で美術を好きか嫌いになるかが左右されてしまうかも…」「できないことも苦手なこともいっぱいあるけど、とにかく、美術の授業だけはしっかりとしたものを届けたい…!」と、慣れない中、必死な思いで学ばせてもらっていたことを思い出します。
そんな頃、美術館の学芸員さんたちには鑑賞の授業のアイデアや作品の見方など、たくさんのことを教えていただきました。学芸員さん、指導してくださった先生方、ありがとうございます…!

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子供と一緒に美術館を楽しむ3つのポイント

それではここから、子どもと一緒に美術館を楽しむのに、わたしが気をつけている3つのポイントをご紹介していきます。


(1) 全部見ようとしなくていいし、鑑賞時間は短くていい、と割り切る

わたしはもともと、展示を観に行ったら、1時間以上はかけてゆっくり観たいタイプ。解説文もじっくり全部読みたいのだけれど、子どもが1歳くらいの頃は、一緒に行くとそれができないってことにモヤモヤしていたんですが…

□ しっかり観たいものは、子どもが園に行ってる間に大人だけで観に行く
□ 親子でだからこその鑑賞の仕方をしよう

というような考え方に切り替えてから、スッキリ楽しめるようになりました。子どもの気分にもよりますが、わが家は15分~45分ぐらいの滞在時間で美術館を楽しんでいます。

入場料の高さが気になる方は、無料展示の鑑賞から始めて、次は観覧料数百円のものと段階を踏んで機会を増やすのもオススメです。

「子どもと一緒に美術館」は、敷居が高いとよく言われます。
今はコロナのことも気がかかりだし、出かけられない理由って、いっぱいありますよね。けれど美術館って、実は「中学生以下無料」の場合が多いので、子どもが小さな頃こそ親子で行くチャンスなんです…!

『目利きのプロが世界中から集めてくれた“本物”を、自分たちの暮らす、身近な場所で観られる』

このような展示を、大人の入場料だけで見られるというのは、たとえそれが子どもが騒いで鑑賞時間15分程度だったとしても、なんともありがたいことではないでしょうか。
アートは教養として、世界の人たちとの共通の話題にもなりますから。


(2) 子どもも興味関心のあるものを選ぶ

わが家の娘の美術館デビューは、生後2ヶ月、長野県にあるイルフ童画館でした。けれどこれはもちろん、大人の見たいものにただ連れて行く感じ。

ベビーカー時代は、彼女の昼寝時間に合わせて、展示を見に行くということもやっていましたが、さすがに今は彼女もはっきり意見を主張してくるので、行く美術館は相談して決めています。

抽象絵画などはまだ難しいですが、動物や風景など、子どもにとって身近で具体的なものの展示は行きやすいと思います。あとは絵本の原画展も喜びますね。


(3) 大人の世界を知る機会ととらえる

美術館や図書館など静かにしないといけない施設も、避けるのではなく、『静かにしないといけない場所がある』と子どもが知り、それを学んでいくことも大切だと思います。

けれど、それがいつできるかどうかは、個人差があります。お子さんの特性や発達段階にもよりますし、見守る立場の大人には、やはり根気が求められます(汗)。

続けるためには、親である自分自身が無理をしない、ってことが大前提。
特に美術館は、触ってはいけないものばかりに囲まれることになるので、ヒヤヒヤなんですが…
でも『触りたい』っていうのは『興味がある』ってこと。
それを発見するだけでも、万々歳じゃないでしょうか!


子どもと一緒に「フランソワ・ポンポン展」に行ってみた!

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名古屋市美術館で、この秋オススメの動物彫刻家の作品展!けれど元・美術教員なのに恥ずかしながら、わたしも今回の回顧展が来ることで初めて名前を知った作家さんです(汗)

美術館の予告チラシを見た時から、その造形の美しさ、シンプルで静的なのに動きを感じさせる、イキイキとした動物たちに「これは絶対、娘と見に行きたい~っ!」と思っていました。

「ロダン」という名前は、聞いたことがありますでしょうか?『考える人』が有名な20世紀を代表する彫刻家の1人です。ポンポンはそのロダンの彫刻工房の工房長をやっていたほどの、腕利きの職人さんだったそう。その後、ロダンのライバル的な存在だった、サン=マルソーという作家にヘッドハンティングされています。
けれど、職人として腕がたつのと、作家としてやっていけるのは、また別問題…長らく生活のために、彫刻職人として働きながら、そんな中でも情熱を失わずに、自分の作品をつくりつづけたポンポン…そのエピソードを知れただけでも、わたし自身はとっても勇気づけられ、実物を見に行けてよかったです。


基本はだっこ。ヒソヒソ話で楽しもう。
動物がテーマのせいか、小学生の子どもたちや赤ちゃん連れのお母さんもしばしば見かけた今回の展示。けれど基本的に未就園児の子どもの目の高さでは、作品は見えにくかったりします。

重いけれど、ここはがんばって、だっこで!

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美術館で見る動物は、リアルな形というよりも、形を強調してあったり省略してあったりするので、動物園や図鑑で見たりした後だと、より一層楽しめるのではと思います。
「この動物なあに?」と娘に聞いてみて
「チンパンジー?」
「おしい、オランウータンだって!」
といったように、動物ものはクイズ形式にしやすいです。耳元で、ヒソヒソ話を楽しんでみましょう。
あと、作品をぜんぶ観てまわったあとで、
「どれが一番好きだった?」
「どうしてそう思うの?」
というのも、よく聞いています。
これも正解があるわけじゃないので、どんなことでもいいんです。子どもが自分で「なぜだろう」とか「これ好きかも」って考えることが大事だから。

「〇〇はそう思うんだね。」
「母ちゃん、それは気づかなかったわー」
と、子どもが見つけた発見を、一緒に驚いたり、肯定的に受け止めるようにしています。


音声ガイドの利用は、ちょっと無理がある?

『解説文ぜんぶ読みたいけど、子どもと一緒だと全然読めない問題』を解決する策として、今回、耳ならいけるかも!?と音声ガイドを使ってみました。俳優、常盤貴子さんの美しい声での解説です…!

『ヘッドホンを右耳につけ、左耳ははずして、左側に子どもをだっこしながら、作品を見る』

という曲芸的な鑑賞に挑戦してみましたが、これはさすがに、無理がありました(笑)
もちろん、一部は聞けたのですが、子どもがいろいろと作品を見て話しかけてくるので、まったく集中できず…
欲張らずに、子どもとの会話をしっかり楽しもうと思いました(笑)


おみやげも楽しもう!

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ミュージアムグッズも、美術館の楽しみの1つ!
わたしがよくやるのは「気に入った作品のポストカードを1枚だけ買う」です。
何枚も、じゃダメなんです。これしか買えないという制約があるほど、
「どうしてこの作品が、いいんだろう?」
と吟味することになり良い気がします。

今回は残念ながら娘が気に入った作品はポストカードになっていなかったのですが、最終的に「これが欲しい」と言って選んだのが、ポンポン代表作のしろくまでした。

わたしはずっと欲しいなと思っていたマスクケースをGET!
あとはティータイムのお楽しみのチョコクランチも購入しました。1階のカフェ&ミュージアムコーナーにも、オブジェやマグカップが売っていましたのでそちらもぜひ、お見逃しなく…!
(展示後すぐのコーナーには売っていなかったので、後であああ~って思いました…)

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【おまけの工作】家に帰ってからも楽しんじゃおう

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美術館のチラシは印刷がきれいなので、実は工作に最適です!2枚ほど多めにいただいて(取りすぎないように注意!)帰ってきてから今日の思い出をコラージュ。
今回の展示は、父ちゃんは行けなかったのだけど、想像の中でなら一緒に行けるし、ポンポンの彫刻にだって、乗れちゃうよ!

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「子どもと一緒に楽しむ美術館」いかがでしたでしょうか?
名古屋市美術館は、白川公園に隣接されています。
芸術の秋。ぜひ親子で楽しんでみてくださいね。

■ 名古屋市美術館
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/
愛知県名古屋市中区栄2丁目17−25 芸術と科学の杜・白川公園内
TEL:052-212-0001
※フランソワ・ポンポン展は2021年11月14日まで

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