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稲藁を“綯う”、伝統的な注連縄づくり

俳句と暮らす vol.26

注連縄飾りで、お正月を迎える準備

なにかと慌ただしい年の瀬。
新年を迎える準備をしつつ、忙しく過ごしている人も多いと思います。

「お正月といえば!」というものは数多くありますが、各家庭の玄関先や神棚に飾られる「注連縄(しめなわ)」もそのひとつ。
玄関先などに飾られている注連縄の存在感がいかにも、新しい年を迎える期待感そのものだと感じます。

もちろん「注連縄」は季語です。
ですが「冬の季語」ではなく、「新年の季語」です。
俳句の世界では、春夏秋冬に加えて「新年」があり、注連縄は「新年」の季語として区分されています。

その注連縄をつくる作業、「注連作(しめつくり)」という冬の季語も存在します。
昔は注連縄をつくることが、新年を迎える大切な準備のひとつでした。


年神様をお迎えするために飾る注連縄

注連縄飾りは、今に続くお正月行事のひとつです。

年神様(としがみさま)という、健康や豊作をもたらす神様をお迎えするための飾りと言われ、古くから日本の暮らしの中で手作りされてきました。
本来の注連縄は「稲藁(いなわら)」を使って作られますが、近年大量に流通している安価な注連縄は、中国産の水草が使われていることが多いのが現状です。

今回は、岐阜市の「NPO法人ORGAN」が主催する「ORGAN注連縄ワークショップ」に参加し、本格的な稲藁でつくる注連縄づくりに挑戦しました!


初心者でも完成する注連縄ワークショップ

毎年恒例となっている、この「ORGANしめ縄ワークショップ」。
毎年、岐阜市善光寺で開催されています。
今年は「TANAKA FAMILY FARM」さんの無農薬栽培されたお米の藁が、たくさん用意されていました。

会場は、藁のいい香り。思わずマスクを外してすうっと深呼吸したくなる、なんだか神聖に感じる空間でした。


「藁を綯う」というはじめての手作業

まずはたくさんの稲藁のなかから、自分がつくりたい注連縄の太さに合わせて30〜40本を選り抜きます。
それに霧吹きで水をかけてよく揉んで、藁を柔らかくするところからスタート。
たっぷり濡らしながら行うことで、ぎゅっと締まった注連縄になるんだそうです。

続いて、藁を「綯う」作業へと入ります。
今回私も初めて知った、この「綯う」という言葉。

「綯う」とは、「よりを掛けて縄などを作る。あざなう。」という意味を持っています。
単純にねじる動作や、三つ編み・四つ編みなどとも違う、よってねじるように藁を編んでいく独特の手法で、私も初めての体験でした。

お手本を見ながら、自分でも挑戦してみます。
手のひらをこすり合わせながら、藁によりをかけながらねじり込んでいくような複雑な作業。先生はいとも簡単にやってみせるので、すぐにできそうな気がしていたのですが、コツを掴むまでにちょっと時間がかかりました。

藁を3つに分けたうちの2本を使って「綯う」作業をしたあとの様子がこちら。

ここからさらに、このふたつをうまく綯うことで、注連縄のベースとなる縄の部分が完成しました。

少し不恰好な部分もあるような気がしますが、自分の手で藁からつくった注連縄に、もうすっかり愛着が湧いてきた瞬間でした。


好きな花材を使って飾りつけ!

さらにここからは、会場に用意された好きな花材をつかって飾り付けをしていきます。
南天や稲といった、注連縄飾りでよく見かけるお馴染みのものから、オリーブやドライフラワーなどおしゃれなものまで、いろいろそろっています。

注連縄部分のデザインも、人それぞれ自由。
私はくるんと一周して丸をつくり、そこへ植物を追加していきましたが、ストレートでスタイリッシュな注連縄に仕立て上げている人もいました。

迷いながらつくりあげた、私の注連縄がこちらです。

藁を綯うタイミングでちょっと失敗してしまったところもありましたが、ほかの植物で飾り付けることですっかり隠れて気にならなくなりました。

参加していたみなさんの作品も、個性豊かでどれもとてもおしゃれ!
皆で藁を囲んでワイワイと藁を綯う、とても楽しい時間でした。


注連縄は、28日までに飾りましょう

ちなみに、注連縄は本来12月13日のすす払い(大掃除)が終わって「年神様をお迎えする準備が整った状態になってから飾るものとされています。

12月13日は「正月事始(しょうがつことはじめ)」。
この「正月事始」も俳句の季語です。

現代ではなかなかその時期に大掃除が終わっている家庭は少ないと思いますが、注連縄はその12月13日以降、12月28日までに飾るのが良いとされています。
29日は9=苦で縁起が悪く、31日に飾るのは「一夜飾り」と言って神様に失礼だとされているんだとか。

外す時期は、七草粥を食べた後の1月7日、または小正月の1月15日とされていますが、地域によっては1年中飾っていることもあります。
お正月が終わったら、お部屋に飾ってインテリアとして楽しめるデザインのものも多いですよね。

今年は、自分でつくった世界にひとつの注連縄で迎える新年。
気持ちも晴れやかに、新しい年が迎えられそうです。

それではみなさん、良いお年をお迎えください。

暮らしの一句

藁の香を手のひらで綯う注連つくる 麻衣子

【季語解説】注連作(冬)
「注連作」は「しめつくり」と読みます。
季語の仲間には「注連綯う」もあります。
今回はじめて知った、この「綯う」という言葉をつかって、その日の気分で一句書いてみました。