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東大生の点取りレースは受かってからが本番!? 東大の「進振り」制度のリアルに迫る!


「進振り」とは何か

みなさん、お久しぶりです。
現役東大生ライターの縹 峻介(はなだ しゅんすけ)です。

みなさんは東大の「進学振り分け」という制度をご存知でしょうか?

東大生は入学した時に学部ではなく科類で分けられており、2年の前期までの成績次第で希望する学部に行けるかどうかが決定します。

例えば文科Ⅰ類で入ったら法学部に進む、といった王道のコースだけでなく、理転して工学部に進むなんてことも出来ます。非常に狭き門ですが、頑張れば文科類で入学して医学部に入る、なんていうミラクルも可能です。

ただし、成績順に学部ごとの定員枠が割り振られていくため、成績が悪いと全然希望と違うところに行くハメになることもあります。

そのため、2年の夏に行われるこの進学振り分け、通称「進振り」は東大生の学生生活で最も大きなイベントと言っても過言ではありません。

今回の記事はそんな進振りに焦点を当て、進振りを経験した東大生のリアルな事情や戦略について皆さんにご紹介していきます。


「進振り」があるから東大に来たという人も多い

その前に、まずは「進振り」のメリットから考えてみましょう。ドラゴン桜で理科三類を受験する大沢くんが、東大に行きたい理由を話すシーンをご覧ください。

一般的な大学と違って、入学してから自分の勉強したいことに応じて進路を変えられるため、やりたいことが決まってなくても猶予がもらえるのが「進振り」のいいところだと言っていましたね。

実際に「進振りがあるから東大に来た」という人は多いですし、文転や理転する人も珍しくありません。

矢島くんや水野さんが東大合格後の進路について聞いた時に、桜木先生が「んなこたあ知ったこっちゃない」とシケた顔で一蹴しているのも、この「進振り」という猶予があるからなのですね。入った後は自分で好きに決めろということです。

では、実際に東大生は進振りについてどう考え、どういう選択をしたのでしょうか。彼ら彼女らのリアルな声をお聞きください。


王道のコースを選択した人たちの意見

まずは、いわゆる普通の進学先を選択した東大生の意見を聞いてみましょう。

それぞれどの科類からどの学部に進んだかと、成績の平均点が100点満点で何点だったかを進振り点として記載しています。

・文1→法学部2類(法律プロフェッションコース) 進振り点:78点

法律家になりたかったので、素直に文科一類に入り法学部に進学。1類は外国法など司法試験範囲外の必修があり、3類は政治学メインのコースなので、司法試験受験生は概ね2類に進みます。また、現在は文1→法は人気が低下していてほぼ定員割れなので、成績は気にしなくて大丈夫でした。

法学部2類に進学したものの、2類の必修科目である民法第3部を3年次に落単し、また翌年の再履修で合格できる見通しがなかったため、民法第3部の要らない1類に転類するという裏技を使い無事に卒業することができました。

・文2→経済学部 進振り点:78点

文2にいると、やっぱり経済学部に行けるか行けないかが、すごく気になるタイミングがある。3/4の人が通るとはいえ、ちょっとプレッシャーなんだよなーと思っていた。点数が出揃って78点くらいだった。教育学部とは迷ったが、やりたかった研究が教育学部で全然進んでないことが分かったので、まあ王道で行くか、と思い「行けるんだったら経済いっちゃうか」みたいなテンションで決めた。

・文3→文学部英語英米文学科 進振り点:70.78点

本当は英語学に興味があったので後期教養学部に行きたかったが、点数が90点くらい必要なので全然足りなかった。英文科にしたのは後期教養の次に英語にどっぷり浸かれそうだったのと、卒論を書かなくても卒業できるから。「卒論を書かなくてもいい」という理由オンリーで来る学生も半分くらいいるので、文学ガチ勢とやる気ない勢にくっきり二分される。人気も低く点数があまり要求されないのも、やる気ない層が集まる一因。個人的には文学の面白さに目覚めることができたので良かった。

・文3→教育学部基礎教育学コース 進振り点:73点

東大入学当時は入りたい学部が決まっていなかった。1年生の際に参加した都内の公立小学校のボランティア活動をきっかけに教育学に興味を持つようになり、教育学部に志望を出した。比較教育社会学コースと迷った時期もあったが、この先生のもとで学びたいと思う教授と出会えたことと、教育そのものをより考える方向性で進んでいきたいと思ったことを理由に、このコースを選んだ。

文科三類は進振りガチ勢(進振りで理転するなど高い点数が必要な学部を志し、戦略を立てている人のこと)が他の科類よりも多い印象で、そのおかげで周りに引っ張られる形で自分のモチベーションも向上・情報の獲得ができていたように思います。

・理1→工学部機械工学科 進振り点:70.18(工学部平均:4.74)点

元から機械や物作りが好きで、大学で学ぶならこの分野だと思っていたので迷いはありませんでした。しかし、実はこの学科、人気がないのか定員割れしまして、希望する人ならだれでも入れるような感じでした。人気なのは、機械情報工学科や電子情報工学科、情報科学科などでした。やはり、最近AIや人工知能、生成ソフトなどが話題になっているため、それらを学び、研究できる学科に人が流れたように思います。とはいっても、安心材料という意味で、点数はとっておくべきだとは思います。

・理1→理学部物理学科 進振り点:76.28点

もともと物理と数学が両方好きで、どっちの道に進むか決められなかったので東大に来ました。その中で、実生活に使える数値解析の手段やものづくりを学ぶよりも、原理原則を知り使えるようになりたかったので、理物と理数以外の選択肢はなかったです。その中でも理物に決めたのは、1年近く数学を独学して数学は趣味の範囲で楽しむ分には一人でできるだろうと感じたため、実験やゼミなど、大学でやったほうがいいことが多そうな物理に進もうと思ったからです。

進振りの結果は、第一段階で理物に落ち、第二段階でもう一度理物に出して、ギリギリ滑り込めたという感じです。原因としては、英語とドイツ語で進振り点が2点近く下がりましたことでしょう。進振りで希望の学部に行きたい場合は、結局、言語に苦しめられる羽目になるので、高校のうちからできる限り苦手は潰しておきましょう。

・理2→薬学部 進振り点:80.93点

元々脳の研究をしたかったので、前期教養中にどの学部から脳にアプローチする研究をするか見極めようと思っていました。その中で一番好きだったのは人間行動基礎論という科目なのですが、この科目は後期教養の認知行動学科の先生によるものでした。なので、後期教養学部と迷いましたが、理系として研究生のキャリアを積むことや、研究対象以外の学習内容への興味などから薬学部に決定しました。

実は理科二類は、理科一類に比べ薬学部に進学しにくいという現状があります。理2といえば農学部、薬学部のイメージがあったので受験の際に理科二類を選んだのですが、理科二類→薬学部の枠に対して理2内の志望者が多いので底点が高くなってしまっているのです。進振りでヒヤヒヤするくらいなら理科一類にしとけばよかった、、とたまに思います(実際は理科二類の科目の方が生物を多めに学習することや理科三類の方と同じ授業を受けられるので薬学部進学へは役立つことが多いとは思いますが)。また、2S(2年の前期)で進振り点を上げる人が多い中、私は1点下げてしまい、結果的にはボーダーギリギリでの振り分けとなりました。

・理3→医学部医学科 進振り点:80.11点

中学生の頃にハマった医療ドラマや、医療系のボランティア活動がきっかけで、医学部に進みたいと思うようになりました。しかし、高3になって毎日勉強に本気で取り組む日々を過ごしていると、医学以外にも自分の知らない面白い学問があるのではないかと考えるようになり、他の大学の医学部と違って東大理3に入学すれば医学部に進むか他の学部に進むかを進振りの時期までに決めればよいため、理三受験を決めました。

理3の学生は、進振りに参加するために取得必須の単位が取れていないなどの例外を除き、基本的には希望すれば医学部に進むことができます。ただし、理3の中でも成績下位10名程度は進振りの際に面接があるようです。また、理3で入学したものの医学部以外の学部に進もうと決める学生も時々います

入学時から医学部以外を真剣に考えて勉強に励んでいた学生なら問題ないでしょうが、理三生は成績が悪くても医学部に進めるため進振りのことなどほとんど考えずに過ごしている人が多く、進振り直前になってやっぱり医学部以外にしたいと思った場合、他の科類の学生に比べて成績が悪くて苦労することも珍しくないでしょう。

私は医学部以外を選択する可能性も視野に入れて一年生のときから勉強していたので成績の面では苦労しませんでしたが、周りの理三生は皆当たり前のように医学部に進もうと考えていたため、他の学部の情報や進振りに関する情報がなかなか得られなかったのが大変でした。理3で入学することは医学部に進むなら圧倒的に有利ですが、その他の学部に進むなら有利にはならないのだということも、東大に入学するまでは知らないことでした。

普通の進学先に進むにも、科類によって戦略が全くことなるのも大事なポイントです。

文1→法、文2→経済、文3→文や教育、理1→理や工の不人気学科、理2→農、理3→医などは比較的楽に入れます。

逆に、文→後期教養、理1→理や工の人気学科、理2→薬などは高い点を要求されます。


珍しい選択をした人たちの意見

では次に、変わった進学先を選択した東大生の意見を聞いてみましょう。

・理1→教育学部基礎教育学コース 進振り点:79.30点

元々自分は高校時代に理系科目が大の得意で、文系科目が大の苦手だったため、文理選択で理系にしましたが、研究職に就きたい、理系の勉強を極めたい、といった気持ちはあまり自分にはありませんでした。そのため大学に入ってから文系学部まで含めて幅広く学部を選ぶことができる東京大学を志望しました。そして大学生になってから、授業や課外活動などさまざまなことを行なっているうちに、かねてから興味を持っていた教育への関心がさらに強まり、教育学部への進学を決めました

・理系→文学部人文学科哲学専修 進振り点:78点

高校生の時から大学に入ったら哲学の勉強をしたかったが、高校の先生と相談を重ねた結果、文理選択で理系になり、進振りで哲学系に行こうと思い東大に入学。後期教養学部の現代思想コースは点数足りなかったから自動的に対象外、残った哲学系が哲学専修しかなかった。点数は70点くらいあればいけるのであまり気にしなく良いのだが、初めは地方出身だったので本当にビビりまくってめっちゃ勉強はしてた。

進振り自体は大変ではないが、基本的に入った後は「みなさん前期の時に○○ってやってるよね」と文系の必修科目のことに言及されるので、理系から行く時は頑張って理系必修+文系必修に潜ることを忘れずに。

文3→法学部1類(法学総合コース)進振り点:83点

受験のときから、法学部に憧れていた。しかし、受験のときは浪人不可、私立受験なしの東大1本勝負をしていたため、確実に東大に受かるべく文3を受験、入学後に進学選択をつかって法学部に進学しようと考えていた。

入学後は、文3スぺらしくそれなりに遊びまくっていたが、TLPでスペイン語を大量(一列二列含めて24単位)受講していたこともあり、割と高い点数が取れていた。しかし、自分のクラスは文三の中でも屈指の勉強をしないクラスだったため、昼休みのたびにクラスの人たちで食堂に集まり、進振りの冊子をめくっては「ここも無理かな」と言っているクラスメイトを見ながら、自分もかなり進振りに不安を感じていた覚えがある。文3の進振りは、文学部に行かない限り、基本的に鬱。腕試し的な感覚で第一段階は後期教養の国際関係論に出したが、結局点数が足りず、第二段階で法学部に進学。

※TLP:トライリンガルプログラム。日本語と英語に加え、もう一つの外国語の運用能力を集中的に鍛えるために設けられた教育プログラムを指す。

以上が、東大生の進振りに関する考え方と実際の進学先でした。

「好きな学部学科に行ける!」と言えば聞こえはいいですが、実情としては入学後も勉強を頑張る猛者たちに囲まれるので、進振り点を稼ぐためにしっかりと戦略を練る必要があります。

受験を終えてもなお点取りレースの中を駆け抜けなければならないのが、東大の進振りという制度のようです。

それでも、プラチナチケットであることには変わりはない東大ブランド。もし皆さんが東大に入学したとしたら、どの学部学科に行きたいですか?

ぜひこの記事のリアルな声を参考にしてみてください!

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