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結婚はしたくないけどプロポーズはされたい <大黒柱女の結婚・1>
「執着がないから一緒にいられるのかもしれないね。」
なぜだろう、おしゃべりって向かい合わせよりも隣に並んでいる方が進みやすい。
「えっ」
布団に入ってから眠りにつく前の数分間または数十分間、私たちは他愛のない話から将来の話まで適当に思いついたことをぽつぽつと話す。
特に何も話すことがないときはそのまま眠るし、はたまた小学生みたいなくだらない話題で抱腹絶倒ののちなかなか眠れなくなったりもする。
この日、彼は「なぜ僕たちは結婚もして一緒にいられているのか?」を考えてみた結論を口にした。
…数ヶ月前、雪の降る12月。
いつものように布団から顔だけ出して各々なんとなく天井を見ながらぽつらぽつらと話していたその日、わりと何の前触れもなく私たちは結婚することを決めたのだ。
きっかけはお金
年の瀬。
毎年恒例の\ふるさと納税/
彼が嬉しそうに平らげていた牛タンを今年も注文しよう。
私は自分のご褒美に地元にある牧場直産のチーズ5種セット。
自分の上限をなんとなく計算するために「ふるさと納税 上限 計算」と検索窓に入れてみる。
へぇ〜、控除っていろんな種類があるのね。
ほうほう、なるべくたくさんの控除を利用して来年の税金を減らしたい。
前に少しだけ団体に寄付したお金も控除対象になるみたい。
他にもないかな、控除、控除、、。
そこで目に入った5文字。
「配偶者控除」
婚姻関係にあるだけで節税ができるなんてお得な制度だなぁ。
結婚って一体何モン?
ところでさ、結婚って何のためにするんだろうか?
おフランスでは事実婚はめずらしくないらしい。
なんかカッコいいな、形式に囚われない本当の繋がりみたいな。
結婚しても別れる人は別れるし。
していなくてもずっとつながり続ける人もいるんだろう。
自分たちもそうだったらいいな、なんて思う。
10代や20代の頃なんかは結婚はただの恋愛の延長にあるものだと思っていて、
30代に入ってさすがにそれだけではないことは分かっていたけれど、その本当の正体はよく分からなかった。
ゴールインではなくスタートなんだってことも知ってるけど、法律的な意味合いってなんなんだ?
調べてみると、「子ども」、「財産」に関するとっても大事な契約という側面も持ち合わせているんだということが分かった。
ウエディングドレスも要らない、祝福されたい欲もない、社会的地位もどうでもいい。
そして、子どももいない。
私が婚姻するにあたって意義が生まれることは財産だけのようだ。
守るべきもの
私の宝物は愛犬と愛猫。
飼い主の経済力や心身の健康なくしてこの子たちの平和や安全は保証されないのだ。
20代の頃は、この世に未練なんてないし私はいつ死んでもべつにいいや〜なんて酒を片手にのうのうと過ごしていたこの私が。
この子たちを家族に迎えてからは、この子たちが生きている限り私は絶対に死ねないと覚悟を持って生きている。
でも、突然の自分の死によって残された私の財産はどこにいくかというと、法律的にはおそらく両親か。
籍を入れていないただ交際している仲の片割れに全財産がいくようになんてできるのだろうか。できるにしてもすんなりとはいかなそうだ。
例えばだ、彼が私の両親を説得して犬と猫のためにお金くださいなんて言ったら?
男のくせに…。なんてならないかな?
そんなわけにはいかないんだ。
私に養われている現在、彼には経済力がそれほどない。
信頼してないわけじゃないけれど、私が急に死んですぐに安定した収入を得られる可能性も高くはない。
もしそのタイミングでこの子たちのどちらかが重病に罹ってしまったら?
飼い主側の力の無さで助かる命も助からなくなったら?
そうでなくても、人間側の生活が苦しくなっては動物のQOLも保たれなくなるだろう。
もし彼の経済的にお世話し続けることができなくなってこの子たちがどっかの知らない人の手に渡るようなことがあったら?
その人が大丈夫な人かなんていう100%の保証は一体どこにあるのか…?
した方がよくない?
色とりどりの返礼品が繰り広げられる画面をよそに私は居ても立ってもいられなくなった。
結婚しなければ、税金的に少し損をする。
そして、もし私が急に死んだとき我が子(犬と猫)の安寧が危ぶまれる。
ふぅん…。
あんなに縁遠いと思っていた二文字が私のすぐ頭上にふりかかっているのが見えた。
「結婚……した方がよくない???」
そんなことを胸にしまいながらいつも通りふたりで夕食を食べた。
私は自分の内にマンネリを見つけると嬉々としてそれを打破しに行く。
変化や刺激が好きで少なくともコンサバティブではない。
だからって人生の三大イベントと言われる結婚までも軽いノリでしちゃっていいのだろうか。
でも、もう令和だしそういう三大なんとかってのも古い考えだよな??
もう寝ようとしてたけど今から飲み行くわー!とか
来週ひとりでフィリピン行っちゃおー!とか
一度きりの人生だしこんな会社辞めたろー!とか
今までみたいなそういうノリで人生の伴侶まで決めちゃうの??
でもさ、人生の伴侶って言い方ももう令和(略
さすがの私でも、ふるさと納税の上限がなんたらでエイヤで結婚しちゃえなんて思えなかった。
この時は1週間後に持ち前の躁鬱っぷりを発揮することになるなんて想像もできなかった。
続く↓
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