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小説評論

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#レポート

太宰治 『魚腹記』から学ぶ死とは何か

『魚腹記』の解剖                          まずは、冒頭部分。『魚腹記』では、「本州の北端の山脈は~」と物語の舞台となる場所の説明から入る。スワの視点や気持ちから入らず、場所の説明から物語に入ることで読者が現実の世界と虚構の世界とを分かつ「敷居」を容易に跨ぐことができる。特に、この『魚腹記』は、「山奥の小屋で暮らす親子の物語」という、現実とは少し距離がある話なのでなおさら説

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『僕は勉強ができない』山田詠美 から学ぶ個人力が強くなった経緯

『僕は勉強ができない』 山田詠美
 主人公の男子高校生、時田秀美は勉強ができない。というより、勉強ができることに価値を見出さないのだ。部活はサッカー部に入っており、女子にもてる。おまけに年上の彼女もいる。今でいうところのリア充だ。しかし、どこか社会や大人に対して反抗的な考えを持っている。その原因の一つが、秀美が幼い頃、両親が離婚しており、父親と一緒に住んでおらず、昔からことあるごとに「父親がいない

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推理小説をエンタメにした木々高太郎の功績

推理小説の世界で木々高太郎が担った役割
推理小説の名付け親で、推理小説は文学的・芸術的でなければいけないとした木々。「探偵小説は芸術とは別」とした甲賀三郎や、「謎が論理的に解き明かすことを主眼とした文学であれば探偵小説」とした乱歩と論争も起こした。木々の作品はその言葉通り、人の生活や心情を丁寧に描いた作品が多く、探偵小説(推理小説)という枠を超えて楽しめるものが多い。
木々が出した探偵小説の第1作

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