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告白

「ごめんね」

最後に送ったLINEはたった4文字だった。


高校3年の冬、1ヶ月と半年付き合った彼氏と別れた。

原因は私にあって、彼は私の事をどこまでも好きでいてくれた。


私にはずっと好きな人がいて、ただ私には届かない人で、私の心が揺らいでいる、そんな時に彼が私に好意をくれた。

誰でも良かったわけじゃない。1人の人間として彼の事は好きだった。

2年生の夏に近くの神社で開かれたお祭りに誘われた。その時になんとなくだけど、きっと今日かもしれないと、そんな風に思った。

私は彼から好意を告げられた。

正直、嬉しかった。ただ好き、という言葉を思い浮かべた時に最初に現れたのは彼では無かった。

1ヶ月の時を経て私は彼の彼女になる事にした。

気になるあの人の事を完全に諦めきれた訳ではないけどこの1ヶ月と、これからの彼との時間で私はきっと前に進めるそんな気がした。

付き合って1ヶ月、私は彼に別れを告げた。

「ごめんね」

私は彼の好意をたった4文字で突き返してしまった。私は一歩も前に進めていなかった。

それからの1年、私はこの消化しきれない気持ちを部活動へと向け、日々邁進した。気がつけば気になるあの人への気持ちも薄れ、私はやっと前に進む事ができていた。時間が解決してくれるという事をこれほどまでに実感したのは過去も未来もこの一度きりだった。

3年生の夏、驚く事に彼からもう一度好意を告げられた。

前に進めた私ならば、きっと。

私は再び彼と付き合う事になった。

しかし気づいてしまった。

私が今彼と付き合っているのは彼の事が好きだからではない、という事に。

そして彼の大きすぎる好意を受け止められないという事に。


私と彼の距離は初めから近づいていなんていなかった。

だって私が一度たりとも彼に近付こうとしなかったのだから。


「ごめんね」

精一杯の気持ちを4文字に込める。

私は彼に、本当の気持ちを告白できなかった。



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