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セリーヌ、大江健三郎、カフカ、カミュ、アルトー、バタイユ、ドゥルーズ、デリダ、柄谷行人…

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セリーヌ、大江健三郎、カフカ、カミュ、アルトー、バタイユ、ドゥルーズ、デリダ、柄谷行人などを愛好しています。

マガジン

  • 携帯詩集

    携帯(スマホ)を使って書かれた数々の言葉たち。 最初に入るべき言葉たちは、僕が不用意にスマホの電源を壊したことにより、二度と蘇ることもなかった。 本マガジンは、とりもなおさず、その失われた言葉たち(と、データが入ったままのスマホ)のためのレクイエムである。

最近の記事

  • 固定された記事

(弱い)私は(強かった)私に祈りたい。

 タイトルのようなことを人生の命題として最近悶々と考えている。僕はほかでもない僕自身に祈りたい。弱い僕は、かつて強かった僕に祈りたい。 この命題は(まずは僕に対して、それから他の人にとっても)どこまで説得性を持つだろうか。ゆるりと考えてみる。 自分の話の場合には「僕」と、一般的な方向に話を向けたい場合は「私」と書いておく。 (弱い)私は(強かった)私に祈りたい。 「強い/弱い」「現在と過去」「祈り」「たい」という幾つもの展開しなければならないポイントはあるのだが、あくまで

    • 規範・権力・価値/否定と肯定ーー生まれてこない方がよかった……(2)(3)

      前回:宇多田ヒカルと否定的なものーー生まれてこない方がよかった、いっそ死にたいという想いについて(1) 規範・権力・価値ーー生まれてこない方がよかった、いっそ死にたいという想いについて(2) ■規範と権力 ところで、反出生主義は「否定的なもの」である。なぜならそれは「反」anti という力を有しているから。しかし、「(一見)肯定的なもの」と「否定的なもの」は「有価値/無価値」の図式にはスライドされえないということを(1)の記事で触れておいた。有価値/無価値とは、例えば、

      • 生まれてこない方がよかった、いっそ死にたいという想いについて(1) 宇多田ヒカルと否定的なもの

        ☆  再掲記事になります。過去のものを手直ししました。本記事で触れる「反出生主義」というキーワードは確かに流行ったし、シオランの名前も現在に至るまでちょくちょく見かけます。元となったnote記事は2019年の終わりごろに発表しました。  本記事は、ある人にとっては刺激の強い内容になっていると思います。死や自殺のことを言説上扱うのには非常な注意が必要です。だから、noteにあげてしばらくして、非公開にしていました。  死や自殺への、思考上の、そして言説上でのアクセス。具体的

        • 生まれてくることは選べないが、死ぬことには選択の余地がある。もちろん、あっけない死、突然の訪れの可能性の方が大きいかもしれない。だけど、いかに死ぬか、「私たちはどう死ぬか」を考えることこそが、「私たちはどう生きるか」につながる。死は否定的な概念ではない、死は悪ではない。全く逆だ。

        • 固定された記事

        (弱い)私は(強かった)私に祈りたい。

        • 規範・権力・価値/否定と肯定ーー生まれてこない方がよかった……(2)(3)

        • 生まれてこない方がよかった、いっそ死にたいという想いについて(1) 宇多田ヒカルと否定的なもの

        • 生まれてくることは選べないが、死ぬことには選択の余地がある。もちろん、あっけない死、突然の訪れの可能性の方が大きいかもしれない。だけど、いかに死ぬか、「私たちはどう死ぬか」を考えることこそが、「私たちはどう生きるか」につながる。死は否定的な概念ではない、死は悪ではない。全く逆だ。

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        • 携帯詩集
          8本

        記事

          内心の限りなき自由が叫ばれるのに、否定的な言葉は"善くない"こととして忌避される。ネットで「自殺」「安楽死」などと検索すると、「あなたは悩んでいませんか?」といったメッセージと共に自殺防止センターへ。メメント・モリは悪ではない。逆だ。君たちはどう生きるか、君たちはいかに死ぬか。

          内心の限りなき自由が叫ばれるのに、否定的な言葉は"善くない"こととして忌避される。ネットで「自殺」「安楽死」などと検索すると、「あなたは悩んでいませんか?」といったメッセージと共に自殺防止センターへ。メメント・モリは悪ではない。逆だ。君たちはどう生きるか、君たちはいかに死ぬか。

          旧Twitterの幾つかのレクイエム(古参兵の手記)

          2009年、秋 一羽の小鳥が飛び立った 電子空間の アーキテクチュアは 平面(すなわち、灰色)から立体図形(つまり、白色の)へと 虚空に叫ぶ声、蒼穹の空 僕はここで初めて 自由の本当の姿に出会った ★ 2010、春と夏 蒼空の自由の鳥よ、 おまえは急に「イイネ!」と発声した ふぁぼからいいね!への変換=返還奪還闘争 「いいね」の押売り専制支配の時代が始まろうとした それはひとつの革命だった やがて人はふぁぼと呼ばれていた時代をいともたやすく忘却した 「ワタシの、お気に入

          旧Twitterの幾つかのレクイエム(古参兵の手記)

          道(携帯詩集)

          小さなリンドウの花が並ぶ 始まりはいつもの道だった 柔らかな公園の光に子供たちは包まれて 慎ましげな横道には小さな雲雀たちが停まっている 少女は未来の自分の姿に気付かないままでいる 賑やかな町工場で懸命に針を刺す人々は 労働の歓びを感受しながら わんぱくな唄を歌う 私たちは生きてきた、 不確かな日々の祈りを 確かな明日へと繋いできた お人好しな男たちは旗を振る 古びた軽トラックから勢いよく身を乗り出し 急ぎ込んだ車たちを惚け顔で制止する 今日ははよ上がれ

          道(携帯詩集)

          政治は悪ではないんだろう、しかし……

          政治「そのもの」の地位が失墜している、というのは、日本のテレビや世界のニュースを見て思うことなのではなかろうか。しかし、政治それ自体が絶対悪であるわけはさすがにないだろう(必要悪という概念はここではあまり関係ない)。しかしもはや、政治家こそが悪であるというのは、日本に限らず世界の公理となっている節さえある。マスメディアの不用意な煽りを差し引いても、昨今の日本政治家のあれこれには開いた口が塞がらない。そんな日々の連続では、最早はやあくびすら出ない。 政治は国家や社会の運営にと

          政治は悪ではないんだろう、しかし……

          いいねした記事は読んでいるので、各位よろしくお願いします(どゆこと)

          いいねした記事は読んでいるので、各位よろしくお願いします(どゆこと)

          一番好きな映画と『道』と。

          「一番好きな映画は?」と試しに自分に問いかけてみた。その答えは、「ロード・オブ・ザ・リングか、ジュラシック・パークか、プライベート・ライアンかなぁ……」だった。なんということか。よりにもよって(?)同じ監督が二作も入っている。僕はスピルバーグ主義者なのだろうか。E.T.もジョーズもとても好きだけど……そもそも映画を監督別に観ていないという癖もある。作家主義ではないんだろう。現在でも。  結局、バカみたいに高額なお金が投入され、視覚効果をふんだんに活かしたいかにもハリウッド的な

          一番好きな映画と『道』と。

          あなたの字は素敵だねだと言ってくれたから(エッセイ)

           字が汚かった。小学生のあるとき、通っていた塾の算数の先生に「おい、ちょっとこれを見てくれ」と、苦笑されながら自分の書いた答案を渡された。確かにそこには自分でも判別するのがやっとなほどの乱雑な走り書きがあった。算数の先生は、まるで現役のヤクザのような風貌をした痩せぎすの男性で、僕はその先生が大好きだった。怒ると怖いけど、快活な笑い話で生徒の心をぐっと掴むところに惹かれた。その先生が、「さすがにこれは読めないな。次からは気をつけろよ」とポンと僕の肩を叩き、そのまま颯爽と去ってい

          あなたの字は素敵だねだと言ってくれたから(エッセイ)

          トイカメラな日々

          先日、トイカメラを買った。 二眼レフ型とあるが、正確には二眼レフ風である(そのことは商品ページにもちゃんと説明がある)。正面の「ON/OFF」という小さなボタンを押して、レトロな粗目の画質の写真が撮れるというもの(動画や音声録音もできる)。ちなみに撮ったその場では確認できず、スマホやPCと接続することで出来上がりを確認。この手間が楽しい。 もちろん、無加工。いやぁ、エモいなぁ(自画自賛)。 以前、「カメラとキャメラ」という記事を書いたことがあるが、僕は元来、人物を撮るこ

          トイカメラな日々

          【携帯詩】命の灰

          僕はある種の靄の中に在る 固定化された、記憶の、回廊…… 僕はその中で羽根ペンを取り出し 確立された人類の負債のために 僕自身の遺書を認める それは以下のような(畏れ多く、かつ傲慢な、何も知らない最後の人間のさらにその末裔の)断片-手帖だ。 「僕は世界=COVID-19以前に百日咳に罹り、フクシマ=3.11以前に大学紛争に明け暮れ、ニューヨーク=エンパイア・ステート・ビルディング以前に右手の掌に托鉢印を受け、メトロポリス=地下鉄事件以前に世界を三度に渡って横断-旅行し、ベルリ

          【携帯詩】命の灰

          久々に肩の力が抜けたいい記事が書けた!(自画自賛) 長くないし、よかったら読んでもらいたいです。看護の現象学、リハビリテーションの現象学気になるなぁ

          久々に肩の力が抜けたいい記事が書けた!(自画自賛) 長くないし、よかったら読んでもらいたいです。看護の現象学、リハビリテーションの現象学気になるなぁ

          Scatterbrain(エッセイ)

          Radioheadの6枚目のアルバム『Hail To The Thief(ヘイル・トゥー・ザ・シーフ)』に、「Scatterbrain(スキャッターブレイン)」という曲が収録されている。哀しく、トム・ヨークの歌声が優しくてとても好きなのだが、scatterbrainの意味を知ったのはだいぶ後になってからである。「注意力散漫な人」。ハッ自分のことじゃん、だから好きだったのか……?となった、苦いような甘いようなアンニュイな思い出。 「mistyさんは、不注意なところは基本にある

          Scatterbrain(エッセイ)

          【掌小説】街灯

          街灯(掌篇)  外を歩いていると、さして強くない一筋の光に誘われてかえって暗闇の中に迷い込んでしまった。確かに夜だった。私の目線は灯を捉えていた。それはひどく汚れた、白熱電球の光だった。丸みを帯びた硝子の球体から、暖かみを含んだ奇怪な光が流れていた。電球はおそらく剥き出しの姿であろう、二つばかり同じ形状のものが不気味なまでに仲良く並んでいた。白熱電球の周りには蜘蛛の巣が執拗に絡まっており、地上から僅か二メートルあたりの所で私を見下ろしているのだった。まず、電球はどのようにし

          【掌小説】街灯