あなたの字は素敵だねだと言ってくれたから(エッセイ)
字が汚かった。小学生のあるとき、通っていた塾の算数の先生に「おい、ちょっとこれを見てくれ」と、苦笑されながら自分の書いた答案を渡された。確かにそこには自分でも判別するのがやっとなほどの乱雑な走り書きがあった。算数の先生は、まるで現役のヤクザのような風貌をした痩せぎすの男性で、僕はその先生が大好きだった。怒ると怖いけど、快活な笑い話で生徒の心をぐっと掴むところに惹かれた。その先生が、「さすがにこれは読めないな。次からは気をつけろよ」とポンと僕の肩を叩き、そのまま颯爽と去ってい