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日本ヒューレット・パッカード事件⑤(平成28年2月25日東京高裁)

概要

被告会社に従業員として雇用されていた原告が、職場で嫌がらせを受けた等と主張して欠勤を重ねたため、会社から無断欠勤があったとの理由により諭旨退職処分を受け、会社に対し同諭旨退職処分の無効を主張して雇用契約上の地位確認及び賃金の支払いを求める訴えを提起し、その従業員において同諭旨退職処分が無効であるとして地位確認請求等を認容する一部認容判決が確定したことから、会社が従業員に対し復職を求めたが、心身の不調を理由に就労の申出を拒絶され、本件休職命令を受け、さらに、休職期間満了日で退職手続をとる旨の通知を受けたことから、会社に対し、同休職命令の無効確認、労働契約上の地位の確認、就労を拒絶されて以降の賃金及び賞与等の支払い、不法行為に基づく慰謝料等の支払いを求め、原審が訴えを一部却下、一部棄却した事案の控訴審。

結論

棄却

判旨

元従業員を本件オフィスで就労させることは、元従業員の精神的健康の回復の上でも、他の従業員の精神的健康の維持の上でも問題があり、労働契約上、従業員の精神的健康に配慮すべき義務を負う会社としては、元従業員を上記オフィスで就労させることは困難であったといわざるを得ず、また、元従業員の従業員らから嫌がらせを受けているとの妄想を有している元従業員を、精神科の治療を受けていない状態で支店や事業所等に配置換えすれば、元従業員が新たな配属先で同様の妄想を抱くことがあり得ることに照らすと、元従業員を支店や事業所等に配置して就労させることも困難であったと考えられるから、本件休職命令発令当時、元従業員の就労の現実的可能性があるような職場は、元従業員の社内にはなかったとの原審の認定に誤りはない。

元従業員について休職理由(精神的不調)が休職期間満了時に消滅したとは認められない以上、元従業員の就労の現実的可能性がある職場が元従業員の社内にないとの本件休職命令発令当時の状況は、休職期間満了時においても変わりがないといわざるを得ないから、休職期間満了時に元従業員に精神的な不調があるとしても会社の職場において就労することが可能であったということもできない。


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