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今しか撮れない人を撮る

わたしの祖父母は現在米寿
もうすぐ90歳

祖母は
「こんな高齢者が生きてられても困るよねぇ」
と口癖のように言って笑います。

一昔前だったら88歳でこんなに元気なんて
驚かれたことでしょうが
今のご時世一般的なのでしょうか。

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祖母の作る朝ごはん


わたしに物心がついた5歳ぐらいの頃から
きっともっとずっと前から
祖父はCanonのフィルムカメラに
Bazookaレンズ(200〜400mmぐらい)をつけた
一眼レフを持ち歩いていて
わたしにある日

「ほれ、持ってみろ。」と言いました。

幼いながらに「落としたらどうしよう」
と怯えたことを覚えています。
そして、重すぎて
5歳の手では持てなかったことも記憶しています。



そして、18歳のとき初めて祖父はわたしに
Canon 60Dを買ってくれました。
祖父の持っているレンズコレクションの中から
最も初心者に使い勝手が良いという
28-200mmのZoomレンズをつけて。

わたしは当時、家族と離れてオーストラリアに住んでいたので
写真を撮りに一緒に出かけるということはなかったのですが
その後10年近く、写真を印刷して持っていくと

「なんだこれは」「なんだこの構図は」
「なんでこんな不要なものが写ってるんだ」
「なんのために撮ったんだ」

と10年近くの間に
1枚しか評価はしてもらえなかったことを覚えています。



昨年

YASUTOさんというカメラマンさんが
祖母グラフィーという
彼の実の祖母を撮るプロジェクトを始められて

わたしも生きているうちに
わたしのカメラマンの「師匠」と呼んでもいい
祖父を撮ろう!と決めて
祖父を撮りに、実家に訪れました。

祖父はイケメンですが
出不精で、写真に写る意欲のない人。
家から一歩も出ないし
いつも同じ顔をしているので
1日のうちにバリエーションのある写真は撮れない・・

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そう思いながら祖父母を撮っていたところ

祖母が天性のモデルであることに気がつきます。

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膝が痛いと言いながらも山に登り

「そこで撮らせて」というと

膝を曲げたポーズまでする。
プロ意識を感じます。



そしてわたしは今年フランスに引っ越すまで
祖母を撮り続けました。

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箱根彫刻の森

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88歳になってLINEを使い始めたり
携帯ゲームを夜な夜なやっていたり

若さがとどまるところを知らない祖母。
この螺旋階段も一緒に頂上まで登りました。

しかしコロナウイルスでの外出自粛で
2020年上半期、だいぶ衰えてしまった様子
足腰が痛いと言い
友達と会うこともできず
とても弱気になってきた祖父母

外出自粛が緩和され、今は元気に歩き回っていることを願います。

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COVIDを気にしなくてよかった頃は
新宿に「ついでに」かき氷を食べにきていた祖母。

書道を60歳から習い始め
東京中を行ったり来たりしていました。

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TORAYAのかき氷
次に食べられるのはいつのことになるやら。

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今年、わたしはフランスに引っ越す前に
撮りためた祖父母の写真を写真集にして
両親、祖父母にプレゼントしました。

本人が本人の写真集をもらっても・・
あなた(孫)の写真のほうがいいんじゃないの?

とも言われましたが、自己満足でもまず一冊作ってよかったと思います。

祖母は「孫が写真集を作ってくれた
という事実に喜んでいたようですが
祖父はわたしのいないところで
さすがだな。俺にはこの写真は撮れない。」と言っていたと聞き
彼のお眼鏡に叶う写真がついに撮れたのかと
写真を見せる機会があってよかったと、つくづく思わさせられました。

今回は米寿記念に
そしてまた90歳でも99歳でも
生きていてくれるだけ撮れる機会があることを願っています。

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【PROFILE】
Anna Claire (和名: 須賀 えま)
セルフポートレートアーティスト
15歳からモデルを始めて22歳からカメラマンとして仕事を始め
現在はフランスでセルフポートレートを撮影している。
■ Portfolio: https://annaclaire.pb.online/
■ Instagram: https://instagram.com/missannaclaire
■ Twitter: https://twitter.com/en_afternoontea
■ YouTube: www.youtube.com/channel/UCDegA5lK37oDs0RhWyMeRSQ