朝井リョウ 「正欲」読了。

※ネタバレ含みます



読んだあとすぐ思ったこと:〈感想を人から聞かれたら、『    良かった。  』『読む?』しか喋れないな〜!〉でした。

知り合いとこの本のことを語り合いたいとも思いません。薄っぺらいマジョリティの確認作業になりそうで自分に嫌悪感を抱きそうです。

あと、主人公たちが小児性愛じゃなかったからさらっと読めましたが、小児性愛の人が主人公だったら嫌な気持ちになったでしょうね。
実際に被害者が沢山いますから。
敢えて小児性愛者を主人公にしなかったのは、英断だと思います。小児性愛じゃ無くても、本書が伝えたかった事は伝わるでしょう。

小児性愛者が主人公である事で期待されるような気持ちのモヤモヤやカタルシスを感じたかった方にとっては『スッキリし過ぎ!』となるかもしれませんが、それは別のお話でしょうね。


"小児性愛と誤認されて逮捕される"という結末は、"普通の人が、狭い視野の中で、すでに認識している犯罪しか認識できない結果"として受け取れば、
本書の主張とも一貫しています。

あとは単純に物語の運び方とから伏線の回収の仕方とか話の繋げ方とかの技術が高くてスラスラ読んでしまいました。

最後に、とても印象に残った一文を引用します


絞った雑巾から滲み出る汚水のような泣き声が、夏月の耳にも届く。

84ページ

私はこの一文が脳に焼き付いて離れなかったです。どれだけ憎しみが心にあるか一言でわかりますね。
赤子の泣き声を汚水と形容した文を初めて見ました。

最悪すぎてちょっと笑ってしまいました。 

いや〜、良かったです。いい読書体験でした。
おしまい。


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