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長野県立美術館「戸谷成雄 彫刻 」レポート
戸谷成雄の個展「彫刻 」が長野県立美術館で開催されています。2023年1月29日まで。
戸谷成雄(1947-・長野県上水内郡小川村生まれ)は、日本の現代彫刻を代表する存在として、「彫刻とはなにか」を問う根源的な思索を深めながら、精力的に作品を発表しています。
長野県での初めての個展となる本展では、戸谷成雄の初期から近年の作品まで代表作を含め約 30 点を、年代順ではなく展覧会のコンセプトに合わせて展示します。
特に戸谷の壮大な彫刻観へのいとぐちとして、「表面」や「構造」といった独自の彫刻概念に、日本語の言語構造への深い思索が反映されていることに焦点を当てます。この思索は、戸谷自身の言葉にしばしば表明されてきましたが、作品を目の前に語られる機会はあまり多くありませんでした。日本の社会について戸谷が常に抱く問題意識は、言語学や人類学の方法論をもちいて社会の構造のありかたを問うという、世界的な思想のながれに合致し、彫刻家自身の彫刻概念と共振しました。
1980 年代半ばから始められた「森」シリーズに見られるように、チェーンソーで木材の表面を刻んだ大型の木彫作品がよく知られていますが、作品の基本的な考え方は、戸谷が彫刻家をこころざした 1970年代にすでに形成されました。当時、国内外で展開されていた現代美術では、旧来の絵画や彫刻が事実上否定され、美術そのものの在り方が問われていました。戸谷はいわゆる制度として解体された彫刻を、時代や地域の枠を乗り越え、その起源から見つめ直しています。
第1展示室(吹き抜けの展示室):「死」の世界
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第2展示室:初期作品を中心に――彫刻の起源
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《器 III》1973 木 / 200×76×60 cm 愛知県立芸術大学
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第3展示室:モニュメンタルな作品を中心に――「表面・構造」と「言語」
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エントランス
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長く制作してきた作家の初期から最新の作品まで見渡せ、作風の変遷がわかるのが回顧展の良いところですね。大学卒業制作品《器 III》はまさかの具象といえる人物像なので驚きです。
また同じく驚きだったのは《連句的 II》 で、呪術的な場のように床にオブジェが置かれていてそこを白線で繋いでいき中央のガラスが刺さった机を取り囲むのですが、その周囲をゆっくりと回遊できるようになっておりインスタレーションというよりもむしろ体験型のような作品でした。そんな作品を体験すると、戸谷茂雄さんの作品とそれが構成する空間は、あたかもテーマパークとそこにあるオブジェのような感じで、展示空間のどこから作品を撮ってもInstagramで映えそうで、ステイトメントを読むと確かに「もの派」あるいは「ポストもの派」のような難解で熟考させられることを求められそうではあるものの「映える」視点から見ると意外と観賞のハードルは高くないのではないのかなと思いました。
本展は埼玉県立近代美術館に巡回します。会期は2023年2月25日(土) ~ 5月14日(日)。「初期作品や「森」、「ミニマルバロック」」などを中心に紹介するなど、長野県立美術館とは少し異なるようです。どちらもぜひご覧ください。
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戸谷成雄 彫刻
会場:長野県立美術館
日時:2022年11月4日(金)~ 2023年1月29日(日)
9:00~17:00
https://nagano.art.museum/exhibition/toyashigeo
同時開催
NAMコレクション展 第Ⅳ期
2022年11月10日(木)~ 2023年1月17日(火)
https://nagano.art.museum/exhibition/namcollection2022_4
第Ⅴ期 東山魁夷館
2022年12月8日(木)~ 2023年2月7日(火)
https://nagano.art.museum/exhibition/higashiyama202205
アートラボ2022 第Ⅲ期 荒木優光 ダンスしないか?
2022年11月3日(木)~ 2023年1月29日(日)
https://nagano.art.museum/exhibition/artlab_araki2022
NAMアーカイブ&リサーチ2022 信州の生活と版画―上野誠が見つめた戦後
2022年10月27日(木)~ 2023年2月14日(火)
https://nagano.art.museum/exhibition/2022_archiveresearch
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