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2022年度第2期コレクション展「追悼 設楽知昭」、「生誕80年 あさいますお ―不可視の後衛」 | 愛知県美術館

「ジブリパーク開園記念 ジブリパークとジブリ展」を開催中の愛知県美術館のコレクション展では画家として活動する一方、長年愛知県立芸術大学で教鞭をとり多くの作家を輩出しましたが惜しくも昨年亡くなられた設楽知昭さんの特集しています。また他の展示室では埋もれていた前衛作家といえるあさいますおについてリサーチを通して大量発見された作品群を一挙展示しています。12月25日(日)まで。


「追悼 設楽知昭」

昨年3月に愛知県立芸術大学を退任後、7月に急逝した設楽知昭(1955-2021)。人が世界を「見る」意味から問い直し、自分の着衣や鏡に描いた作品、世界をドームに見立てた立体と絵画、約4×11mの《透明壁画》など23件の所蔵品ほかを展示します。

WEBより


展示風景

右側 設楽知昭《透明壁画、人工夢》(2005年) テンペラ・シリコンラバー、ポリエステルフィルム



今回の追悼展にあわせて寄託された2件(合計12点)作品もまとめて展示されています。

(右)設楽知昭《鏡ヨリ モノタイプ(手と目/頭部・胸)鏡》1989年 カーボン・リンシードオイル、鏡 寄託作品(鱓庵コレクション)
設楽知昭《鏡ヨリ モノタイプ(手と目/頭部・胸))1-10》1989年 寄託作品(鱓庵コレクション)


画面奥、右側に寄託作品が展示されています。



《ホテル・パシフィカ》シリーズ



2007年頃からキャンバスに油彩というそれまで避けてきた伝統技法へ復帰し大きく作風が変化します。

設楽知昭《portrait 二》2007年 油彩、画布
設楽知昭《火口》2012年 油彩・エンコースティック、画布



前室では設楽知昭さんとその教え子である坂本夏子さん、鋤柄ふくみさんの作品も合わせて展示をし、師弟関係とその影響について探っています。

左から、設楽知昭さん、鋤柄ふくみさん、坂本夏子さん。
上の画像で並んでる坂本、鋤柄両名の作品は最初に個展を行ったギャラリー白土舎の土崎正彦さんからの寄贈です。設楽さんも展示を行っていたスペースですね。


設楽知昭《オオサカ》 2010年 油彩・エンコースティック、画布


鋤柄ふくみ《ミシン女》2010年 油彩・コラージュ、画布


鋤柄ふくみ《雑誌15_01》2009 水彩・素描



前室突き当たりには坂本夏子さんの大作が展示されていました。

坂本夏子《Painters》2009年 有色油性下地に油彩、画布




関連イベント

設楽知昭幻灯機上映会+ギャラリートーク 
深山孝彰(愛知県美術館企画業務課長)

追悼特集で展示の《透明壁画・人口夢》は、約1m四方の透明フィルムに描かれた43点で構成されています。2009年に設楽自身が各画面を6cm角のスライドフィルムにし、名古屋市美術館の講堂で投影した幻灯会を、展示室で再演します。
日時:2022年12月9日(金)18:30-19:10
会場:展示室4
定員:先着30名 ※コレクション展チケットが必要です。




美学者の秋庭史典さん(名古屋大学教授)が著作「絵の幸福――シタラトモアキ論」において設楽知昭さんの作品や制作を論じています。
また同じく秋庭さんから鋤柄ふくみさん、坂本夏子さん両名に関する論考を弊誌レビューとレポートへ寄稿してもらっています。
本展の参考にぜひご覧ください。


■絵の幸福シタラトモアキ論 みすず書房


レビューとレポート
■「絵の思考」とその魅力 (坂本夏子さんの作品について)
https://note.com/fmak_2/n/n1f9a4ae1d66a

■膜と家—鋤柄ふくみさんの絵について
https://note.com/fmak_2/n/n06dcf4ccae10

■絵と絵以外
https://note.com/fmak_2/n/na083828a4a69





「生誕80年 あさいますお―不可視の後衛」

愛知県長久手出身の前衛芸術家、あさいますお(1942-1966)。絵画の制作、前衛的なパフォーマンス、ガリ版誌の発行、日本各地の辺境への旅、子どもたちへの美術教育など、多岐にわたる活動を展開したこの知られざる作家の全貌を明らかにします。

WEBより


会場入り口


特集冒頭の解説を要約すると次のとおりです。

あさいますお(1942-66)は愛知県長久手出身、中学校への登校が病により難しかったことから独学で詩や絵の創作を始めたり、高校生で60年安保へ参加したことが、芸術志向・社会への批判が活動の基底となり、ガリ版誌の発行を行うことで、遠くへ自身の活動を届けるツールを手にしました。その後、ゼロ次元との交流をへてパフォーマンスを行うようになり、彼を知る人からは高く活動が評価されている中、不慮の事故で亡くなってしまいます。
愛知県美術館は2016年に加藤好弘所蔵のあさいますお資料を収蔵、「アイチアートクロニクル 1919-2019」では遺作展以後53年ぶりに作品を展示、本展は生誕80年を記念し、近点の調査で発見された作品群を一挙に紹介することで、彼の活動を可視化し戦後美術史に位置づける第一歩とします。


作品状態は良好でなく展示による劣化の可能性があるものの、所蔵者遺族と話し合いにより見てもらうことが大事であるということで展示が行われており、今後、修復が進めば次の展示が可能かもしれないですが、そうでない限り、次の機会は遠く、本展は貴重な機会なのかもしれません。



展示風景







 


関連イベント

開館30周年記念コレクション・トーク「あさいますおの24年」 
石崎尚(愛知県美術館学芸員)

愛知県の長久手を拠点とした夭折の前衛芸術家、あさいますお。彼が駆け抜けた24年間の生涯とその間に残した作品をご紹介します。
日時:2022年11月3日(木・祝)14:30-15:30
会場:アートスペースA(愛知芸術文化センター12階)




筒井宏樹さん(鳥取大学准教授)がワタリウム美術館で行った講演であさいますおについてふれており、その記録が残っています。参考にご覧になってはいかがでしょうか?


■恋せよ乙女!パープルーム大学と梅津庸一の構想画 ワタリウム美術館 ―『地方の前衛芸術について』
筒井宏樹(鳥取大学准教授)

1950年代末から1970年代に起きた前衛運動から愛知「あさいますお」や鳥取「スペースプラン」について紹介するとともにグローバルアートヒストリーによる価値平準化への抵抗を「忘れられない人々」として示す。




コレクション展の他の展示室はつぎのような展示となっています

展示室5 ピカソと同時代の作家たち
他館の展覧会への出品が続いたパブロ・ピカソ《青い肩かけの女》が当館に戻りました。この作品を中心に、ピカソの版画や陶器、同時代の作家の作品を紹介します。また日本の美術界におけるピカソの影響について、作品や関連資料を展示します。

展示室7・8 木村定三コレクション 文人趣味と煎茶
木村定三コレクションから文人趣味と煎茶に関わる作品を紹介します。中国明代、江戸時代の禅僧による墨跡、南画や文人画、文房具、煎茶具など、主に日本の文人たちが手がけたもの、関心を寄せた品々で構成します。




概要

愛知県美術館2022年度第2期コレクション展
会期:2022年10月29日(土)~12月25日(日)
会場:愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
開館時間:10:00~18:00 金曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日[10/31(月)は開館]
WEB
https://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/000371.html
コレクション出品リスト
https://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/item01/list2022-2nd01.pdf


同時開催

ジブリパーク開園記念 ジブリパークとジブリ展(企画展 )
https://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/000369.html




画像はプレス向け内覧会で撮影したものです。無断転載はできません。


レビューとレポート