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「DOMANI・明日展 2022–23 百年まえから、百年あとへ 」レポート

 国立新美術館では、2022年11月19日(土)より『DOMANI・明日展 2022–23  百年まえから、百年あとへ』が開催されています。2023年1月29日(日)まで。 

文化庁は、将来の日本の芸術界を支える人材の育成のため、若手芸術家が海外の関係機関等で行う研修を支援する「新進芸術家海外研修制度(在研)」を1967年度から実施しており、すでに半世紀を経過しました。美術分野では、そうした成果発表の機会として1998年から「DOMANI・明日展」を開始し、2022年度で第25回目を迎えます。2008年の第11回展以降は、前年に東京・六本木にオープンした国立新美術館を会場に、天井高に恵まれた空間での大規模なグループ展とし、「海外研修」のアフター・プログラムとして、海外に送り出した人材を日本のアートシーンにプレゼンする機会としてきました。
前回(第24回)はコロナ禍の影響で東京では開催できず、しかし在研関連のネットワークを生かして全国5会場に展開し、あわせて第1回から第23回展に関するアーカイブ集『DOMANI・明日 記録集:The Art of Tomorrow 1998-2021』を刊行しました。
本展は第25回の周年事業として、これまでに国立新美術館での「DOMANI・明日展」で本格的に取り上げることができていなかったキャリアの豊かな作家3名と、比較的近年に在研を終えた清新な作家6名、さらに「DOMANI・明日展」史上、初の国立新美術館2度目の参加となる近藤聡乃を招いた展示となります。サブタイトルは「百年まえから、百年あとへ」。1923年に首都圏を見舞った「関東大震災」から百年目の年に東京で開かれる企画として、「ゆれる/ゆらぐ地面、制度、価値観」という視点から、コロナ禍後の次代の人材育成、美術界のあり方をも考えます。
国際的な移動や発表を前提に活動してきた作家たちが、長期にわたる閉塞状態のアートシーンに遭遇したなかで思考を重ねた展覧会をご期待ください。

公式HPより引用 https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/domani2022-23/


出品作家が展覧会に寄せたメッセージ映像が会場入り口付近に展示されています。作品や作家への理解が深まりますので、併せてご覧ください。
※公式HPからもご覧になれます。
https://domani-ten.com/news/


■展示風景

近藤 聡乃

1980年生
マンガ、現代美術【2008年度(1年研修)・アメリ / ニューヨーク】
第13回DOMANI・明日展 / 2010年度 / 国立新美術館


石塚 元太良

1977年生
写真【2010年度(1年研修)・アメリカ / ニューヨーク、2021年度(特別研修)・フィンランド / ケミヤルヴィ】


池崎 拓也

1981年生
現代美術【2017年度(1年研修)・アメリカ / ニューヨーク】


大崎 のぶゆき

1975年生
現代美術【2020年度(1年研修)・ドイツ / シュトゥットガルト】


丸山 直文

1964年度
絵画【1996年度(1年研修)・ドイツ / リニア】
第6回DOMANI・明日展 / 2002年度 / 損保ジャパン東郷青児美術館
第10回DOMANI・明日展 / 2006年度 / 損保ジャパン東郷青児美術館
第14回DOMANI・明日展(特別出品) / 2011年度 / 国立新美術館


伊藤 誠

1955年度
彫刻【1996年度(1年研修)・アイルランド】
第4回DOMANI・明日展 / 2000年度 / 安田火災東郷青児美術館


北川 太郎

1976年生
彫刻【2007年度(3年研修)・ペルー / クスコ】


黒田 大スケ

1982年生
彫刻【2018年度(1年研修)・アメリカ / テキサス、フォートワース】
「どこかで?ゲンビ」and DOMANI@広島 / 2021年度 / 広島城二の丸


谷中 佑輔

1988年生
彫刻・パフォーマンス【2019年度(3年研修)・ドイツ / リンリン】


小金沢 健人

1974年生
インスタレーション【2001年度(3年研修)・ドイツ / ベルリン】
DOMANI・明日展 plus / 2016年度 / 京都芸術センター
DOMANI・明日展 plus online 2020 / 2020年度 / 特設ウェブサイト




コロナ禍による影響で、2年ぶりの国立新美術館での開催となった第25回目のDOMANI展。前半は平面作品、後半は立体・インスタレーション作品が中心の展示となっています。国立新美術館という広い空間を各作家が作品をどのように魅せるかが見所です。今回の出品作家10名中9名が男性、1名が女性というジェンダーバランスについては、本展企画者・全体監修である林洋子氏が図録内で言及しており、展示と合わせて読まれることをおすすめします。




展示図録には作品解説や関係者のテキストも収録。ぜひご覧ください。


取材・撮影・執筆:宮野かおり




関連イベント

多数のイベントが行われる予定です。編集部で気になるものを下記のとおり紹介します。ギャラリートークは直接作家から作品について話の聞ける良い機会ではないでしょうか。詳細はWEBを確認ください。


■ギャラリートーク

出品作家10名が下記日程により会場内にて自身の作品について語ります。(各30分程度)

  • 11月19日(土)①14:00~ 近藤 聡乃 ②15:00~ 谷中 佑輔

  • 11月20日(日)③14:00~ 池崎 拓也

  • 11月25日(金)④18:00~ 石塚 元太良

  • 12月 4日(日)⑤16:00~ 北川 太郎

  • 12月 9日(金)⑥18:00~ 黒田 大スケ

  • 12月11日(日)⑦14:00~ 伊藤 誠  ⑧15:00~ 小金沢 健人

  • 12月16日(金)⑨18:00~ 丸山 直文

  • 12月17日(土)⑩14:00~ 大﨑 のぶゆき 


■オンライン・シンポジウム「移民の芸術/芸術の移民」

ピカソ、カンディンスキー、モンドリアン、クレー、デュシャンなど、近代美術の歴史は、移民=国外退去者たちの歴史であると言ってよいほどに、膨大な数の芸術家たちが国境を超えてきました。移民性は、芸術を語るうえで、欠かすことのできない視点であったと言えるかもしれません。日本においても、藤田嗣治や国吉康雄の作品は、彼らの「移民」としてのありかたと深く関与しています。既存の制度が機能不全を起こし、国家間の力学的関係・体制が流動的に変わり、あらゆる物事の価値や境界が揺らぐ緊迫し現状況。は、安住の場、帰るべき場所が失われた、誰もが潜在的な移民でありうる時代であると言えるのかもしれません。本シンポジウムでは、アーティストの移動が、その思考や作品様式に及ぼす影響について、あるいは、芸術における移民性とはなにかについて、本展出品作家を中心に議論を行います。

企画:沢山 遼【美術評論、2021年度(1年研修)・アメリカ(ニューヨーク)】
登壇者:小川 希【アートマネージメント、2021年度(1年研修)・オーストリア(ウィーン)】、池崎拓也(本展出品作家)

12月以降オンライン配信予定。


■鑑賞ワークショップ「ふれてあじわう・ふれてかたる」

障害等にかかわらずさまざまな人々が一緒に楽しめる鑑賞ワークショップを開催。「触覚」の研究者として著名な渡邊淳司氏(NTT)監修のもと、普段は視覚による美術鑑賞体験を触覚でも共有するワークショップを行います。

日時:
2022年12月10日(土)13:00〜15:00
企画監修:
渡邊 淳司[NTTコミュニケーション科学基礎研究所]
実施者:
小林 桂子 [日本工業大学先進工学部]
ゲスト:
黒田 大スケ [本展出品作家] 


詳細は以下展覧会HPをご参照ください。
https://domani-ten.com/2023/event.php


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■展覧会概要

DOMANI・明日展 2022–23 百年まえから、百年あとへ
会期:2022年11月19日(土)~2023年1月29日(日)
休館日:毎週火曜日、年末年始2022年12月27日(火)~2023年1月11日(水)
開館時間:10:00~18:00
※毎週金曜日は20:00まで、入場は閉館の30分前まで
会場:国立新美術館 企画展示室2E

https://domani-ten.com/




宮野かおり(美術作家)
1990年東京都出身。埼玉県と福島県を行き来しながら育つ。
一度普通大学を卒業後就職を経て、美術大学へ進学。2020年東京藝術大学美術硏究科絵画専攻(壁画第一研究室)修了、2021年ゲンロン新芸術校第6期修了。
幼い頃から親しんできたりぼん・ちゃお・なかよしなどの少女漫画をベースにした少女主観の世界観で絵画を描く。井戸端アートおしゃべり会「桃会~peach-kai~」主催。


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