何もできない大人の初めての伊勢神宮一人旅 その1 旅の幕開け編

人生に行き詰まった。何をどうしたらいいかわからなくなった。メンタルも不調で頭も全然まわってない。そんな中で急に思い立った。

「伊勢神宮に行こう」

前々から行ってみたいとは思っていたが、結局行かずじまいのまま。新幹線に1人で乗ったこともないし、切符の買い方もわからない。そういう類のことが何も出来ない。ゆえにびくびくして出来なかったのも原因のひとつだったが、そんな不安やどうしようすら吹っ飛ばし、半ば取り憑かれたかのように出かける準備をした。

このままぐだぐだしてるより、行っちゃったほうが良い気がする。何時間か経って、行ってたらなぁとか思うより、頭がまわってなかろうがもう行っちゃった方がいい。今日行かなかったら行かないかもしれない。行こう！

何もわからない私の一泊二日の伊勢神宮の旅はこうして始まったのだった。
　

　
どこかに行きたいとは思っていたが、コロナや麻疹が怖いのが一番の原因だった。自分がかかることよりも、周囲の人に伝染してしまったらどうしようという恐怖が私の行動力をより失わせていた。

そんな私だったが、最近の人生のつまらなさに辟易すると同時に、北海道に行きたいとぼんやり考えていた。元々行きたいとは思っていたが結局実現していないことの一つである。北海道には飛行機でしか行けないと思っていたが、新幹線で行けることを知って少しハードルが下がっていた。情報弱者の私がなんで新幹線で行けると知ったのか……
　

　

天下分け目のお宝争奪バトルミステリー、ついに開幕ー！

劇場版『名探偵コナン100万ドルの五稜星』

である。

舞台は北海道、函館。漫画やアニメはいつも私の人生を導いてくれる。

映画をきっかけに、初めて私は北海道に新幹線で行けることを知る。

メンタルが絶不調の中、ぼんやりと観に行ったコナンだったが、大切なことを思い出させてくれた。

「あたし、オタクだったわ……」

久しぶりに頭の中が脳汁で溢れかえった。

その勢いのまま帰りにUFOキャッチャーのキッドのフィギュアで二千円近く溶かして我に返って反省した。

昔は得意だったのに…使い込んだら取れるまでやってたのに…

これ以上はイカン！と判断し、泣く泣く諦めた。もはやキッドのフィギュアがほしいよりも、失ったお金を回収したい！に目的が変わっていた。危ない…こういうところで歯止めが効かなくなってしまうんだ…
二千円は惜しいが、二千円で済んだことをよかったと思おう…と思った。

一瞬、キッドが盗んだと思おう…と考えたが、すぐにキッドはそんなことしねえ…と我に返り、自分を慰めるためにキャラを自分勝手に都合よく動かそうとした自分にまた辟易とした。俺は真っ当なオタクでありたい…原作を粗末に扱いたくない…

溶けた二千円で映画もっかい観れたなぁ…とも浮かんできたが、もう考えるのはやめようと思った。

少々の虚しさを胸に抱えながら帰路についた。

そしてぼんやりと北海道行きたいな。このまま勢いで行ったら面白いのでは？と考え、北海道行きを調べ始めた。今思えばここからフットワークが少しずつ少しずつ軽くなっていたのかもしれない。

全ては北海道に新幹線で行けると知ったから。

それを知ったのはコナンを観たから。

漫画やアニメはいつだって人生にキッカケを与えてくれる。

もう本当に…映画に関わった全ての方々…世の中の漫画やアニメに携わる方々…1人ももれなく本当に…皆様ありがとうございます……神……
　

突然の北海道行きを目論んで色々調べるも、私の勢いを止める情報があった。

天気である。

勢いだから行ってみたいところはそんなにないし、無知だから観光の名所やグルメとかも何があるのかも分かっていないため、気になるとこだけ行って弾丸な感じで帰ってこようかとは思っていたが、流石にそこそこお金をつかってせっかく北海道まで行くのならば、お天気はよくあってほしい。

ここで私の北海道行くぞの心の風船はしゅるしゅると空気が抜けていってしまい、突然の北海道の旅は実現することなく終わってしまった。

しかし北海道に新幹線で行けると知った私は、どうやってチケット買うんだろうと新幹線のチケットの買い方を調べていた。これが功を奏し、図らずも数日後の伊勢神宮の旅の予習になっていたのだーーー
　
　

伊勢神宮に向かう以外、何も考えられなくなった私はさっさと準備を済まし、家を後にした。新幹線のチケットも買ってないし、ホテルの予約もしていない。全部道中でやればいい。

何にもできない大人の一人旅は、こうして幕を開けたのだった。