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若すぎるクラシック愛好家による、早すぎるクラシック愛好の手引き


クラシック音楽を、より多くに人に聴いてもらうためにはどうすれば良いか?

この問いに対して、実に多くの音楽家やアーティストや、クラシック愛好家が、さまざまに趣向を変えて答えを導き出そうとしてきた。私は仕事柄、国語教育というものについて研究したり実践することがあるが、「古典嫌いを無くすためにはどうすれば良いか」などという問いの類に似ている。まさにクラシック音楽の分野の人たちにとっての宿命のような問いだ。

断言する。そんなものはない。というより、あればこんな問いはとっくに解決されて、全国民のYouTubeの履歴にブルックナーとかベートーヴェンとかシューベルトの映像が残されているはずである。クラシック初心者のためのコンサート、などと題されて、0歳から入場可能な演奏会は、高頻度かつ各地で、しかも未就学児はだいたい無料で大人も1000円切るくらいのチケット価格で開催されている。アウトリーチも沢山行われている。本もいっぱい出ている。クラシックを紹介するTwitterもYouTubeも沢山ある。なのに、クラシック音楽は流行ったことがない。

ここで引っかかった人たちがいるだろう。私はクラシック音楽が流行った世界線に住んだことがないので、「ブーニンブームがあったじゃないか」「マーラーブームって知らない?」と謎にマウントを取られることがあるかもしれない。あるいは現代の人には「反田恭平とか、かてぃんも随分流行っているよね」と言われるかもしれない。

勘違いしないでほしい。ブーニンや反田を知っているのは、あなたの周りの、似たような価値基準を持った人たちやコミュニティだけである。この前、知り合いの保健体育の先生に話を聞くと「反田恭平…?ああ名前は聞いたことある。なんかコンクールで良い賞取った人だよね?」程度の回答。ちなみに、清塚信也のことも、角野隼斗のことも知らなかった。

本来、流行というのは、全国の老若男女が「ああ分かる」と言える状態の物事を言うはずである。例えばAdoの「うっせぇわ」、瑛人の「香水」、『鬼滅の刃』、「あつまれどうぶつの森」などと聞いて、歌詞やメロディーが口ずさめたり、アニメーションがイメージできたりすれば、流行っていると言えるだろう。では、皆さんショパンの「猫のワルツ」を口ずさめますか?と聞かれたらどうだろう。大半の人は無理である。つまり、クラシック音楽は流行っていないのである。言い方を換えると、クラシック音楽「流行」大作戦に挑戦してきた多くの先人たちは、それを流行らせることが出来なかったのである。


クラシック音楽を聴く人口を増やす


ここで、クラシック音楽で用いる楽器を用いて大バズりを企てたところで、流行ることはないということが分かったと思う。我々が目指すことは、クラシック音楽を全日本の国民の言語にすることではなく、その音楽を聴いて感動して、もう一度聴いてみよう、この音楽をYouTubeで探してみよう、演奏会に聴きに行ってみよう、というクラシック音楽に興味・関心を持つ人を出来るだけ増やすことである。

多くの演奏家たちにより、色々な試みが実践されているが、演奏家たちの努力だけではクラシック音楽は発展しない。あるいは愛好家による一方的な紹介や宣伝だけでは非クラシック音楽視聴者の心にはその思いは刺さらない。

クラシック音楽だけでなく、音楽そのものの発展のためには、演奏家、それを聴く愛好家、音楽を習おうとする学習者、あるいは彼らに教える指導者など、これら全ての人たちがインタラクティブに作用しなければならない。私はその作用を活性化させるために漠然とした夢を抱いているのだが、またいつか書き起こしてみようと思う。


クラシック音楽愛好家には難しい人が多すぎる

なぜこのような文章をまとめようと思ったかと言うと、理由は2つある。1つ目は、クラシック音楽が大好きだからである。割と趣味が多い方の筆者であるが、クラシック音楽は最上位にある。私の生活にクラシック音楽は切り離せない。それくらい大好きである。

2つ目は、同世代の音楽家たちがクラシック音楽発展のために物凄く尽力してくれているからである。特に私が影響を受けた音楽家は反田恭平だ。私と同い年にして、既に日本のクラシック界の重要な立ち位置に居て、クラシック音楽の世界を盛り上げるために様々な趣向を凝らしている。その方法には、クラシック音楽を流行らせるための多くのヒントが隠されているし、実践が試みられていることも数多ある。そんな姿勢にめちゃめちゃ共感したし、私という個人がクラシック音楽の世界に何らかの寄与が出来たら嬉しいと思い、この文章を書いている。

しかし残念なことに、クラシック音楽の愛好家や評論家の中には、賢すぎるあまりに他を寄せ付けないオーラを放っている人も多くいる。これが、クラシック音楽に導入しづらい原因を作っているとも思う。なんとなく敷居が高いと思われてしまう、ということである。まず、正しい知識がないとダメだと思っている愛好家。別に間違った聴き方をしてもいいし、演奏中に寝てもいいと思うわけである。Twitterとかで批評を繰り返す人たちのことを私は「思想が強い」と表現しているが、排他的な価値観は、クラシック音楽の対極にあるはずだと私は考えている。それから、こういう人たちのTwitterや、専門家の著書などの言説は非常に難しい。カタカナと漢字が多いし、本を読んでもよく分からない。他を寄せ付けないのではなく、共感的な言葉を用いながら、文章を書き進めていきたい。


理想的なクラシック音楽導入参考書

このnoteは、

  • クラシック音楽なんて知らない、という人のために、クラシック音楽の何が面白いのかを紹介する。

  • 今クラシック音楽業界ではどんなことが起こっていて、今何がオススメかを知らせる。

  • クラシック愛好家として少しコアな部分の紹介や、考え方を整理して文章に書き起こす。

  • クラシック音楽を聴く人を増やすためにどうすればいいのか?という命題に取り組む。

以上のことを目的にしたい。まずは、自分自身が知らない知見も沢山あるので、いっぱい本を読んで勉強したい。その上で、参考になる部分があれば紹介したいと思う。

個人的には、この28歳の著者(2022年8月現在)による「若すぎるクラシック愛好家による、早すぎるクラシック愛好の手引き」が、クラシック音楽を聴いてみようと思う人たちにとっての初めての参考書となり、電車の中で、あるいはリビングで試し読みしてみたところ、クラシック音楽聴いてみよう!と思えるような手引きになれば幸いだし、ワンチャン書籍化できたら嬉しい。


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