見出し画像

現代短歌のススメ

こんにちは、こんばんは、おはようございます、美里です。
こちらはよく晴れた日曜の朝のニューヨークです。

今日は突然ですが、現代短歌です。(どーん)
本当に突然ですね。笑 私結構好きなんです。
先日の日本帰国の際にも現代短歌の本を一冊購入してニューヨークのアパートに持って帰ってきました。
以前ひょんなことから現代短歌に触れ、面白い!となってから、ちょこちょこと思い出したように読んだりしています。

え、こんなのあり?と私が出会ってびっくりした短歌はこちら。

それじゃあね、君が別れてよかったと思えるように禿げたりするね

佐々木あらら

すごくないですか。なんて言うか、自由でいいんだって言うのもあるけれど、ふふって笑っちゃう、現代人がめちゃくちゃ分かる内容で。
佐々木あららさんの歌は、後ほどもう少しご紹介します。

私は、昔からそれこそ百人一首とか、古典で勉強する歌とか、結構好きだったんですよね。伊勢物語とか…懐かしい…授業でやったの覚えていますか?
東下りの一節。
船に乗っている男たち、ある鳥を見て、これはなんていう鳥かと船頭に聞くと「都鳥」だと言う、そして一句、
「名にし負はばいざこと問はむ都鳥 わが思ふ人はありやなしやと」
(都鳥という名前ならば、都の様子を知っているのだろう、私の大切な人はどうしていますか?)と読んで、それを聞いた船に乗っていた人がこぞって泣いた、という。
私は、あわれだなぁと思いつつ、大の男たちが揃ってそんなにいちいちおいおい泣くか?とどこか冷静に思ってしまう女子高生でした。笑

また俳句とかも結構好きなんですけど、歌を読むためはもちろん、理解するにも結構知識が求められると思うのです。季語とか、どことどこがかかっているとか、どう言う工夫が織り込まれているかとか。
なっちゃん(俳人の夏井いつきさん)がテレビのプレバトとかで解説してくれてやっと理解して、「おぉー!」となる訳です。なっちゃん大好き。

現代短歌は、私たちが日々目にするような事柄や情景をシンプルに歌っているので、すっと現代人の耳に入ってくる。距離が近く共感できるものばかり。ユニークな歌もたくさんあります。

俳句とか短歌とか、あの少ない制限された文字数の中で表現され、それを聞いてありありと情景が浮かんだり、しっとりする気持ちになったり、心を動かされたり…ものすごく高等技術で、本当に本当にすごいと思うのです。(私の語彙力の無さ)

今回は、私の、とっても少ない知識を存分にひけらかしながら、いくつかお気に入りの歌たちを共有させてもらいたいのです。
ピックアップしている歌人さんと歌は完全なるわたくしの独断と偏見ですので、ご了承くださーい!

俵万智

やはりこの人、「サラダ記念日」はめちゃくちゃ有名ですよね。
とはいえ、私はこれが大ブームになった世代より後なのでタイトルだけ知っていて、なぜか吉本ばななの小説か何かだとしばらく思っていたなんて言えない。(なんたる無礼者)

クスッと、ほっこりと、キラキラと。それから胸がじんとなるような美しい歌まで。
今の季節のこちらの歌からご紹介します。

さくら さくら さくら 咲き初め咲き終わりなにもなかったような公園

桜がわぁっと見事に咲いて、そして散って。
時は全てを乗せて、平等にそしてあっさりと、世界はそうして巡っていくんだなぁ。

「スペインに行こうよ」風の坂道を駆けながら言う行こうと思う

躍動感があって、キラキラしていて、走っていく二人の背中と風を感じるようです。

吾をさらいエンジンかけた八月の朝をあなたは覚えているか

「また電話しろよ」「待ってろ」いつもいつも命令形で愛を言う君

オクサンと吾を呼ぶ屋台のおばちゃんを前にしばらくオクサンとなる

東京へ発つ朝母は老けて見ゆこれから会わぬ年月の分

買い物に出かけるように「それじゃあ」と母を残してきた福井駅

最後の2句、私には胸に刺さる。
母を残してニューヨークに帰る時、いつも胸がチリチリ痛む。
なるべく悲しくならないように、ドラマチックにならないように、今晩夕飯にでも帰ってくるような感じで、またね、行ってくるね、とサヨナラを告げる。

岡野 大嗣

冒頭で言った、日本で購入して持ち帰った本は、岡野 大嗣さんの歌集「サイレンと犀」でした。

ハムレタスサンドは床に落ち
パンとレタスとハムとパンに分かれた

私この歌を読んで、天才かよ!って思いました。
全然説明できないんですけど。笑 すごいセンスだなと。伝われー 

ひとりだけ光って見えるワイシャツの父を吐き出す夏の改札

ねるまえに奥歯の奥で今朝食べたうどんの七味息ふきかえす

読んでて七味の味を感じるほど。あるある!

ひとりだけ給食袋つけてないあのこわたしのせがれでしょうか

ここじゃない何処かへ行けばここじゃない何処かがここになるだけだろう

地獄ではフードコートの呼び出しのブザーがずっと鳴ってるらしい

道ばたで死を待ちながら本物の風に初めて会う扇風機

母と目が初めて合ったそのときの心でみんな死ねますように

最後の歌は、すごく大切な歌、心に残りました。


宇都宮敦

だいじょうぶ 急ぐ旅ではないのだし 急いでないし 旅でもないし

茶番好きだよ 麦茶はもっと好き ビールも麦だなんて麦すごいね

夏 耳に光をすかしネコたちは網戸をのぼる やめれ やぶれる

なんか脱力する感じ。笑 でもこの脱力感、人生にすごく必要だと思う。

枡野浩一

好きだった雨、雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君

こんなにもふざけたきょうがある以上どんなあすでもありうるだろう

調べてたら、彼の歌がプリントされたTシャツとか売ってるらしい、ちょっと欲しい。

佐々木あらら

冒頭でご紹介した佐々木あららさん、エロ歌人とも呼ばれている。
セックスをテーマにしていたり、駄目男感?溢れる言葉だったり。笑

夜が明ける 神さま僕はあと幾度このおっぱいをもめるのでしょう

ぜんぶ好き以外出口のない問いに 「おっぱいです」で勝負して散れ

もうちょっとしたらやむよとひきとめてきみのおっぱいごしに見る雪

なんかおっぱいだらけになっちゃった。爆
彼の作品、おっぱい以外の歌もあります。笑

鈴木晴香

君の見たどんな景色も結局はわたしひとりが見ていたものだ

駅からの道は駅までの道になる言えないことを言えないままで

女性らしく、そしてしっとりと湿度を感じさせる歌たちです。

堂園昌彦

秋茄子を両手に乗せて光らせて どうして死ぬんだろう僕たちは

春の船、それからひかり溜め込んでゆっくり出航する夏の船

夕暮れが日暮れに変わる一瞬のあなたの薔薇色のあばら骨

しみじみと、じわじわと染みてくる歌たち。

日本の情緒的なもののカタマリと、欠乏感

以上7名の歌人の作品を紹介しました。

しかしこの記事、私がむかーしノートに書き写していた短歌たちを見直したことをきっかけに書いていますが、その時私がどこでこの歌たちを見つけて書き写したのか分からないし、結構作品が一箇所に集まっていないので歌人の作品を探すのが大変。本が出版されていれば探しやすいんですけど、結構みなさん自費出版で発表したり、雑誌やツイッターで掲載したりとかみたい?な感じです。

私は日本を離れてニューヨークで現在暮らしますが、日本の中で培った私の内の「情緒」みたいなものが欠乏してくると感じます。
ここはやはり日本とは空気が違う、音が違う、匂いが違う、色が違う。
日本の湿気を含んだ空気や、匂いや風を味わいたいと思うことが増えてきました。こういった日本の言葉たち、音楽、アートなどは、私にまたそれを与えてくれる。
日本を離れて5年目にしてやっと分かってきたことです。

歌は、他の言語に訳しようがない、訳したとて、きっと器だけ同じで中身は違うものとなっているでしょう。英語の俳句なるものもありますが、575にも聞こえないし、私的には俳句とは全く違うもの。笑 
歌は究極に日本の心が現れたものだと私は感じています。

私は知識が浅いので、紹介するのもおこがましいほどですが、
もし、触れたことがないと言う方がいたら、知ってもらえるきっかけとなったら嬉しいです。

それから私に、歌人や歌、古典でも現代でも、オススメを教えていただけると嬉しいです!切望しているので。笑

ぜひ!!
教えて!!
ぜひ!!!プリーズ!!

そんな叫びの中今回は終わりたいと思います。

ぜひ!!!!!

ニューヨークから愛を込めて
美里


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?