岡根谷実里 | 世界の台所探検家

世界各地の家庭の台所を訪れて一緒に料理をし、料理から見える社会文化背景を伝えています。学校で出張授業したりも。訪問国60カ国以上。著書に「世界の台所探検 料理から暮らしと社会がみえる(青幻舎)」 過去記事はこちら:https://medium.com/@misatookaneya

岡根谷実里 | 世界の台所探検家

世界各地の家庭の台所を訪れて一緒に料理をし、料理から見える社会文化背景を伝えています。学校で出張授業したりも。訪問国60カ国以上。著書に「世界の台所探検 料理から暮らしと社会がみえる(青幻舎)」 過去記事はこちら:https://medium.com/@misatookaneya

    最近の記事

    インドネシア社食の台所と、料理のスモールビジネス

    ジャワ島東部のスラバヤ郊外、地元企業の社食の台所で、一緒に料理させてもらった。 受け入れてくださったのは、化学分析企業のAngler Biochemlab PT。インドネシアの食品や化学検査を担う有力企業だ。従業員130人分のごはんを作るのは、チチさんと助手の女の子。生のスパイスで煮た鶏を揚げて、豆腐とテンペも揚げて、ジャックフルーツを煮たりと、計5品ほどを作る。 チチは元々料理の仕事をしていたわけではなく、専業主婦だった。地元に戻るために探した仕事が、たまたまここでの調

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      • お手伝いさんたちの台所。仕事の料理とYouTube、お菓子作り

        ジャワ島東部、スラバヤの大きなおうちに滞在した。家の中にも家族の台所はあるけれど、扉を一枚出たところにはお手伝いさんたちが料理の支度をする台所がある。料理をするのは、25歳のエンダンちゃん。 朝7時、家にやってくる野菜売り(tukang sayur)から買い物をして、食事の支度が始まる。 今日の料理は、牛スープ(soto daging)や空芯菜炒めなどなど。にんにくや生姜やナッツなどたくさんの種類の香辛料を使うのだけど、さすが手慣れているなあと思ったら「YouTubeで習

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        • 75のお供えと、近年神々が"ふえる"バリの台所

          バリの台所の朝は早い。ご飯を炊き、料理をし、家のあちらこちらにお供えをする。 ヒンドゥー教と土着のアニミズム信仰が混じった"バリヒンドゥー"が信仰されるこの土地では、朝のお供えが重要な習慣だ。八百万の神々に、ご飯やお花を差し上げる。 お世話になった家庭は、三世代同居の5人家族だ。伝統が強く息づく地域に暮らす。 あたりがまだ暗い5時台、市場にでかける。朝食の支度が始まるのは6時前。ご飯炊きから始まる。この家ではガスコンロも使うけれど、米は薪の火で炊く。そのほうがずっとおい

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          • 神々の島バリの台所、モダンライフと伝統の間で

            インドネシアのバリは、世界中のサーファーが集うリゾートだと思っていた。しかし実はこの土地、「神々の島」という異名も持つ。 イスラム教徒が9割を占めるこの国で、例外的にヒンドゥー教が信仰されていて、食文化も独特。ビーチを一歩離れて住区に入ると、何やら神聖な雰囲気が漂っている。 交差点には、小さなお供えの台。家の敷地内に、お寺。「一つの家に一つの寺があるんだよ。家の寺の他に、村の寺、パブリックな寺もね」と教わった。本当に寺だらけだ(正確には寺という概念とは少し違うのだがとにかく

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            北欧フィンランド料理、「おいしさ」は心地よさ

            最初に訪れたのは、ヘルシンキからバスで3時間半ほど離れた人口2万人のまちJämsäの家族。妻カイエと夫のユホ、それに11歳のお兄ちゃんと8歳の妹の4人暮らしだ。 フィンランドという国は、日本とほぼ同じ広さの国土に人口500万人しか住んでいないから、単純計算で人口密度20分の1。とにかく土地がゆったりしている。この家族の家も、平屋の一戸建てのまわりに芝生の庭が広がり、トランポリンとツリーハウスとウッドデッキがある。庭の向こうはそのまま森につながっていて、少し歩けば湖が広がってい

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            ベトナム菜食の意外な10の事実 〜オリエンタルベジタリアンと言っても

            東アジアの仏教に根ざすアジア菜食は「オリエンタルベジタリアン」と呼ばれる。中国・台湾・ベトナムの精進料理とも言うことができるだろうか。根本の原則は、動物を苦しめたり殺さないこと。ゆえに殺生を排し、肉や魚を食べない。加えて、"五葷"とよばれるネギの仲間の臭気の強い野菜を避けるなどの特徴がある。 …と聞いていたけれど、実際現地の寺で生活していると、耳学問の知識と異なっていたり、現代社会の中での変化を感じることも多々あった。 1. 寺の菜食と家の菜食は基準が異なるにんにくや玉ねぎ

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            ベトナム仏教徒は"ときどきヴィーガン"。寺の台所のヴィーガン料理とは?

            ベトナムには、肉そっくりのヴィーガン料理が多く存在する。まちの精進料理レストランに入ると、牛肉炒めや鴨のローストといったメニューが目につく。これがなかなか完成度が高い。 尼さんに連れて行ってもらったおしゃれカフェで食べたBún riêu(蟹と豚のトマトスープ麺)は、精進ハムや野菜が具沢山。食べ進めるうち「カニの身が出てきた!」と思ったら、トマトスープの絡んだおぼろ豆腐だった。いちいち驚く私を見て尼さんたちはニヤニヤしている。見た目と味付けで案外その気になるもので、騙されるの

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            ベトナム寺院の代替肉は"肉への未練"ではなく、僧からの贈り物

            てりってりのチャーシュー。甘辛い香りが立ち上る。鍋をゆすると五香粉の香りがふわっと香り、食欲をそそる。かぶりついたらじゅわっと滲み出るだろうか。肉汁とタレが絡んだ味を想像するだけで、もう白飯がほしくなってきてしまう。 ところが、これ。100%植物性のお肉だ。ベトナムの尼さんがお寺で作った精進料理なのだ。 肉を食べない僧が、どうしてわざわざ「肉のようなもの」を作るのだろうか。 ・・・ ベトナムの尼寺に、10日ほど滞在した。仏教のもとに生まれた成立したヴィーガンと代替肉につい

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            『世界の市場』の絵本が出ます!翻訳の裏話を少し。

            本当に素敵な絵本なんです。ヨーロッパで生まれて、この度日本語版が出版されます。私は翻訳をさせていただきました。 日本語版は原書よりひと回り小さいです。 この絵本は、1月から12月まで、毎月違う国の市場を訪れるというコンセプトで構成されています。 とにかくイラストが精細で、眺めれば市場の活気が伝わってきて、じっと見つめれば肉の繊維の一本まで見えてくるようなんです。 翻訳のお話をいただいた時、原書を手にして目が離せなくなったのを思い出します。何回原稿を見ても、いまだに毎回、小

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            なぜ人は"肉のようなもの"を作るのか〜アジア菜食の歴史から代替肉を考える

            どうして、豆腐やがんもどきではなく、高度に加工した肉のような豆をわざわざ作る/食べるのだろうーー。そんな疑問が原点だった。 ここ数年、ヴィーガン・プラントベース熱の高まりは凄まじい。数年前まで、ベジタリアンはまだしもヴィーガンなどほとんど認知されていない言葉だったのに、最近はスーパーに行ってもコンビニに行っても、動物性食品不使用を謳う食品やお菓子が棚に並ぶ。オーツミルクやアーモンドミルクといった植物ミルク市場、大豆やえんどう豆を使用した植物肉市場も活況だ。 近年のヴィーガ

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            "肉の代替品"じゃない系プラントベースフード食べ比べ【食文化と調べ物#3】

            シェアオフィスの仲間たちと、気になってる商品を持ち寄って、食べ比べをした。 不二精油の技術を用いてお豆腐の相模屋食料から発売されたBEYOND TOFUシリーズ、黄えんどう豆100%のZENBヌードルやオーガニックライスパイスタ、日本では珍しい種類のオーツミルク、他豆製品諸々。今話題のプラントベースフードの数々が集まった。ただし代替肉以外。 この日のメンバー4人は皆、「肉でない素材でいかに肉らしいものを作れるかを競うより、そのものとしておいしさを目指したい」という考えを持っ

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            食文化と調べ物の日記#2 フライドポテト、スイートポテト、ソフトクリームの共通点

            4/11(月)~17(日) きみも日本語だったのか…私の今住んでいるシェアハウスは、日本人と外国人が半々で住んでいる。日々会話をする中で、自分があたりまえだと思っていたことが思い込みだったことにしょっちゅう気付かされる。言葉もそうだ。 今週は、英語と日本語の狭間で頭を悩ます体験をたくさんした。 フライドポテトはフレンチフライ?チップス? じゃがいもが手元にたくさんあったので、ひたすらフライドポテトを作って「フライドポテト、みんな食べて!」と英語でメモを添えて置いておいた。

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            食文化と調べ物の日記 #1

            どうでもいいことに疑問を抱くのが得意です。趣味は、そのどうでもいいことについて調べることです。 日々ご飯を食べたり料理をしたり道を歩いている時に、幾度となく「なんで?」に遭遇し、なんだかんだ常に調べている気がします。でも、ひとしきり調べると満足して忘れるので、少しでも蓄積して何かの役に立つよう、日々の疑問や調べたことを綴っていきたいと思いたちました。 ただ、自分でも呆れるほど継続が苦手で、ひめくりカレンダーすら1月3日のままずっと放置している人間なので、どこまで続けられる

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            焼きたてのトルティーヤと、とうもろこし問題とアメリカ

            メキシコの家庭をめぐり三週間を過ごしたが、「一番おいしかったもの何?」と聞かれたら、迷わず「田舎のコマルで焼かれた焼き立てのトルティーヤ!」と即答する。 コマルはメキシコの台所の伝統的な道具で、かまどにのせるいわゆる鉄板(陶板のことも)。田舎に行くと、家庭の台所やトルティーヤ屋さんに堂々と座っている。ミチョアカン州で出会った女性は、自宅のコマルでトルティーヤを手焼きして売っていた。 風船のように膨らんで焼き上がったのを受け取り、火傷しそうになりながら畳んでかぶりつく。香ば

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            世界一のアボカド大国で、アボカドが買えない

            「メキシコはアボカドの大生産国なのに、最近アボカドがどんどん値上がりしていて...」 そう教えてくれたのは、メキシコ州に住むルーシー母さん。旦那さんが買ってきた小粒のアボカドに眉を顰める。 アボカドは食卓で料理をおいしくする「薬味」ルーシー母さんは、夫と20歳前後の娘息子と4人で暮らしている。 この日の昼食は、大粒のとうもろこしに豚の頭などを煮込む「ポソレ」。ルーシー母さんはこの料理は大量に作る方がおいしいと考えていて、とうもろこし4キロと頭1つというスケールだ。 この料

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            紀元前からの歴史を持つ、メキシコのとうもろこし食文化と伝統農法ミルパ

            2021年10月から11月にかけて、3週間ほどメキシコの台所探検に出かけていた。振り返って特に印象的なことを何本か記事にしたいと思う。 メキシコの食といったら、真っ先に思い浮かぶのはタコスではないだろうか。 メキシコシティを歩いていると、朝から晩まで様々なタコス屋台が路上に並び、もうもうとする煙が立つ鉄板の前でタコスにかぶりつく老若男女がいる。タコス屋台は、この街の個性の一つになっている。 しかし現地の人に話を聞くと、屋台タコスは必ずしも日常食ではなく、月に何度か行く程度

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