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(48)スポーツの日に想う

朝窓から覗くと大きなキュウリが垂れ下がっていたので、染め作業を中断して慌てて取りに行ったついでに、紫式部の紫にならないまだ緑色の実がついている枝と、花の咲いたレモンバームも摘んできた。あんな蒸し暑い庭で元気なのに、活けてみたらとても涼しげに見えて、緑って不思議だなと思う。

夕方仕事が片付かないままバイトへ行ったので、帰宅して猫のごはんをやるとすぐに、染液に浸けて冷ましておいた糸を洗って、作りかけのピーナッツケーキを仕上げしていたら日付けを越えてしまった。

オリンピックの開会式があったはずの日。祖父をオリンピックと結びつけて考えたことがなかったのに、開かれなかったオリンピックだからなのか、ベルリンオリンピックに出られなかった祖父のことを想っていた。

毎年夏に祖父の家にいる間、祖父はいつも甲子園と相撲を楽しみにしていた。格闘技の選手だった祖父は、相撲はとても真剣に見ていた。オリンピックには出られず、戦地へ行き、帰国後はコーチをしていたらしいと最近知った。競技には晩年まで深く関わりがあったから、選手の試合について色々なところへ出かけていたけれど、私はそれは祖父の仕事のひとつで、そういったことは全て別世界のように捉えていて、あんまり真面目に話も聞いていなかった。可愛がってもらってばかりの、バカな孫だったなあと我ながら呆れて、もっと話を聞きたかったなとようやく思った。

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