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精神疾患もちの私が、親になる上で気をつけていること

「精神疾患のあるものは親になるべきなのだろうか。」
 「精神疾患をもつ親の元に生まれた子どもは壮絶な生活を送る。」

そんな言葉を耳にしたことはありますか?

きっと、この言葉を耳にしたことがあったり、心に残っている方は、「精神疾患」や「精神疾患をもつ親」というワードに対してのアンテナが鋭くなっている方だと思います。

医療や福祉関係者の方もいらっしゃると思いますが、当事者の方が多いのではないでしょうか。

私も当事者です。精神疾患をもちながら、子育てをしています。

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今日は、子育て中や、これから子どもが欲しいと思っている、精神疾患もちの仲間に向けて、私が親になる上で気をつけてきたことを書きたいと思います。

1)自己紹介

私は、双極性障害とパニック障害という疾患を約10年ほど患っています。
 
パニック発作が出た時は、電車やバスを途中下車したり、
躁の時は、やりたいことが増えておしゃべりで衝動的になってしまったり、
鬱の時は、寝込んで何もできなくなったり、
混合状態の時は、イライラして些細なことで怒りやすくなります。

「自分のことさえままならないようなこんな状態で、子どもなんて育てられるのか。」
そんな不安を抱えながらも、親になり、もうすぐ6年。
今は2人の子どもを育てながら写真家として活動しています。

写真家ですから、精神の専門家でもなんでもありません。
以前は保健室の先生をしていましたから、我が子以外にも、「精神疾患をもつ親の子ども」に接したことはありますが、あくまで、援助者ではなく当事者として、これを書いています。

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2人の子どもを育てる写真家です。



2)親になる前のこと

精神疾患は、「完治」を目指すのではなく、うまくコントロールして付き合っていける「寛解」の状態を目指すといいと言われています。

 はじめは私も、薬を飲む必要がなくなる「完治」の状態での妊娠を目指していましたが、辞めました。安定期になったら薬を飲みながら妊娠を継続する方針に変えました。(後に気づきましたが、完治を目指すこと自体が「完璧主義」でかたくなな状態だったんですよね。)

そんなこんなで、目標を変えて、「寛解」しておくか、ある程度病気をコントロールできるようになっていようと思いました。
この状態になれば、不安はかなり少なくなりますし、これから起きる「子育て」という予測不能の体験に向けてやっていけるかもと前向きな気持ちも生まれて来ます。

寛解についてですが、精神疾患が良くなっていく過程で、体感として「ぐんっ!」と大きく回復するタイミングが2回あると思います。

一つは「合う薬を見つける」ことができた時です。
精神疾患は脳の病気ですので、体の病気と同じで、気合いでは治りません。
むしろ、気合いでは悪化します。 癌が乾布摩擦では消滅しないように、精神疾患も叱咤激励では回復はしません。 専門の医療機関にかかり、治療のために薬を飲むことが大切です。

合う薬が見つかるまでは時間がかかる場合がありますが、見つかると、
嘘のようにスーッと心と体が軽くなるタイミングがあります。

信頼できる医療機関を見つけて、医師と一緒にあなたに合う薬を見つけてください。

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回復の鍵は、信頼できる医師と、合う薬。




もう一つは「病識を正しくもつ」ことができた時です。自分が病気であるという自覚を正しくもってください。

これは、私としてはこれはかなり重要なことではないかと思っています。

「あ、治ったかも。もう薬いらないかも。」とか、「そもそも私、病気じゃなかったのかも。」なんて思って油断した後は、大抵薬を飲むのをサボったりして、悪化します。そして、自分の体調の些細な変化の観察がおろそかになり、悪化します。

ネガティブ全開で落ち込む、「自分は病気なんだ。。。」ではなく、感情を入れずに「自分はB型だし。」くらいのテンションで、「自分は精神疾患があるんだ。」と受け入れていくことが、寛解の大きなポイントなのです。

よくいう「病気の自分を受け入れる。」ことって、言い換えると、「必要以上に悲観的にも楽観的にもならず、自分の性質の一つとして病気をとらえる。」ことなのかと思います。

「太りやすいのよね。」
「Tゾーンがテカりやすいの。」
「胃腸が弱くて。」
「花粉症つらい。」
「躁鬱厄介。」
くらいのテンションで精神疾患の自分を語れたらこっちのものだと思います。

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自分には病気があることを自覚していくと、
症状も落ち着いてきました。





3)親になってからのこと(自分に対して)

「案ずるより産むが易し。」なんていいますが、信じないでください。案ずる方が簡単です。産むのは大変です。

産んでからは、体はボロボロ、ホルモンバランスめちゃくちゃ、睡眠不足という三重苦がやって来ます。精神疾患がない人でも精神疾患になりやすい時期です。悪化は覚悟しておいてください。

脅したいのではありません。それくらい大変なんだから、悪化しても想定内なんだと思ってほしいと伝えたいのです。

だから、「必要以上に対策を立てておこう!」とも伝えたいです。

旦那さんの育休。
里帰りの体制。
ファミリーサポート、産褥シッター、産褥入院の手配。
上の子がいる方は保育園の手続き、シッターさんの打ち合わせ。
宅配弁当、ネットスーパー、家事代行。などなど。

まずは市町村に問い合わせてみてください。お住いの地域によっては格安の家事代行や産褥サービスがあるかもしれません。

完璧に1人でやろうとしないでください。周りにたくさん依存してください。あらかじめ依存できるところを見つけておくことが鍵です。

ただし、「依存先は複数持っておいて」ください。

旦那さん、ご実家、友人、公的サービス、民間サービス、医療機関などなど。 多ければ多いほど、一つにかかる重量が軽くなり、周りがあなたを支えやすくなります。



4)親になってからのこと(子どもに対して)

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「いい親」「健康な親」を目指さず、等身大の自分でいようと思っています。

完璧な親には、病気じゃなくてもなれそうにもありません。完璧を目指して心が折れてきた人生だったので、親としても、できないこともあるし、「大人だって失敗するんだ。だからあなただってどんどん失敗していい。」と身も持って伝えるぞ!くらいの気持ちで臨んでいます。

これだけは気をつけていること。それは、病気のことを子どもに説明することです。過度な心配をさせたくないからです。

お母さんには病気がある。こんな病気。うつのこと、そうのこと、発作のこと。

特に気をつけて伝えているのは、「もちろんあなたのせいじゃない。誰のせいでもなく、たまたま病気になった。」ということです。

「お母さんだけじゃなく100人中2人から3人はこの病気で、お母さんはそのうちの1人。ゆっくり休んで薬を飲めば良くなって、これからも元気で一緒にいられるよ。」と、伝えています。

いつか、母の病気のことや、気をつけていること、そして愛する我が子に伝えたいことをまとめて絵本か漫画にしたいです。作品が完成した暁には、ぜひ同じ病を持つ親御さんは、お子さんに読んであげてください。その日を目指して、作品をつくります。

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いつも私に笑顔をくれる娘の笑顔が曇らぬように病気の説明をしています。




5)「ごめんね。」2割、「ありがとう。」8割。

腕によりをかけて手の込んだご飯を作れない時もあります。(←その方が多い)
そんな時は、「お母さんが作った(←チンしただけの場合もあり)ご飯を食べてくれてありがとう。嬉しいよ。」と伝えます。

寝込んでしまって満足に遊んであげられない時もあります。
そんな時は、「休ませてくれてありがとう。おかげで少し元気になったよ。」と伝えます。

些細なことで過度に叱ってしまった時もあります。
そんな時は、「さっきは怒りすぎてごめんね。お母さんイライラしていて、大きな声で言っちゃったね。〇〇には、そんな大きな声で言わなくても伝わったのにね。」と伝えます。

愛する我が子に何もしてあげられてないなと感じる時もあります。
そんな時は、「〇〇大好き!〇〇を産んでよかった。毎日幸せだよ。ありがとう。」と伝えて抱きしめます。

ありがとうは、ありがとう。
ごめんねも、ありがとう。
めちゃくちゃごめんは、ごめんなさい。

我が子にも、私を支えてくれる方々にも、ありがとう8割、ごめんね2割くらいの割合で、毎日の気持ちを伝えるようにしています。

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産まれてきてくれて本当にありがとう。
毎日幸せをありがとう。
大好きだよ!



子どもをもつことだけが幸せではないと思います。この文章は、「子どもをもつといいよ。」いう意味で書いたわけではありません。

ただ、精神疾患をもつ私が、気をつけていることが、同じように精神疾患をもつ人たちの役に立ったらいいなと思って書くことにしました。

そして、不安だった以前の私のために。

これからも子育てをしていく未来の私のために。

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手を繋いだり、繋いでもらったりしながら。
育児したり、育自したりしながら。

精神病みがちな私ですが、我が子の周りは「ありがとう」であふれています。



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