📚小説「青い鳥」を読んで
青い鳥を読み終わった。1日で一気に読み進めた。ぼろぼろ泣きながら読んだ。
「ムラウチ先生はうまく喋れないから、大事なことしか言わない。」
ひどい吃音のある国語の非常勤講師ムラウチ先生が、心にモヤモヤや違和感を抱えたさまざまな生徒にそっと寄り添う短編集。
短編集だけど、ムラウチ先生がずっと出てくることに変わりはなくて、変わって行くのは生徒たち。初めの1話を読んだ段階で、短編集と気づき、もうここで、ムラウチ先生とお別れなのは受け入れられない。。と思ったほどムラウチ先生の魅力に引き込まれていった。
と、同時に登場する思春期真っ只中の生徒の心情は、経験がないことなのになんだかわかる気がするから、ムラウチ先生の言葉が心にグサグサと痛いくらいに入ってきた。
みんなと同じじゃないことを感じ始めるのに、それを言うことが出来ないジレンマでもないもどかしさでもない、言うことが正義と思ってる、だけど言うのも怖い、一言で表せれない感情を、掬い上げてくれる機会がない、思春期は。と、思う。
いろんな原因で傷ついた心の健康的な修復方法は、誰も教えてくれないし、子どもは自ら実践出来るはずがなくて、不器用な方法でしか前に進めない子どもたちに、手を差し伸べることが出来るムラウチ先生の存在は、他のどんなスラスラ話せる先生たちよりも、重要な役割を担っている。
ムラウチ先生の言った言葉で、とても印象的だったこと。
「嘘は、悪いことじゃなくて、寂しいことなんですよ。」
嘘をつくのはその子がひとりぼっちになりたくないから。嘘をつかなければ、ひとりぼっちになってしまうから。
だから、ムラウチ先生は、騙される。嘘をつかなきゃいけない子は寂しい思いをしているから、そばにいる。
それを見て涙がいっぱい出た。嘘をつく人がさみしい思いをしていたことを知ったからなのか、寄り添えなかった悔しさみたいなのか、わからなかったけど、とにかく泣いた。そして、嘘に対するこんなにも寛大な受け取り方があるんだと知って、衝撃的だった。そして、これは本当のことだなと思った。というか、わたしはそう解釈したいな、と思った。
最後にムラウチ先生の言った言葉で個人的にとても気に入ってる言葉を紹介したい。
「俺は理科の先生じゃないから、そういうこと、真剣に信じてるんだ。」
科学的根拠がなくても、科学的根拠で既に示されていたとしても、そうじゃないこともあるって信じたいとき、本当にそう信じているとき、そして信じた通りになったとき、そんな場面がムラウチ先生にはいくつかあったんだろうな。と思った。
わたしはもう大人だけど、ムラウチ先生の様な大人になりたい。人の痛みがわかって、寄り添えて、信じられる人に。
本当にムラウチ先生に会ったかのような、読む人は思春期のあの頃に戻ってしまうような、そんな不思議な本だった。
今日は悲しいことがあったから、いっぱい泣きたい、そんな気分の時に是非読んでほしい一冊です。
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