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親友Robin

小学3年生の夏から中学3年の冬までカナダで暮らしていた。その時に最初に友達になったRobinとは帰国してもしばらく文通をしていた。エアメールで送っても手紙が届くのには10日から2週間かかる。毎日往復4時間かけて通学していた私は平日は日々の宿題などをこなすのが精一杯。週末はバタンキューで次第に手紙も書かなくなっていた。

時は流れ、大学4年生か社会人になった頃、久しぶりに彼女から手紙が届いた。そこには結婚して二人の女の子がいると書かれていた。20代前半で二児の母親になっていたとはびっくり!当時の自分には家庭に入って家事育児に専念することなんて想像できないほどまだまだお子ちゃまだったから。お子さんは女の子二人と書いてあったので、お祝いのメッセージに近況を書き添えた手紙と一緒に動物のアップリケを施した冬用のベストを2枚送った。欧米にはあまりないデザインだったらしく気に入ってもらえたようだった。

その後またしばらく連絡は途絶えた。今から35年程前のやり取りは電話か手紙くらいしかなかったが、国際電話は料金は高いし、手紙は日数がかかる。またまた年月は流れ、インターネット時代到来。一般家庭にもパソコンが普及して携帯電話もどんどん軽量化、小型化してあれよあれよという間に手元に携帯電話、そしてスマホ(子育てママにはポケベルは縁がなかった!)。その後何年が経ち、まだちゃんと機能も把握できていなかったが時代の流れについて行こうとSNSを始めてみた。2012年、Facebookを訳も分からず適当に設定して使用開始。2015年のある日MessengerとFacebookが連動していることを知った。届いていたメッセージを見てみるとそこには懐かしい名前があった。Robinからのメッセージ。しかも8か月も前の。"Are you the Misako that was my best friend in Montreal, Canada, form grade 4 when you came from Japan?" すぐに友だちリクエストを承認して会話が始まった。お互いの近況を報告し合う中で知ったこと:10人の子どもの母親になっている。一週間後に長女(35)がハイチで結婚式を挙げること。最年少の子どもが13歳だということ。三男が結婚していて孫が2人いてもうすぐ3人目が生まれること。私がやっと見つかったことに大喜びしてご主人に知らせたら「あの可愛いベストを送ってくれた友だちだね」とすぐに言ったとか。そんな何十年も前のこと覚えていてくれるなんて…心優しい人たちだ!

彼女のFacebook投稿を見ると大学の階段教室のようなところで講義をしている写真があった。大学の先生なのか?何を教えているんだろう?そういえば仕事については何も聞いていなかった。それは実は彼女が10人の子どもたちを自分で教育した経験を語る講演会でレクチャーしている写真だった。今時10人子どもを産むことだけでも凄いことなのに、その上その子どもたちを自分で教育するって!あのRobin が!?と驚きの連続だった。その講演会の聴講希望者は多く、中に入れなかった人も多かったようだった。講演はかなり好評で、参加者から本を書いてほしい、書くべきとの意見が相次ぎ、自費出版に踏み切ったようだ。かくして2017年4月、ホームスクーリングの手引書 ともいうべき”Stress-Free Homeschooling: Getting It All Done & Enjoying It!" という本が11人目の子どもとして誕生した!

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Stress-Free Homeschooling by Robin Gilman is a treasure trove of practical tips to help you successfully educate your children at home, while avoiding unnecessary stress.

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なんでホームスクーリング始めようとしたの?と不仕付けながら尋ねてみた。そしたら当時の気持ちをメッセージとして書いてくれた。「良い家庭、良い結婚生活、良い子育てについて語るあるラジオ番組をご主人が聴いていて、その中でホームスクーリングについて知り、Robinに提案してきたそうだ。なんでこんなことわざわざする必要があるんだろうという思いがあったけれど、時を同じくして2人の友だちがホームスクーリングをしようとしていたことを知った。次第に興味を持ち始め、本を読み勉強していると、ホームスクーリングをするべき理由が次々とみつかった」と。

「子どもの成長は一人ひとり違う。例えば肉体や感情の成長、学習能力も一人ひとりそれぞれのペースがあり、年齢で区切れるように一律ではない。私の子どもたちの場合、一般的に言われているよりも遅く乳歯が生え始め、抜けるのも遅く、永久歯に生え変わるのも遅かった。思春期も他の子よりも遅かった。歩き始めは平均的だったが、発話は遅い子もいた。でもその子たちは話し始めると、短期間でとても上手に話せるようになり、あっという間に他の子に追いついた。学習能力も同じこと。何人かの子はとても早く読めるようになったけれど、何人かはゆっくりだった。それぞれにreadiness level(学習する準備の度合い)に違いがあるので、早く読めるように急き立てるのではなく、それぞれの適応能力に沿った学習を心がけることができた。」

「ホームスクーリングの良い点は他にもある。子どもたちは少人数での学習、例えば1対1、1対2、や1対4で学習した場合、子どもたちの理解力に合わせて教えるので理解する速度が早まり、勉強の時間を短縮することができる。もちろん、理解できない、できていない子には別な角度からアプローチして理解しやすいように工夫する。そんな細やかな対応ができるのもホームスクーリングだからこそ。早く勉強が終わった子は学んだことの中から興味を持ったことをさらに踏み込んで調べる時間に使うことができる。そうなるともう親の手助けも必要なくなり一人でどんどん学習していくようになる。」

「日本ではどうか分からないけれど、同級生間のプレッシャーが子どもたちに大きくのしかかっているのが今のカナダでの学校教育。ホームスクーリングをすることで親子間や兄弟同士の繋がりもとても強くなっていると感じる。」と説明してくれた。

「それに、神や他者への愛と敬意といったことを親から子どもたちへ伝えることができる。こんな当たり前のことを今の学校では教えてくれない。今カナダはジェンダーに関してかなり狂気じみた状況で、問題になっているのはこんなこと:ある女児が自分は男子だと決めた日からその女児のことを”He"と言わなければならず、男児のように扱わなければならない。先生であろうが友だちであろうが親でさえもそれを認めなければならず、もしその女児の申し出を受け入れなければ先生は職を失い、親も親権を無くすことにすらなり得る。男児が女子だと決めた場合も同じ。申し出た男児を女子のように扱わなければならない。

ホームスクーリングは簡単なことではなかったけれど遣り甲斐はあった。私は心配性ではないので構えることなく楽しんで取り組むことができた(もちろん100%そうだったという訳ではないけれど)。」

ホームスクーリングの過程を終えた後の子どもたちのその後も聞いてみた。
「息子の一人は最後の年を私立学校で過ごして卒業し、数年仕事をした後大学に入学。そこで優秀な成績を修めたのでそれ以降はいい仕事に就くことができ、今はカナダの政治家のスピーチ原稿を書く仕事をしている。もう一人の息子は10年生から12年生(日本の高校に相当する3年間)ハイスクールに通い大学入学の奨学金を得て学士、修士の資格を取ってカナダ議会で仕事をしている。間もなく世界中を回って大学生に講義をする新しい仕事に就く予定。また別の息子はハイスクールまでホームスクーリングで学び、最終の年に事業を起こし、既に6,7年経っているけれど、今では従業員を何人か抱える会社に成長している。一人の娘はダンススタジオを経営し、もう一人の26歳の娘はプロのバレエダンサーで米国のカンパニーに入団していたが、この度離団を決意して帰国。新たな仕事を模索中。長女はハイチのNGOで何年も仕事をしていてる。どの子もほとんど学校に通ったことがないにもかかわらず、成人した子どもたちはどの子もとても尊敬され慕われる大人に成長している。

私の友だちは4人の子どもをハイスクールまでホームスクーリングで育て、2人の息子は大学の医学部に進学し、今は医者に。一人の娘は大学の学士過程を終了し、今は弁護士になるべく勉強を続けている。もう一人の娘は飛び級で一年早く大学に入った。

私がホームスクーリングを始めた頃はホームスクーリングで育った者を受け入れたがらなかった。でもホームスクーリングを経て入学する者の方が一般の教育を学校で受けた者よりも遥かに優秀だということに大学側が気づき、今となってはホームスクーリングを経た者の入学を喜んで受け入れている。」という、ある意味社会現象を巻き起こした先駆的存在だったのだ。



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