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京都暮らしの春巡り。春を先取りする、長徳寺のおかめ桜

京都暮らしの春巡り。京都暮らし2年目の私が、大好きな京都で過ごす春の美しさを記録として残しておくnoteです。こちらのnoteに続き、第2弾は一足早い春の訪れを知らせてくれる、長徳寺のおかめ桜について。

京都の街で、春の訪れをひっそりと知らせてくれる場所

3月中旬にもなるのに、雨が降ったり気温が10度近く下がったり、100%の気持ちで「春が来た!」と言えない気候が続く。まだ真冬に着ていたコートとマフラーは欠かせないし、長時間の外出は厳しい。本当に来週には桜が満開になるのだろうか、と枯れた桜の木を眺めながら少し不安に思う。

そんな気候が続く中でも、晴れたわずかな日を逃すまいと、私は散歩に出かける。大好きな街、大好きな春の季節、大好きな晴れた空。私だけの大好きを集めるために、久しぶりの晴れだから、少し遠くへ出かけよう。ついでに到底来るとは思えない、春の予感を感じさせてくれるものに出会いに行こう。

そう思って訪れたのは、出町柳駅すぐの場所にある長徳寺。京都の桜のなかでも、早めの3月上旬から中旬にかけて開花する「おかめ桜」という桜が咲くことで有名な場所。境内は非公開の寺院であるものの、おかめ桜は山門前に咲くので、気軽に見ることができる。

丸太町から出町柳まで鴨川を散歩して、橋を渡っている最中に、遠くピンクに彩られた場所を既に見つけた。橋の反対側からも見られるほど、周りからは浮いていた、華やかな濃いピンク色。居ても立っても居られなくなって、小走りでピンクのありかへ向かう。

近づくと、まるでそこだけ勘違いをして春になってしまったかのような、場違いなピンクの世界が広がっていた。鴨川沿いにある桜の木はまだ枯れ木なのに。長徳寺のおかめ桜が咲いているところだけ、ただただピンク色。春を先取りしたかのような、春の始まりを告げてくれるような、それはもうきれいな景色だった。

青い空と濃いピンクのコントラスト、山門のしっとりとした雰囲気を背景に咲き誇る姿、地蔵堂のガラス面に映るどこか懐かしく遠い日を思い出すかのような景色。たった1つの景色であっても、見方を変えるだけで、感じ方が変わる。きれい。懐かしい。春だ。切ない。あらゆる感情が渦巻いて、その入り混じった感情こそが春だ、と私に改めて感じさせてくれる。

なんだかふと、きのこ帝国の「桜が咲く前に」が頭で再生された。一面に広がる桜のピンクと、雲一つない鮮やかな青空を見ていたら、遠い記憶を思い出すかのような切なさを感じて、やっぱりその時に聴いていたのもこの曲だった。

桜が咲く前に ここを出てゆくことにしたよ
10年後の君は どこで誰と笑っているのだろうか
明日また会えるかな 心躍らせ
祈ってた青春も過去になるんだね

桜が咲く前に/きのこ帝国

今回見た長徳寺のおかめ桜は、そんな類の切なさを感じさせる。通り過ぎた過去をふと思い出して胸がきゅっとなる感覚と似ている。春の陽気はウキウキするものだけれど、このちょっとした切なさが混ざっているのが、何より味わい深い春という季節なんだろうな。


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