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助産師って何してるの?~出産編その3~

助産師のお仕事紹介、出産編は今回で最後になると思います。
もし興味があればその1,その2もぜひ読んでみてください。

〈6. 赤ちゃんを取り上げるお手伝いをする〉


「分娩介助」というんですが、お腹の中からいよいよ外の世界に出てこようとする赤ちゃんをこの手で取り上げます。
助産師と聞いて、おそらく誰もが思い浮かべることのできる場面だと思います。
ただ生まれてくる赤ちゃんをキャッチするだけではなく、安全に健康に、そしてお母さんのおすその傷も小さく済むように…等々色々工夫しながらお手伝いしています。


【6-①体勢を整える】

まずお産が近づいてきたら体勢を整えます。これは施設によるとは思うんですが、私が働いていたところはテレビでよく見るような仰向けの姿勢はもちろん、横向きや四つん這いでのお産も可能でした。
いわゆるフリースタイル分娩、と言われるものです。
妊娠中にどの体勢で生みたいか、それぞれの体勢の特徴を説明したうえで選択してもらうんですが、お産の直前でも変更可能だし、なんならいざ生みましょう~!って体勢を整えた後でも、「あ、やっぱりこの体勢辛い」ってなったら変更可能です。
でもこれは施設によると思うので一概には言えません。

あと、その人それぞれにお産の進み具合があるので、それによっておすすめの体勢も異なってきます。
赤ちゃんが下りてきにくかったら四つん這い、とか、腰が痛すぎて辛かったら横向き、とか、陣痛が弱くていきむ力が最大限ほしいとなったら仰向け、とか。
いろいろ選択できる場合は、どれが自分に合ってるのかな~って情報収集しつつ、その場で助産師と相談しながら決めていくのがおすすめです!


【6-②清潔な場所の確保】

体勢を整えたら、赤ちゃんを清潔な場所で生んでもらえるようにきれいなシートを腰の下に敷きます。お産の時は羊水や出血で汚れるので、このシートで受け止められるようにします。
シートがあっても破水した勢いで床がべちゃべちゃになったり、出血や羊水がシートを越えて流れ出たりしてあわや大惨事…みたいなことも何度もありました。笑

おすそも消毒して、助産師も滅菌のグローブやガウンを着たりして、なるべく清潔を確保したうえでお産を迎えます。

助産院とかでは素手でお産とる、みたいな話も聞いたことあるし、どこまで清潔にするかは施設によるかもしれません。自分の病院と実習で行っていた病院以外はあまり事情を知らないのでなんとも言えませんが、私が見てきた施設はすべてこんな感じでした。

【6-③ 産婦さんが適切にいきめるように声をかける】


と、見出しに書きましたが、いきまなくても赤ちゃんが生まれてこれるパターンもあります。むしろ、「絶対いきまないで!!!!!」ってパターンもあります。

経産婦さん(2人目以降のお子さんを生む方)は、一般的にお産の進みが早いと言われています。それはそれはもう、早すぎて「ちょっと待って、準備間に合わん!!!」とか、病院着いたばっかりなのに「頭すぐそこ~!」とかね。すごい焦る。アドレナリンめっちゃ出る。
経産婦さんで、いい陣痛が来てて赤ちゃんもスムーズに下りてきている場合は、それに+αで産婦さんのいきみが加わると、おすその皮膚に一気に力が加わりすぎて傷が大きくなってしまうこともあります。

あと、赤ちゃんって、お腹の中では羊水いっぱいの環境で過ごしています。
肺にも羊水がたくさんあって、狭い狭い産道を通る過程で肺が絞られてその羊水を出すんですね。そうすることで生まれてすぐ外の環境でも呼吸ができるようになります。でも産道を猛スピードで駆け抜けてくると、肺があんまり絞られなくて羊水が肺に残ったまま生まれてきちゃうので、外の環境に適応しにくい、という状態になります。

なので、自然な陣痛で勢いよくお産が進んでいる場合は、赤ちゃんがゆっくり生まれてこれるように、産婦さんにはいきまないでもらえるよう声掛けすることもあります。

でも、初めてのお産の人や、陣痛の力だけでは赤ちゃんがなかなか降りてこない…、時間ばかりかかってしまいそう…って時には、「いきんでね!」って言います。
陣痛が来ているときに、渾身の力を込めて踏ん張ってもらいます。
いきみ方もコツがあって、このタイミングが最適!とか、おへそを覗き込むようにとか、いきみ直す時にはなるべく間隔あけずにとか。そういうポイントを押さえて有効に力を入れられるように誘導します。

ここ、助産師の個性がすごく出るところかな~って個人的に思ってて。
私は割と静かなお産が好きなんですよね。
基本的には産婦さんのタイミングに任せたいし、心穏やかに赤ちゃんを迎え入れてその瞬間を心に刻んでほしいな~っておもってるので、わいわいがやがや色々言うのがあんまり好きじゃありません。
うまくいきむためのアドバイスとか、どれくらいまで進んでいるかとか、必要なことは言いますが、基本は落ち着いた雰囲気を作れるように気を付けています。
声のトーンやボリュームは必要以上に上げない、産婦さんの目を見る、アドバイスしなくても上手にいきめている場合は多くを語らない…とか、自分なりのこだわりがあります。

あとは、褒める。とにかく褒める。
もっとこうしたほうがいいって思うことがあっても、まずは上手にできていることを褒めるようにしています。一生に何度とない貴重で大切で神聖な瞬間は、なるべく良い気持ちで過ごしてほしいし、後から思い返して嫌な思い出やトラウマをこちら側で作りたくない。お産を自分でどう受け止めているかって、その後の育児や次のお産にも影響するくらい大切なので、いいお産だったなあ、とか、うまくできてるかわからなかったけど助産師さんが褒めてくれたなあ、とか思ってほしいんですよね。
あとは私は陣痛を体験したことないから本当の意味では痛みはわからないんですけど、陣痛に耐えて新しい命を生み出すために頑張っている産婦さんって、本当にすごいと思うんです。世の母みんなを尊敬します。

これは帝王切開も同じ。
コウノドリで、鴻鳥サクラ先生も言っていましたよね。

「帝王切開を受ける妊婦さんは自分の病気や怪我を治す為でもなく、赤ちゃんの命を守るためだけに命をかけて自分から手術台の上に上るんです。
僕らはそれをお産でないと言えません。帝王切開は、立派なお産です。」

って。良いこと言うよね…。帝王切開だって、おなか切るんだから痛くないわけないんですよ。

じゃあ無痛分娩はってなるかもしれないけど、無痛分娩も立派なお産だし、痛みという観点でいうとまた違ってくるかもしれないけど、総じて言えるのは世の母はすごいということです。ちょっとこの辺語ると熱くなっちゃうのでここでは避けますが、新しい命を生み出すために命がけでお産に臨むお母さんたちに、尊敬の念をいただきながら関わらせてもらっています。

そう。脱線しちゃいましたけど、褒める(ってなんか、今思うと上から言っているようですがこれ以外の表現が見つからない)ようにしています。


【6-④ お尻を押さえる、会陰を保護する、赤ちゃんが出てくるスピードをコントロールする】

赤ちゃんの頭が下がってくると肛門にもかなり負荷がかかります。

そのときにお尻をフリーダムにして何もしないと、結構痔になっちゃう人が多いし、妊娠中にすでに痔になってしまう人もいるので、痔にならないように・それ以上悪化しないようにしっっっっかりと肛門をガーゼや綿で押さえます。

あとは会陰。会陰とは、膣と肛門の間の皮膚のことを言います。
お産でおすそがめっちゃ切れた…とか切られた…とか聞いたことあるかもしれないんですけど、おすそが切れたり傷が大きいと産後辛いんですよね。

赤ちゃんの頭が出てくるスピードを助産師の手でコントロールしつつ、会陰に手を当てて会陰の皮膚がゆっくりゆっくり伸びるようにします。
ここは助産師の腕の見せ所かな~って思います。
熟練した先輩とか、やっぱりうまいんですよね…いまだに学ばせてもらってます。

ここがうまくできていても、もともと皮膚が伸びにくかったり、赤ちゃんが大きかったりすると傷ができやすいし、初めてのお産の方はおすそが切れてしまうことのほうが多いかな…って印象があります。(ビビらせてしまっていたらすみません。)
あと、どうしても傷ができそうなときや傷が大きくなりそうなときは、予め切開入れておいたほうがいいパターンもあります。

ただどういう場合でも、傷が必要最小限で済むように会陰を保護するのは必須です。
そんな感じで赤ちゃんが生まれてくるまでのお手伝いをしています。


【6-⑤ 赤ちゃんを取り上げる】

そんなこんなして、頭が出てきたら、体が出てくる前に呼吸しやすくするために顔を拭いて、肩を出して、体を出して、誕生~!です。

肩の出し方、とか、体の出し方とかもポイントがあるんですけど、まあそのへんはいいでしょう。笑

赤ちゃんが出てきたら、時計を見て生まれた時間を確認したり、赤ちゃんが外の環境に適応できるように顔の羊水を拭いたり、口に羊水たまっていたら機械で吸ったり、血をきれいにしたり…して、赤ちゃんも元気!お母さんも元気!だったら、お母さんにすぐ抱っこしてもらいます。


そのあとは胎盤出したり、出血量確認したり…とかありますが、赤ちゃんが生まれる瞬間まではこんな感じです。



なるべく嚙み砕いて書いたつもりなんですが、わかりにくかったらすみません…。
たしか~出産編その1~でも書いたと思うんですけど、お産は100人いたら100通りの進み方をするので、こういう場合はこうする、みたいなのはもっと色々あるし、わかる方が見たらこんなんじゃ全然足りない!!!!ってなるかもしれないんですけど、それは大目に見てもらえると嬉しいです。

何が言いたいかっていうと、助産師の役割は赤ちゃんを取り上げるだけではないし、安全なお産ができるようにというのはもちろん、産婦さんやその家族にとって満足のいくお産になるようにということも考えて、1人1人に合ったケアや技術を提供できるよう奮闘しています…!っていうことでしょうか。あとは正常なお産であれば、それらをすべて自分たちで判断しながら行っているということです。


まだまだ語れば長くなりますが、出産編は一旦ここで終了します!
妊娠編とか産後編もそのうち書いてみたいな~と思っています。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました!

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