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恋するマーケティング-学校イチのモテ男に好きって言わせたい!-①

今、日和(ひより)の学校では、ひとつの話題で持ちきりだ。
半年後に行われるコンテストについて。
日和の学校は、アート系の高校で、美術学科、デザイン学科、服飾デザイン学科、音楽学科のある高校で、各々がそれぞれの学科のコンテストに挑むことになっている。
日和は、この高校の服飾デザイン学科の1年生だ。

ここまでは、よくある話なのだがこの学校には芸能人がいる。
音楽学科でも異色のバンドでデビューした3年生の九条 奏(かなで)先輩。
すこしジャニーズ系で、身長も高く、何よりも声がいい。
日和は、彼の歌声を新入生歓迎会で聞いてからすっかり彼のファンになってしまった。

今回のコンテストは、各学科のコンテストの優勝者が奏をモデルに使ったり、コラボレーションができるというイベント付きだ。
皆が奏をモデルに使いたいと奮闘している。

といっても、3年生が有利だと思うけど・・・
日和は、ぼんやりと購買に並びながら考える。

優勝候補は、3年の雪平 清華(さやか)先輩。
ご実家が老舗のテーラーで、他にも色々な事業を手掛けている。
去年の優勝者は、雪平先輩が作ったオーダースーツだっだ。
雪平先輩は美人で、成績優秀、性格も穏やかで優しく憧れる子もたくさんいいる。

次に、2年の神宮寺 紫(ゆかり)先輩。
奏先輩のバンドのベーシストで、衣装デザインも手掛けている。
紫先輩の作ったデザインは唯一無二で、かつてのイギリスロックのテイストが効いていて、奏先輩にとても似合っている。

きっと、雪平先輩のスーツもかっこよく奏先輩なら着こなすんだろうなぁ・・・

「1年D組の桜井 日和さん。」
声をかけられて、顔をあげると購買のパンを買う順番が来ていた。
「あ、すみません。」
目の前には見たことのない、20代後半くらいのメガネを掛けた男性がこちらを見ながら微笑んでいた。
髪はゆるくパーマを掛けていて、白衣を着ているのだか、眼鏡のせいかなんとなく野暮ったく見える。
「桜井さんはたこ焼きパンとサンドイッチですよね。とっておきましたよ。」
あたりを見るとぼんやりしていたのか、周りにもう人はいない。
「あれ、なんで知って・・・」

その時、
「白石さーん、まだたこ焼きパンあるーー???」
聞き慣れた声がした。
振り返ると、奏先輩がいた。
仕事が終わってから学校に来たのか、髪を立てて少しメイクをしている。
「あれ、九条くん、今日は終日お仕事では?」
「それが急に予定が変更になっちゃって、昼飯まだなのよ。俺たこ焼きパンとコーラの組み合わせが最強に好き」

奏先輩・・・たこ焼きパン食べるんだ・・・
ソースの香りに混じっていい香りがするなぁ・・・・

「あー九条くんごめんね。たこ焼きパンこの子で売り切れで、、、あとはドーナツしかないんだよね〜〜〜」

「あ、あのっ、よかったら私、毎日たこ焼きパン食べてるんで、これどうそ!」
奏先輩は一瞬かたまったけど、
「ウケる!!毎日たこ焼きパン食べてんの??まじでいいの?」
と肩をゆすり笑う。
こんなふうに笑うんだ・・・
「は、はい!先輩応援してます」
「ありがとーー。じゃあ遠慮なくいただくね。たこちゃんのドーナツ分もまとめて払っておいて」
「そ、そんな・・・」
「いいって、また会おうね。たこちゃん」
先輩はそう言うと3年生の教室に向かっていった。
ごちそうになっちゃった・・・

「よかったね。桜井さん、今日はイレギュラーだけど、購買部にいたらまた会えるかもよ」
白石さんは、掲示板に貼っている「購買部員募集」のポスターを指さす。

「やります!!」私は瞬間的に答えていた。



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