私たちは、もう気づいている ―宇都宮美沙写真展「universal」を終えて
初の個展、宇都宮美沙写真展「universal」、無事会期終了いたしました。
私はずっと、思っていることが伝わるものを作りたかった。写真を撮っている時間は、おのずと長くなる。ただ、写真を展示することで、この作品たちを通して私の生きているうえでの主題を伝えられるような、そんな空間を作ってみたいなぁと思っていた。
アウトプットする機会だと思っていたのに、相当なインプットが襲い掛かってきた。
写真を仕事にして、今年で3年目。
いざ自分が展示を開催するという状況におかれて、「もっとうまい人はいる」という感覚が根っこにあることに気づいた。もちろん成長のためにうまいと感じるひとを真似たり（学ぶは真似ぶからきているというように）、自信を鼓舞していくこと、新たな知識を得ていくことも大事なんだけど、作品づくりってだれかに対してうまいと思わせるものじゃないでしょ。
クライアントワークを続けてきたからこそ、悪環境下でもっとこう撮ってあげたかった、というプラスの成長したい思考が、作品づくりという観点では自分の中に持つべき基準をずらしてしまっていた。
だからこそ、作品づくりをしている尊敬できるひとたちとも出会える機会となった。いい作品とは、作っても作っても、また次はこんなものを作りたいと思わせてくれるものかもしれない。人生の、最高の暇つぶしなのかも。
来場いただいた方々との対話で得たことは数えきれないほどあった。
整理しきったところでしか、納得ができないのだと気づいた。自分のなかの伝えたい思想、大切にしている感覚。すべてを言語化するのは難しい。
だから人は、仕事を通して社会に訴えかけることもあるのだろう。
写真や言葉で届けること、コミュニティをつくること、新しいテクノロジーを開発すること。
私はそのモノとして昇華することがまだまだ不慣れだ。自分の経験・知識でロジックが成立すること以外を、納得したり考えたりするのに時間がかかる。
新たな分野の知識を得ていくことで、私の思考の整理になるかもしれないと思い、2024年の目標としていくことにした。
「分からない」ことは大切だ。なぜわからないのかが、大事。
仕組みを知らない分野だから、わからないのか。言葉が複雑で知らない単語が出てくるから、わからないのか。面倒くさくて考えないから、わからないのか。
分からないことを分解したら、自分の見えることが広がる。
そしてやはり人は、この人という集団をどうにかしたいときちんと思っているとも感じられた。
2023年11月30日に登壇させていたいだいた「Fab Meetup Kyoto」で、私は写真についてのプレゼンテーションを行った。参加された他のプレゼンターの方々の話をきいて、私はこれを研究したいのだ、私はこれを世に知ってほしいのだ、という意識が伝わってきた。
もう、みんな気づいてきた。お金持ちになるのは幸せなことじゃない。資本主義だからこそ、お金があるだけなのだ。お金をたくさんもって物質的にあふれている状態が誰もの幸せの形だった戦後すぐの、冷蔵庫もテレビも夢のような存在だった時代から、私たちは変わっている。
クリスマスのイベント会場には、写真を撮る人間たちばかりいた。SNSで知ったのかしら。その写真を残したい理由はなんなんだろう。
気軽に記録ができる。誰だって、カメラをポケットにいれて持ち歩ける時代。バズるから楽しいんじゃない。インフルエンサーになるからすごいんじゃない。お金が稼げるから生きるわけじゃない。大切にしたいものがあるから、人はキラキラしていくのかな。
自分が、なにを大切とするか。
何を美しいものだとし、どうしたらどれが伝わるのか。多くのひとたちに伝わって、終わりでもない。
受け渡したものを、誰かがまだ紡ぎ、世の中は変容していく。その面白い局面に、私たちは生きている気がしてならない。そんなことを考えた展示だった。展示が終わって数週間経っても、まだまだエネルギーが増えて増えてしょうがないのだ。これは、来年はすごい年になってしまいそう。
「いい経験になった」では収まりきらない、エネルギーを煮詰めたようなものを感じることができた今回の写真展。
これからも経験すること、その瞬間瞬間を心の奥から感じること、人を大切にすることを全力で頑張っていきます。
来年にもまた作品展を行えればと思っていますので、あたたかく応援いただければ本当にうれしい限りです。
最後になりましたが、素晴らしい方達と出会わせてくれた今回の機会と、FabCafeKyotoの素敵なメンバーの皆様、イベント登壇の機会をくださったり感想をいただいたロフトワーク @loftwork_com の皆様、展示を支えてくださった心強いクリエイターメンバー、ご来場いただいた方々、SNSを通じて応援してくださった方々に心より御礼申し上げます。
2023年12月 宇都宮美沙
追記
会場で販売した写真集のオンライン販売も行っております。残り10数冊ですが、もしよければお手に取っていただけると幸いです。
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作品づくりに使用させていただきます。毎年1作品は制作していきますので、よろしければあたたかく見守ってくださるとうれしいです。作品のオンライン販売もしております。