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【読書感想文】盲目的な恋と友情

辻村深月さんの本を読むのはこれで5冊目。
初めて読んだのは『かがみの孤城』だった。当時の職場で憧れていた先輩にオススメされたのがキッカケだった。繊細さの表現が好きで、あっという間に魅了され、他の作品も読みあさることにしたのだ。装丁も好みですぐに手が伸びる。

読書感想文を書くのは高校以来か。苦手意識はあるが、挑戦してみることにした。
若干ネタバレになるかもしれないので苦手な方はブラウザバックをお願いします。

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『盲目的な恋と友情』
タイトルからして歪な人間関係が出てくるのだろうと身構えつつ、少しワクワクしながら表紙をめくる。

前半は蘭花視点の『恋』パート
後半は留利絵視点の『友情』パート
の2部構成になっている。同じ時間軸の話だが、視点が違うことで見え方がかわってくる。

『恋』パート
冒頭、蘭花の結婚式のシーンから始まる。どうやら、亡くしたろくでもない元恋人のことがまだ頭から離れていないようだ。そしてそれを悪いとも思っていない。初っ端から蘭花が好きになれない…。お相手に失礼すぎる。

そこから元恋人との出会いから冒頭の結婚式に至るまでが蘭花視点で描かれる。

そのまんまだけど、恋に盲目になりすぎて「おいおい…」と言いたくなる。だけど、それは他人事だからというのは自覚している。当事者になったら同じ選択をするのかもしれない。

途中、元恋人と決定的に上手くいかなくなる出来事が起きる。そのシーンなんかは自身の似た経験がフラッシュバックして苦しくなった。
その日、たまたま帰りが遅かった彼氏のことを少し疑ってしまって私自身にも「おいおいしっかりしろ」と反省した。しっかり作品に飲み込まれていた。


『友情』パート
蘭花の友人、留利絵の話が始まる。小さい時から学校で容姿についていじめられ、家でも美人の姉と比べられてきたことで根深いコンプレックスを抱えていた。中高一貫校に進学し、あからさまな容姿いじりはなくなったものの、周りの何気なく放った言葉に怒りを募らせる。大学に進学し、優れた容姿をしていながらも無頓着で、話も合う蘭花に依存していく。蘭花を支えに、周りと上手くやっているつもりだった。

ある日同じサークルの男子たちが女子の人気投票をしているのを確信してしまう。自分に一票も入ってないだろうことを察して飛び出してしまう。美波という派手なグループの一人が付きそっていく。しかし、留利絵は泣いた本当の理由を知られるのが嫌で、ねじ曲げてしまう。
私も過去に自分の惨めさを隠すために最もらしく誤魔化してしまったことあるなと共感しつつ、恥ずかしくなってきた。そして留利絵視点は、留利絵の都合の良いように見ているのだとしたら、蘭花視点もそれはそれで事実を知るには当てに出来ないなと思った。


そこから美波といざこざしつつ、蘭花の一番を目指して傍で支え続ける。集大成として、蘭花の結婚式でスピーチをしたいと願っていた。

まず蘭花の親友の座を巡って美波と争っているようで、実は美波には争っているとすら思われていなかった。
巻末の解説の言葉を借りると、"蘭花にとっては美波は「いい友達の一人」である。"それを受けて、蘭花や美波にとって友達の枠は広いが、留利絵にとっては友達の枠は狭く、関係の深いものでないといけないという思い込みがあるのだと思った。そこから認識の差ができている。

結婚式のシーンでそれぞれの温度差が浮き彫りになる。蘭花は冒頭の通り亡くなった元恋人で頭がいっぱい。留利絵は「蘭花の親友は私だ」とみんなに知らしめることに胸を踊らせつつ美波の様子をみる。美波は普段通りただ近くにいた友達とおしゃべりをしていた。タイトルを回収したこのシーンになんとも言えない感情がわいてくる。

解説を読んでいて、自分の経験とも結びついた。大好きな友達にとって唯一で一番の友達が自分でありたい。その思いが強すぎて、大好きな友達が他の人と仲良くしているのを良く思えない。でもそれは本当に友情なのだろうか…。
今の私ならこう言う。「エゴだよそれは!」
(余談だけど最近ガンダムを初期からみている。とても面白くてハマっているので、機会があれば投稿したい。)

計画性なく書き始めたら不時着したのでこの辺で!物語の結末は読んでみてのお楽しみ。
最後までありがとうございますm(*_ _)m

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