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改めて今。『アルスラーン戦記』を語る。その8〜”ナルサスの死”について

ナルサスの死について、多くのファンは涙し、
ナルサスの死に関して、多くのファンは憤り
ナルサスの死において、多くのファンは納得してない・・・

そんな状況が発生してた(る)ようで。。。。

とにかく15巻〜16巻の批評はフルボッコです(汗。
英雄たちが、なんだか不自然にバタバタと斃れていきますから。
とりわけナルサスの死については、もう悲痛な声がネット上で散乱&錯乱状態(笑。

・・・ということで、ナルサスの死について、私的考察です。


①ナルサスの死の何がいけなかったのか?


田中芳樹先生は、銀英伝でもそうですが、主要人物が物語の中で死んでしまう流れをよく作ります。
これは多分・・・中国史をはじめとし、大陸の歴史(世界史)への造形も深いことから、

・どんな王朝・王国・国・英雄・偉人であろうとも「永遠に安定的に続くなんてことはない」「興亡はつきもの」

すなわち、ナルサスが最初の方に言ったように

・芸術は永遠。興亡は一瞬

↑↑田中先生の基本史観として潜在的に根付いていて、どうあっても無意識に作品世界に投入してしまうのでしょう。

そして・・・ナルサス自身も、この言葉を体現している状態になったのです。

アルスラーン戦記は、あえていえば中国の「春秋戦国時代」だったり「五胡十六国」・「三国志」時代だったり、、、

かつモデルとなっている「ササン朝ペルシア」は今のイラン・イラク・イスラエル周辺の国で、幾度も王国が立ち上がり滅び・・・異民族の混じり合いや絶え間ない戦争が勃発していた地域です。
いうほど安定しない地政地域でもあるので、それをイメージしながら物語を構想されたのかもしれません。

おまけに「戦記」なので「戦時」です。

年早く亡くなりやすい舞台は整っている状態。
いつでも「死」が隣にあります。

おまけにアルスラーン陣営でも、人は殺しまくっておりますから・・・。。

いずれにせよ、youtubeでも田中先生自ら

「ナルサスやダリューン、アルスラーンなどは死んでいただくことは決まってた」

「エラム・ギーヴ・ファランギースは生きる予定にしてた」

と割にはっきりおっしゃってるので・・・(苦笑

・・・当初からナルサスの死は決まってたのですw。
 
しかーし!
その死に対して賛否が渦巻き、田中ファンをやめる!みたいな宣言までする読者がいる始末。。

ナルサスの死の「何かが」いけなかったのでしょう。
それは何でしょうか?

ナルサスの輝いていたお姿。
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推測① 突然あっけなく死んだ


ナルサスが、突然、突拍子もなく死んだ・・・
サクッと命失われた・・・

これに対する「怒り」・・・あると想像します。

以前も書きましたが、ナルサスはアルスラーン陣営の中でもとても人気の高いキャラクターです。

ファン投票などすれば、いっつも1位2位を独占するくらい、ナルサスはアルスラーンの物語の中で圧倒的支持率です。
アルスラーンなど歯牙にもかけない。主役を喰らうキャラです。

みんな、ああいう軍師好きなんだなーって感心するくらいです。

登場人物の中でも準主役クラス。

1巻・王都炎上で早々に登場され、アルスラーンの巧みでユーモアあふれる提案に感心し、麾下に入る。
その後はご存じのとおり、完璧な知略と奸計でアルスラーンを仇なすものを木っ端微塵に撃ち据えます。
 
とても大事な立ち位置&キャラクターのナルサス・・・

その彼が「いともあっけなく死んで」しまった。。

なんか突然「死んだよ」・・みたいな事実を突きつけられたことが、ファンを逆撫でたのかもしれません。


推測② ナルサスの死の「位置付け」が「軽い」


ナルサスが死に向かう「位置付けや意味づけの”軽さ”」がファンの怒りを買っている・・とも見受けられました。

端的にいうと、、ナルサスは、

・通りすがりのヒルメスに負けちゃった

のです。

ナルサスの死の意味づけや位置付けに「重みがない」。

故に「ファンが納得しない!」という状況なのかもしれません。
 
確かに、、
アルスラーンの代わりに身代わりになったとか、、
あらゆる奸計の中に自分の死を置いて、陣営の危機を救った・・だとか、、

そういう「主要キャラが死ぬのに十分な材料が取り揃えられないまま」、死をむかえてしまった。。

実に「あっけない」「死に関わる位置付けのなさ」「重要人物の死の重さのなさ」にファンは愕然としたのでしょう。

まあ、、「不公正」(地面に倒れ込んだ時に尖った石が背中に当たって、瞬間苦痛で動けなかった)ゆえに負け、サクッとぶった斬られてしまった!って流れに「端的に言えば」なっちゃいますから・・

そんな「たやすさ」にナルサスが屈してしまったことが、ファンをドン底に突き落としたのかもしれません。

アニメ第2期「風神乱舞」EP4より
未来の奥方とw

推測③  ナルサスの「知恵者」としての役どころが発揮されないまま死んだのが口惜しい!感

ナルサスはとにかく知略強者です。
アルスラーンの麾下に入り、その才能を爆弾発揮。軍師としての才を遺憾無くふるったことから、読者に対し「絶対王者」(無双・・と表現する人もいるみたい)の存在感を強く印象づけています。

「周到な軍略家のナルサスが負けるはずない(負けたとしても大いなる意味があるはず)」

このインパクトが、読者を支配しています。

ナルサスは確かに戦略的・戦術的に「負けて」はいませんでした。

ただ「思わぬ想定外」にぶち当たってしまった、、というちょっと「間抜け」な感じで死をいただいてしまうのですよね。

そこに格好良さなど微塵もなく・・・

妻となったアルフリードには、「逃げろ!」とシンプルな言葉しかかけられない状態。

「え。こんなにあっけなく!?嘘だろ〜ーーー。天才でもなんでもないじゃん。おかしいじゃないか!」
 
てな感情を引き起こさせてしまい、、ファンの憤り甚だしいのかも。

ヒルメスとの討ちあいになると、もう剣の力量の差でしかありません。
知略は使えない。
「不公正」もある意味剣の力量の差です。その意味でも、ヒルメスに”かろうじて勝てる”のはダリューンだけ。

対ヒルメスにおいて、ナルサスの才気はいっさい発揮されないまま、ざっくり殺されてしまった。。

この「ナルサスらしくない死」・・・について、ファンはがっくりと肩を落としてしまい、説得力の微塵もない!ってな、怒りを引き出したのかもしれないですね(^^;;。

荒川版コミック11巻より。
「偶然の遭遇か・・・さすがにそこまではこの俺でも読めん」ナルサスは千里眼ではないから当たり前ですが・・・もしかしたら「偶然」が彼の唯一最大の弱点なのかもしれません。。

>「ちょっとやることがある」「書き留めた書類」の意味は・・・?

ナルサスの死について気になることもあります。
それがミスルとの戦いにおいて、あえて「ザーブル城にいる」といったナルサスの思惑です。

ダリューンの問いに

「ちょっとやることがあってな」

と一言いうだけ。

何を「やる」というのでしょうか??

 
かつ、このシーンの前後「ナルサスは何やら書き留めて」います。

ダリューンはその様子を見て、特に何も言わず・・
アルフリードも「何を書いているのか」質問もしない。。

ナルサスは何かを書いては、懐にしまったそうですが・・・。

死後特に言及されていない。。

ただ16巻に「推測」はされます。
「多分ナルサスはこういうことを伝えたかったんだろう」・・と。それはアルスラーンとファランギースによって。

ただ完全ではありません。

15巻の時点で、ナルサスはどういう意図で「ちょっとやることがある」と言い、何を書き留めてたのでしょうか。

明言文章がないので、モヤっとします。
謎に感じます。
聡い読者たち&ナルサス好き読者はイライラ(^^;;

これも「ナルサスの死」に対する納得感がいかず、怒りの書評が多い所以かもしれません。

ただ、ファランギースは「いろいろ気付いてます」。アルフリードに対し、鈴を持たせますよね。
おまけにこの事件が起こる前に、ナルサスとアルフリードは結ばれます。
「死」のフラグは立っている。

でも「死を取り巻く背景」がどうあっても不明瞭・不整理になっているので、ナルサスの死は受け入れ難いのです。


>人が死ぬのに意味づけも位置付けもない。人は死ぬ時はあっけない・・という残酷な戦時の一面を描いているのかも???

この文章を書いていて思ったのですが、

>人が死ぬのに位置付けも意味づけも結果的には無意味なのかも

という考えが。

ナルサスはその知略でなんの意味も位置付けもなく、あらゆる敵を討ち果たしてきています。

ヒルメスも大いにナルサスには傷付けられた。
故に「猛毒の瘴気でナルサスを包み込み」ます。

ナルサスは今回これまで討ち果たしてきた輩の「猛毒」にやられる時がついに来てしまった・・・そんな無慈悲にのまれたのでしょう。

ただ確かにどんな英雄でも、劇的で意味づけのある死はあるようでないことも多いです。

突然ふとしたことで死んだりします。
よくわからない「偶然」でサラッと命が持っていかれたりします。
どんなに英雄でも「階段で転んだ傷が元で、あっけなく死んだ」みたいなことだって歴史にはあります。
なんでこんなことで?と思えるような死に方をする賢者だって、ないわけではない。

ナルサスの死も、ナルサスが重要すぎる人物だからこそ「あっけなく死ぬ」という無慈悲なシーンをもたらすことによって、16巻で描かれる「皆殺し」の前兆としているのかもしれないですね。

銀英伝は人物の死に意味があったのに!と反朴する読者も多いでしょうが、、まあ銀英伝とは違う舞台だしなーって感じです(苦笑。

16巻では、すでに記載あるように、パルスだけでなくほぼ全ての国の国王が滅しますし(唯一シンドゥラの軽ーいラジェンドラ王は、辛くも生きますが(^^;;)

ナルサスの死はどんなに英雄であっても、その最期は実にあっけないものだという「悲哀」「無常巻」の表れなのかもしれません。

ただ読者はそういう「歴史」を読みたいのではない・・!てのが厄介なんですけどね(^^;;

・・・・・・・・・・

というわけで、あくまでもかなり私的な考察ですが、思ったことをアウトプットしないと頭の中が変になりそうなんで(笑、今回アウトプットしました。


なお。
原作15巻のナルサスは荒川版アニメのキャラデザをイメージしながら読んでしまいました。
声も浪川大輔さんでw。
そのほうが、最期のぶった斬られ感がまして、劇的になります(笑。
私の中のナルサスは塩沢兼人さんじゃないんですよ。
荒川版コミック&アニメのナルサスですw。

これ、スペシャルカードみたいです。いい画。
ナルサス亡き後、ダリューンも陛下も皆すぐ後を追いますから寂しくはなさそう。





 
 






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