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言葉の数は秘密の数

塾の自習室で勉強していた。
夜になり、集中力が切れたので、スマホだけ持って散歩に出かけることにした。
この時期の夜はとても寒い。歩いてるだけだと寒くて仕方がなかったから走ってあったかくなっていた。
走り疲れたので立ち止まってスマホを見ていた。
駅前にある塾だから、あまり暗くはなく、人も多い訳では無いが人っ子一人いない、ということもない。
しばらくすると、ふと、知らない言語が聞こえてきた。
声のした方に目をやると、外国人の男女が何やら話しながら私の目の前を通っていくところだった。
外国人が多く住む地域なので特段珍しい光景ではないのだが、なぜか、その日の私の目には特別に映った。
ほとんどの人が日本語を話すこの街で、少なくとも私の感知する範囲でこの2人だけは彼らだけの言語で話している。
英語でもない言語なので、私には何を話しているか皆目見当がつかない。
そのことが、2人だけの秘密みたいでちょっと羨ましかった。

留学、ということを考えたことがある。友達に高校生ながら留学に行った人がいるし、将来的に留学することを決めている人もいるから、自然にそこに考えが及んだのだ。
留学先、遠く離れた異国の土地では、日本語が秘密の言語になるんだろうか。
秘密を誰かと共有してみたくなった夜だった。

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