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短編小説

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#小説

さよならとシ・フラット

さよならとシ・フラット

「考え直さないか」

 絞り出されるような男の声が、冷房の効いた部屋の中に響いた。
 男の前に座る少女は、その様子をまっすぐな目で見ている。

「藤崎、お前がいないと困るんだ」

 どうにか縋ろうとする細身の男に対し、藤崎と呼ばれた少女は微笑みながら、しかし、はっきりと首を振った。
 その凛とした雰囲気は崩れることがなく、頭の動きについてくるようにポニーテールが左右にゆれる。藤崎は「安住先生」と小

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ビニール越しの空

ビニール越しの空

雨が止んだ。
 人々は歩みを止めて空を見上げた後、それぞれの傘を閉じて何事もなかったかのように再び歩き出す。わたしは慌ただしそうに動き始めた大人たちにぶつからないように道の端まで避けると、古い駄菓子屋の軒下に入った。

 小さな手に不釣り合いな、大きな白い柄。
いつも持っている色とりどりの水玉模様が描かれた小さな傘とは違う、飾りが何もない大きなビニール傘。勝手に傘立てから取ってきた、お父さんの傘

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