見出し画像

学校でうまくいかなくても、大人になれば何も困らないよ③

通信制の高校はとにかく楽だった。
課題提出、定期テスト、年1回(だった気がする…)の課外授業。
これさえやれば卒業して、高卒資格が得られる。
授業はあるが、受けたい人は受ければいい。自分のペースで勉強したい人、大学受験でハイレベルな勉強をしたい人は、自習室のパソコンで映像授業が受けられる。

私は週に1、2回適当な時間に登校して、映像授業だけを受けていた。
日本史の授業が面白くて、熱心に勉強した。
その先生は雑学を授業の合間に挟む人で、私は「死刑執行ボタンを押す人は複数いて、誰が押したボタンが執行ボタンなのか分からないようにしてある」という話を、なぜか10年経った今でも覚えている。

通信には私と似たように、全日制の高校という社会から脱落した子達が集まっていた。
リア充そうな子、いかにもアニメ好きそうな子(悪口じゃないよ)、トランスジェンダーの男の子、特に特徴のない子。
ヤクザの息子がいるという噂もあった(※普通に治安のいい学校です)

仲良くなっても、前の学校で何があったのかについて聞くのは、なんとなくタブー視されていた。
そこでもグループ…というか、つるむ人はみんな各々固定化されていたが、前の学校よりはゆるい繋がりだった。
そもそもみんな何時学校に来るのかわからないのだ。
行きたい時に行くし、なんちゃって制服を着ているくせに、授業を受けずに1日中同級生と喋って帰る子もいる。

私も映像授業を受ける傍ら、当時は親友と呼べる子と2人でつるんで、1日中空き教室で紙パックのリプトンを飲みながら雑談して過ごすことも多かった。

私たち2人は人間関係に疲れていた。取り繕うことに疲れていた。
だから大部分の全日制の学校に通っている学生とか、家族とか、世間とか社会とかを恨むことばっかり言い合っていた。
「リア充になりたい」とか「イケメンを選び放題したい」とか「努力せずにお金持ちになりたい」とかばっかり言っていた。
クリスマスイブの夜に、2人で展望台に行って綺麗な夜景を見ても、まだ「バイトを辞めたい」とかそんなことしか話さなかった。
お互いのことで嫌だなと思う部分もなかったわけではない。
でも私たちは傷のなめあいをする仲間だったので、離れることはなかった。

喫茶店のバイトで、ゴミ出しで台車を外に運んでいた時、学校帰りの制服の女子高生達とすれ違った。キラキラした笑顔を浮かべる彼女達と自分を比較して、自分がみじめに思えた。”正しい社会”から脱落したダメ人間だと感じた。

でも息はしやすくなっていた。
そうだ、別に友達なんか欲しくなかったんだ。
グループなんか要らなかったんだ。

10年経って社会人になった私に、友達は1人もいない(高校時代の親友とは、大学生になってから薄情にも縁を切ってしまった)
結婚出産適齢期なのに、夫どころか恋人すらできたことがない。
家族は、母親にしか連絡をとらない。

中高一貫を中退したので、卒業アルバムは小学校の時の物しかない(うちの通信制にはアルバムはなかった)

職場では、1日の会話が3分もない時もあるくらい、ずっと1人で仕事をしている。
休日はどんな所でも、行きたいところに1人で行く。旅行もする。
職場の人には「1人で楽しいの?友達は?彼氏は?」と聞かれる。
何も言っていないのに「いい人見つかるよ」と言われる。

でも私は今が1番幸せだ。
自分が選び取った環境で、自分がやりたいことをしてお金を稼ぎ、そのお金で好きな家に住み、好きな物を食べ、好きなように過ごす。
寂しいとか、友達彼氏が欲しいと思う時が全くないかと言われれば嘘になる。でも1人でいればいるほど、私は自分を肯定できた。

学校は歪な場所だと思う。
同い年、同じ県で育って、同じ音楽を聴いて、同じ授業を受けている子達としか一緒にいれない。そして、同じ価値観を持たないと許されない空気があると思っている。

大人になったら色んな人と出会うよ。
あなたと同じような性格とか価値観を持った人は、きっとたくさんいるよ。
自分を取り繕わなくても、思いっきり息を吸って生きていけるよ。

あなたのいる世界は、大人になったらすごい狭い世界になるから。

10月のプールに飛び込んだ僕を笑うがいい
制服のまま泳いで何を叱られるのか
そして冷たい水の中で わざと飛沫を上げて
誰にも邪魔をされない本当の自由 確かめたかった

欅坂46 『10月のプールに飛び込んだ』


ぶっ刺ささったもの載っけときます♡

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?