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読書メモ|もうダメかも―死ぬ確率の統計学 マイケル・ブラストランド, デイヴィッド・シュピーゲルハルター

 65,000件の「低リスク」出産を対象にした近年の調査によると、助産師が運営する施設で出産した女性は、病院の場合と同等に安全だったうえ、病院に比べて帝王切開が格段に少なく、「正常分娩」が多かった。
 乳幼児突然死について、イギリスでは「うつ伏せ寝の赤ちゃんをそのままにしておくという一般通念が覆されて、この数字は70%下がった。それでもなお、日々生まれてくる2,000人の赤ちゃんにつき1人ほどは亡くなっている。この謎の死は男児のほうが50%多く、季節は冬がもっとも多く、母親が20歳未満である子のリスクは母親が30歳を超える子のリスクより5倍大きい。全てを加味すると、女児であり、未熟児ではなく、30代の母親を持つ武ルーデンスは、安全な部類に入っていた。だからといって母親の安心材料にはなるまいが。

2.乳児期

 2012年の「デイリーエクスプレス」紙に「毎日のフライアップでがんのリスクが20%上昇」という見出しが躍った。加工肉の膵臓がんへの影響を伝える記事だった。(略)
 この『20%上昇』は起こる物事だけに基づく計算結果で、がんの人、または将来なる人だけを出発点としており、なってないひとや将来ならない人を無視している。普通にしていても400人に5人が生涯にこの(侵襲性の非常に強い)がんにかかる。リスクが20%増えるというのは、400人がひとり残らずフライアップ(油で炒めた)ソーセージやベーコンなどの加工肉を毎日余計に食べた場合に、5件だった発症件数が6件になる、という話である。(略)20%という「相対リスク」から、400人中6人へ、すなわち0.25%へという「絶対リスク」単位での変化へ見方をシフトできる。相対リスクは物事をはるかに重大にみせる。

4.平穏無事

 国連の公式データをもとに計算すると、スウェーデンの妊産婦死亡リスクはイギリスの3分の1である。アメリカでは妻の出産に立ちあう夫に白衣の着用が求めらるのだが、イギリスでは庭から直行できる。それでもなお、アメリカの妊産婦死亡率はスウェーデンの5倍以上、国際比較ではイランと同レベルにある。
 アメリカのコメディアンが彼女にとって理想的なのは「最初の痛みで意識を失わせて、美容師がきたら起こしてくれる」ような出産だと語っていたが、これはドイツで20世紀始めに「半麻酔」という無痛分娩法としてなされたことだ。女性は出産したことすら思い出せなかった。
 (出産の痛みという)恐怖を乗り越えようと努める価値があると思われており、いうまでもなく赤ちゃんという恵みもあるのだ。
 人は利益の期待が大きいほどリスクの見積もりを下げることが示されている。つまり、利益が大きいと考えるひとは自分にとっても他の誰にとってもリスクは客観的に低いと考えがちなのだ。不完全な経験則として、期待が大きいほど心配は少ないというわけである。心理学者のポールスロビックはこれを「感情ヒューリスティック」と呼んでいる。あるアイデアを気に入ると、それが自分に刃を向ける可能性を認めるのが難しくなるのである。
 今のローマでは、出産の半数近くが帝王切開でなされており、民間の病院ではこの数字が8割にまで跳ね上がる。帝王切開によってリスクがざっと5割増になる(というのに)

11.出産


17 ライフスタイル

マイクロライフは30分のことで、普通に生活していても1日48マイクロライフ(30分✖️48ML🟰24時間)を消費している。たとえば、たばこ4本吸った日の消費は48MLではなく50MLだ。

 2010年、職がなく、手当頼みで、妊娠していたクリステルバルドは、生後5ヶ月の子をその腕に抱いて、ロンドンの姉のアパートのバルコニーから飛び降り自殺したのだった。彼女の求職者手当は妊娠を理由に打ち切られ、ひいては住宅手当も失った。役所は彼女に住宅手当の過払金200ポンドの返還を求めていた他の手当についても却下されていた。彼女の請願は二度却下されていた。雇用年金省への最後の電話は自殺前日になされていた。
 6ヶ月以上の失業を経験した若者の場合、それから数年の賃金が明らかに低いほか、20年経っても就労継続者と比べて収入が8%少ない調査結果もある。
 (失業により)早死にするリスクがどれほど増えるかの推定には大きな幅がある。影響はないとする研究もあれば、20%上昇して、1年以内の自殺の可能性が高まり、心血管絡みの死亡率が高まり、それが10年以上続くとする研究もある。また、別の研究は失業による死亡率の増加は60%近いという。これは1日に6マイクロライフほどで、平均的な喫煙者のリスクとだいたい同じだ。

21.失業

 孤独は知能の低下と関連付けられており、おそらく運動機能の低下よりも恐れられている。
 死に近づくとリスクはリスキーでなくなってくる

26.人生の終わり
年金生活の方が貧困になりにくい

ケンブリッジ大学の統計の専門家と、ジャーナリストの共著です。
1つの事象ごとに、統計データとストーリーで解説するのは、とても興味深い手法なのですが、ジャーナリストの語り口にクセがありすぎるのか、翻訳がいまひとつなのか…
話があっちこっちに飛んだり冗長なのは苦手なため、引用もいまひとつわかりにくくなり残念
ひとは統計データよりストーリーやムードで動くものなので、もう少し読みやすかったら良かったな

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